⑤日本が取るべき経済安全保障政策
——反スパイ法で自滅する中国
昨日からの続きです
(本ブログは著者の特別の許可を得て掲載しています。なお、収録時は対中宥和の岸田政権下です。)

そしてさらに、データを証拠収集への協力を拒否した場合は、処罰の対象になる。しかも、データ 安全法、さっき言ったデータ三法の一つですけれども、これを利用して反スパイ法の執行手段とするの で、中国にいる日本企業とか日本人へ重要データを移転することが規制されます。そして重要情報を受け取る日本企業とか人を、反スパイ法で摘発できる。
では、国家安全と利益にかかわるものとして、データ三法で例示されているものはここにあるように、もうほとんどの物だと考えていただいていいと思います。こういった法律ができたんですね。
そして、国家安全機関というところがスパイ行為によって、スパイと組織およびその代理人が得たすベての利益を没収することができますし、また企業情報とか学術論文、こういったものも従前は西側並みにアクセスできたんですけど、今はアクセス制限の対象になっていて、抵触すればスパイ行為に問われる。中国共産党の歴史に関する研究も、調べるとスパイ行為だと。
こういったものが何かというと、我々西側諸国はウィーン条約というのを持っていて、それが法治国家とか法の支配を前提に作られたものなんですけど、中国の反スパイ法は国家安全法制で恣意的な拘束・処罰を行うことができるわけです。
対応ポイント、これからじゃあ実務的な話をしていきますと、まず習近平総書記の第3期目に入って、政府、共産党の中枢から改革開放派が一掃されたわけです。前の胡錦濤さんがテレビカメラの前で退場させられましたよね。あれが象徴です。つまり、習近平氏のまわりはイエスマンで固められている。そして、改革開放派が権力から一掃されてますから、これまでの人脈は役に立たないと考えること が必要なんですね。
国家安全機関が狙うのは、中国で行われる展示会、交易会、会食懇談、こういったもので「お前スパイ行為をしただろう」と言って捕まるリスクが高いわけです。

国家安全部門というのは、改革開放とか、それから西側諸国との交流を損なうかどうかということは、まったくそういうのは視野にないわけですね。しかも、中国の国家安全部門は具体的なスパイ行為とか、国家安全と利益を害する行為というのは、はっきりこういったものが該当するというのは明確にはしないわけです。
その他注意すべきというのは、さっき言ったデータ鎖国化ですね。今までは企業情報を、日本でいったら東京商エリサーチとか帝国データバンク、こういったものが海外からのアクセスが制限されている。それから学術論文のデータもアクセスが制限されている。それから最近は日本の大学とか研究機関や図書館へアクセスを制限するよという通知もあったんです。
それから、中国企業との軍との関連情報を収集すると、スパイだろうと言われる。それからウィグルの人権侵害サプライチェーンの情報も、調ベるとスパイだと。その他メディアの報道とか、外国メディアとの接触とか、コンサル会社の設立や運営なんかもスパイ行為だというふうにみなされます。

ところが、日本の親中企業とか親中知事というのは、飛んで火に入る夏の虫なんですね。これは7月 4日、河野洋平さんを団長とする経済団体、日本国際貿易推進協会というのが、玉城デニー知事と一緒 に中国を77名で訪問して、商務相とまず会談しています。そしてに対して 「駐在員が不安に思っているし、それを払拭してくれ」と。そうしたら担当部署を読んで、日本商会に説明して誤解を解消したいとか言っているわけですね。
そして、翌日は李強首相と会談をして、アステラスの従業員が中国の反スパイ法で拘束されたことを 念頭に、中国と経済交流をした人たちのモチベーションを下げないようにお願いしたい、なんて言っているんです。
ところが、それを受けて商務相は、日中投信促進機構と意見交換をしていて、誤解があるとか、そういうことを言っているわけなんですが。背景には、この双循環戦略というのがあります。
4月21日には 中国商務部が改正反スパイ法に関して、商工会議所を説明会を開催し、我々は従来どおりの外資導入を 重要な位置に置いていて、公平で透明、そして予測可能なビジネス環境の構築に尽力しているんだ、な んてことを言っているわけですね。心配するなということを言っているわけです。
それで日本企業の典型的な反応としては、中国政府が法に違反しなければ大丈夫と言うから、スパイ 行為に該当する行為を明確化してほしいなんていう人がいるんですが、国家安全当局側にとっては、裁量でスパイとして捕まえることに意味があるので。こういったスパイ行為が何かとか、国家安全と利益 を害する行為を明らかにする意味がないわけです。「お前はスパイだ」と言って捕まえることに意味が あるわけです。

