赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

③日本が取るべき経済安全保障政策——もう中国に技術を一切与えないという方針のアメリカに学べ

2025-01-11 00:00:00 | 政治見解
③日本が取るべき経済安全保障政策
——もう中国に技術を一切与えないという方針のアメリカに学べ 



昨日からの続きです

(本ブログは著者の特別の許可を得て掲載しています。なお、収録時は対中宥和の岸田政権下です。)


アメリカの対中プロテクト&プロモート戦略

その背景にあるのが、アメリカの対中戦略の転換なんですね。アメリカは中国の国交回復以降、関与政策というのを進めたわけです。この関与政策とは何かというと、中国が豊かになればいつかは民主化するだろうという妄想ですね。これに基づいた関与政策をいうのを進めたわけですけれども、結局それが機能しなかったという結果に終わったわけです。

もうこれは、中国は民主化しないと判断したアメリカ政府と議会は、超党派で米中の経済関係を大きく見直して、中国の 軍民両方技術開発を制限する戦略に転換しています。これを知らない日本の経営者が多すぎる。

そして、アメリカの政府は、今までは中国の技術の成長をアメリカが管理して、アメリカの数世代遅れた技術を中国が確実に持つことでよしとしていたんですけれども、新しい対中政策は、アメリカ政府の対中アプローチが根本的に変わったということなのです。

つまり、アメリカは中国に対して、先端半導体、コンピューティング分野、人工知能、そしてバイオテクノロジーとグリーンエネルギー分野における中国の技術進歩を止めるという、新しい戦略に変わったということなんですね。

それを今、バイデン政権ではプロテクト&プロモート戦略と呼んでいます。これが守りというのはプロテクトで、今申し上げたような輸出規制を駆使してアメリカの先端技術を盗まれたり、不法な移転などを防いで、中国が力で国際秩序の現状維持をしようという試みを阻止する。これがプロテクト。

そしてアメリカの産業政策を通じて、アメリカの産業の競争優位を強める。これがプロモートですね。この二つのプロテクト&プロモートという戦略を、アメリカ政府は進めています。


オランダのASML、日本のキャノンとニコン

鍵となったのは、露光装置というもので。これは専門的な話なのですが、半導体の前工程の中で使われるウェハーというものに回路を描く装置です。ここで押さえてほしいのは、世界でこの露光装置を押さえているのは3社しかない。これがオランダのASML、そして日本のキャノンとニコンなんです。この3社が物を出荷しない、露光装置を出荷しないということになると、先端半導体を作ることはできません。



アメリカと足並みを揃える日本という国と書きましたけれども、日本も当然アメリカの同盟国とし て、アメリカの対中半導体制裁に足並みを揃えることになります。

そして今年の3月31日に先端半導体 の製造装置等、23品目を輸出管理の規制対象に加えると発表して、7月に施行したと。そしてこれは、 回路幅で言うと10〜14ナノ以下の先端半導体の製造に必要な装置なんですけれども、これをもう出さないということになったわけです。原則、出さないよということにしたわけですね。原則といっても、もう出ないと考えていいと思います。

今、一つ問題が出ていて。中国が実は7ナノの線幅のものを使ったんですね。量産したと。これは恐 らく14ナノクラスの装置を使っていろいろ工夫をして作ったんだろうと言われていて、これでアメリカはものすごいショックを受けていたんですね。今までの規制が甘かったというふうに彼らは反省していて、おそらくこの14ナノというのがもっと規制が強化されると思います。
オランダも同じく ASMLがありますから、西側と足並みを揃えて露光装置の輸出規制を強化していま す。


アメリカはもう中国に技術を一切与えない方向に切り替わっている

では、それによって何が影響を受けるかというと、中国の産業政策である中国製造2049なんですね。 これは文民融合政策という政策の下に、ここにあるような3段階を経て2049年に世界の製造強国のトッ プ入りをし、中国の夢を実現するというものです。これに影響が出てきています。

つまり、ここに第1 段階で中国製造2025という、製造大国の地位確立と書きましたが、ここで習近平国家主席は知能化戦 争に着眼していて、昨年10月に行われた共産党大会でAI開発とAIを活用する知能化戦争を強調していま す。そして半導体がこの知能化戦争に重要だという話をしましたけれども、半導体の自給率を2020年ま でに0%、2025年までに70%に引き上げる計画をとっています。

ところが、2025年までに計画を達成するということカヾ、非常に危ぶまれる状況になっていて、中国の覇権への動きに対して大きな打撃を与えている。非常に有効に働いているのですが、中国もさるもので、2世代ぐらい古い装置を駆使して、しかもここで言われているのが西側の技術者を高額なお金で引っこ抜いてきて、それをどう活用するかを教えさせているという情報もあります。

そういうような西側の裏切り者技術者の活動などもあって、7ナノを作ったようなんですけれども、この規制がさらに強 化されるだろうと私は思っています。

そして、今年度の国防権限法では、この3社、エスミック、CXMT、YMTCという3社、グループも含めて、これを対象とした非常に強力な規制を実施しています。それはどういうことかというと、この3社から半導体を買ってきた輸入している日本のA社があるとします。この3社の半導体の、まずB社という会社があって、この3社の部品などを組み込まれたユニットなんかを使っている会社があったとします。これをB社と呼びます。

このB社の製品とかサービスは、アメリカ合衆国の政府機関には入れることができません。そしてもっと深刻なのは、この3社のメモリーとか半導体を買ってきて、日本にあるC社という会社が重要なこのシステム、コンピューターシステム、ネット ワークに使っていたとします。



そうすると、ここの半導体にはどんなバックドアとか仕掛けがあるか分からないということで、もちろんこのC社は納入できませんし、C社全体がこういった情報システム、 この3社の部品やユニットを使った情報システムを使っているのはリスクだということで、C社全体の製品がアメリカ合衆国の政府機関には取引ができなくなっていると。こういう規制が法律で導入されました。まだ施行はされていません。

こういった話をずっと話してきましたが、いかにハイテク技術というのが知能化戦争という次世代の戦争に関連しているか、本質的に関連しているか。それを使って世界秩序を変えようとしているのが中国であって、その中国の世界秩序を変えるという野望を止めるために、アメリカ、そして西側諸国は半導体の規制に入った。

そしてプロテクト&プロモートという新しいアメリカの戦略の下、さっき言ったハイテクの半導体とかスパコン、それからAIを使うようなもの、他にグリー ン技術とかそういったものでアメリカはもう中国に技術を一切与えない方向に切り替わっているんだと。これを頭に入れておくことが大切です。

(つづく)
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