topics(671):①食料危機の予兆
株式投資をしている人にとっては、未来に起こりうることだけが関心の中心なのかもしれません。私自身は、外国の株をどこで買えばいいのかなんということは全く知りません。そのため、株を買った方がいいと勧めてくれるレポートが時々送られてくるのですが、それを見るたびに、株の話よりも、そのレポートに書かれている未来予測の方が気になるタイプです。少々変わり者なのかもしれません。
ところで、最近来たレポートに「食糧危機」に関する記述がありました。かなり長いレポートなのですが、現実の国際情勢をきちんと把握していますので、危機を煽るためのものではないと思いました。そこで、株式投資の部分は削除して、食糧問題をどうとらえるかという点に絞って、そのレポートが語る現状を引用してみたいと思います。
実際、世界で起きるであろう食糧不足が日本人の食にも影響を及ぼすものと考えられますので、一つの懸念材料として認識しておくことが重要だと思います。
食糧危機が迫っているのに、誰もその深刻さに気づいていない。これから少なくとも 2024 年まで、世界経済には食料コストの上昇を賄うための大きな 圧力がかかることになる。国民を完全に養うのに苦労する国も出てくるだろう。
実際、食糧不足というだけで、すでに不安や政治的混乱が広がっている国もある。過去の水準と比較して、主要な穀物である小麦・とうもろこし・大豆の価格は大きく上昇している。
イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、英国は「黙示録的」なレベルの食品価格インフレに直面していることを示唆した。国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、食糧不足は「何千万人もの人々を食糧不安に陥れる」ことにつながると指摘した。 その結果、「栄養失調、大量の飢餓、飢饉が何年も続くかもしれない危機」、「世界的な不況の可能性を高める」ことになりかね ない。
ベナン、ニジェール、チャドを訪問した国際連合世界食糧計画(WFP)のデビッド・ ビーズリー事務局長は、「絶対的な危機が目の前で繰り広げられている」と述べている。また、スリランカでは、食糧不足により食糧価格が 1 年間で 46.6%上昇し、今後数カ月 でさらに 40%上昇すると予想されている。現地では、政府の崩壊が懸念されるほど悲 惨な状況だ。何より、この食料不足と価格の高騰は、予期せぬことが起きない限り、すぐには解決しないだろう。
しかし、なぜこのような危機が起こっているのか、経済全体や個別銘柄にどのような影響があるのかを理解しなければ、この世界的なトレンドからどのように利益を得て、自分と家族がこの危機から身を守ることができるのか、どのように自分を適切な位置に置けばよいのかもわからないだろう。
まず、この危機がどのように始まったのかを説明したい。
〜饗 宴 から飢餓へ〜
ここ数年、世界的なパンデミックによって、世界の食糧供給システムの回復力が試され、様々な意味で証明された。しかし今、ウクライナ戦争で、世界の食料サプライチェーンに深刻な問題が起きており、中長期的にはかなり悲惨な状況になっている。
世界の食料・農産物の約 3 分の 2 を供給する「穀倉地帯」と呼ばれる 6 カ国がある。
その 6 つのうち、1 つは戦争で荒廃し(ウクライナ)、1 つは世界的な制裁で断絶し (ロシア)、1 つは小麦不足で輸出を停止し(インド)、1 つは新型コロナウィルスの 拡散を止めるために国をロックダウンさせた(中国)。
ウクライナは長い間、こうした食糧生産国の中で、自国民だけでなく、世界中の人々にとっても最も重要な国の一つだった。ロシアとウクライナを合わせると、世界の小麦・大麦の輸出量の 3 分の 1 近くを占めている。
さらに、ウクライナは肥料をたくさん生産している。2019 年にはウクライナの土地の 57 %が農作物の栽培に使われ、世界で最も耕作が盛んな国の一つとなった。同年、米国が積極的に耕作に利用したのは国土の 17%で、米国は「黄金色に輝く麦 畑」としてよく知られている。
ウクライナは、食料生産に広く利用されているヒマワリ油の世界供給の 30%を占め、 世界の小麦の 8%を生産している。通常は年間 4000 万〜5000 万トンの穀物を輸出しているが、ロシアの侵攻により、3 月の輸出量は2月の4分の1になった。
ウクライナの黒土は、非常に肥沃であり、農地は欧米に比べて安価に運営されている。また、各海港があるため、国際市場へのアクセスも容易だ。このため、ウクライナは「ヨーロッパの穀倉」と呼ばれるほど農産物の輸出が盛んだった。
しかし、海港は封鎖され、ウクライナ人は最後の収穫のほんの一部を鉄道で輸送することしかできなかった。問題は、ウクライナは他のヨーロッパ諸国と線路の軌間が異なるため、貨車がそのまま通過できない点だ。国境で穀物の積み下ろしが必要なため、ボトルネックになっている。
そして、ウクライナの広大な農地は戦場と化し、道路インフラはロシアのミサイルや爆弾の攻撃にさらされ、ウクライナの食糧供給網は完全に押しつぶされた状態となった。
外出禁止令があるため、農作業時間に制限がある。また、道路をパトロールしているため、農機具の移動に制限がある。
明日、平和宣言が行われたとしても、ウクライナの畑は不発弾で埋め尽くされており、農家はそれを除去する必要がある。しかし、農機具が破壊され、熟練工も戦争で失われてしまった。そして、田植えのための畑の準備の時期は過ぎてしまった。
この紛争の長さや規模がどうなるかはわからない。今年は 1900 万トンから 3400 万ト ンの輸出生産が消滅する可能性がある。更に 2023 年までには、1000 万トンから 4300 万トンになるかもしれない。これは、6000 万人から 1 億 5000 万人分の食料に相当する。
ウクライナでは南部の港から8月に農産物の輸出が再開して以降、これまでに輸出された穀物などが100万トンを超えたと、国連が2022年9月に発表している。ただ、ウクライナの農業生産者の中からは、軍事侵攻の影響で種や肥料が買えず、来年の収穫の減少は避けられないという厳しい見方が出ている。
簡単に言えば、ウクライナ戦争の影響は多くの国々に及んでいるが、特に、すでに飢餓が蔓延している貧しい国々が最も痛みを感じることになる。
ウクライナからの穀物輸出の減少は、ウクライナの小麦の多くが輸出されているアフリ カや中東に最も大きな影響を与えることになる。ウクライナはレバノンの小麦輸入の 8 割を占め、ソマリア、シリア、リビアといった国々への主要な供給国となっている。
エジプトは消費する小麦の 3 分の 2 近くを輸入しており、世界最大の小麦輸入国とな っている。エジプトが輸入する小麦の 8 割以上は、ロシアとウクライナからのもの だ。また、輸入品の多くは国内消費用だが、エジプトはこれらの商品を加工して東アフ リカに輸出することも行っている。しかし、今はその供給が途絶えている。
【続く】
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