この商務部の度量を一蹴する発表が、8月4日に国家安全部からあった。WeChatから回答したのは、 ここにあるように改正反スパイ法の施行後、国内外の世論が一層関心を寄せており、大多数の意見が 「スパイ行為は重大な違法犯罪行為であり、法に基づき厳しく取り締まられなければならないと考えている。国家安全部は、一部の海外メディアが改正反スパイ法に懸念を示し、投資ビジネス環境に影響 を与えるだろうと誇張し、さらに悪意をもって曲解し、我々の正常な立法活動を攻撃中傷する者すらあると認識している」というふうに、もう一蹴したわけです。密告社会と相互監視社会がますます加速 している。
そして、ここに公式説明ですね。4点を強調すると言っているんですが、反スパイ活動を強化して本国の国家安全を守ることは、世界各国の一般的慣行であると。よその国でもやってるだろうと。日本にはスパイ取締法はまだないです。それから改正反スパイ法は中国の国家安全を守るために必要だと。
反スパイ法の規定はオープン透明で、明確、明解だと。そして中国は法治国家であり、厳正なる処理を 堅持しているということを話をしています。つまり、俺たちはやるよということを言っているわけで す。
国家安全当局は自由自在に活動して、こいつを捕まえようと思ったらスパイとして捕まえる。ところが、それは台湾有事とか沖縄有事とか、こういったことが起きた場合に、日本人の恣意的拘束を行う ことが法に基づいてとして、具体的な説明を行わないまま正当化してやられてしまうよ、ということなのです。誰でもスパイ行為とされるリスクを負っているということなんですね。
これは何度も言いますけれども、国家安全当局が「あなたはスパイだ」と言えばスパイになってし まう法律なので、非常に気をつけなきやいけないし、そういったリスクのある法律が施行されてしまったと。ですから、日本企業とか日本政府がやらきゃいけないのは、とにかく中国にいる日本人の数を減らしていくことです。これに取り組まなきゃいけないわけです。
そして、もう一つ中国の問題としては、改正反スパイ法ではいわゆる中国がまだ自分に移転していないというか、盗み取り切れていない技術、例えば半導体製造装置とか半導体の材料、それから複合機 とか化粧品、こういったようなものは強制技術開示というような動きをして、これを全部ノウハウを教えないと中国で売らせないみたいな動きをとっているわけですね。

ですからこういった事業をやっている会社は、早く中国から抜けることが必要です。
まとめていくと、経済界や企業は商務部や外交部などを相手に今まで交流してきたのですが、彼らは貿易投資とか文化交流の促進を進める役割をしているわけです。ところが、反スパイ法を管理しているのは国家安全部門であって、彼らは中国国内での力関係は国家安全部門が商務部や外交部を 監督・監視・指導する位置づけ、上なのです。だから国家安全部門が、何が国家の安全と利益を損なうかを最終判断するわけなんですね。
だから、いくら商務部や外交部が大丈夫だと言っても、彼らは国家安全部門に監督され、監視され、指導される立場なわけですから、彼らがいろいろ言っていたこと、 それから日本企業がこういった人たちと築いてきた人脈はもう役に立たないと、発想の転換が必要になります。
今ずっとお話ししてきましたけれども、こういった反スパイ法というものが施行されて、中国というのは非常に危ない、誰でもいつでも捕まるような状況。そして、規制と統制の法律がたくさん成立して 施行されたというのは、前段でお話ししたとおりなのですが、こういったところで事業を展開するというのは、いかにリスクが高いことなのか、お分かりいただけたと思います。
ですから、我々がやらなければいけないことは何かというと、中国から開発拠点、そして生産拠点 をもう設備を捨ててでも帰ってきて、東南アジアに移転するとかして、そういった技術が盗まれないこと、それから日本人従業員が不当に拘束されないようにすること。こういったことがとても大事になってくるわけです。これが今の中国の法制、そしてビジネスの実態ということです。
これで、いかに脱中国をしていかなきやいけないのか。中国経済は今非常に大きく失速してきていて、先行きが見通しが厳しい状況になっています。この中で中国にこれ以上コミットすることはリスクだということを申し上げてまとめといた します。
(つづく)