コラム(484):
② 日本は『超限戦』に敗北した!?
(昨日の “①『超限戦』とは何か――中国の新しい戦争指南書”の続き)
作家の一田和樹さんの書評は続きます。
本書は中国の施策の解説書だ
本書は中国が進めていることの解説書としても読むことができる。一帯一路や中国人民政治協商会議は超限戦を遂行するための仕組みとも考えられる。中国はスリランカに経済協力という名で金を高金利で貸し付け、その返済の代わりにスリランカは南部ハンバントタ港を中国国有企業に 99 年間引き渡すことになった。軍事侵攻で港を占拠するよりもはるかに効率的だ。
より深刻なのは相手国の情報基盤をそっくり手に入れているやり口だ。相手国に資金を提供し、その資金で国民監視システムを構築させる手口も多い(当然、受注するのはHUAWEIやZTEといった中国のIT企業)。国民ひとりひとりの全ての行動を監視カメラ、本人のスマホ、通信傍受、SNSの監視をおこなってAIによってリアルタイムで分析、把握する。これがあればテロや抗議活動、犯罪まで容易に発見できる。
そしてその情報が中国本土にもリアルタイムで共有されたらどうなるのか。中国の監視システムはアジア、ラテンアメリカ、アフリカに普及しつつあり、欧米のNPOやシンクタンクは「デジタル権威主義の輸出」として警告を発している。軍事力ではなく経済と情報によって相手国をコントロール下に置こうとしている。
「超限戦に対抗するには超限戦で応じるしかない」と本書には書かれている。
しかし、そこには致命的な問題がある。超限戦は民主主義的価値に反するのだ。テロに対してはハイテク暗殺(ドローンなど利用)が効果的で、サイバー攻撃には相手のネットワークへの侵入が必要で、サプライチェーン攻撃を行うためには官民の密約が不可欠だ。たとえばアメリカはビン・ラディン殺害に際して情報戦+テロ戦+メディア戦などを行った。しかも現地のパキスタン政府になにも告げずに実施した(パキスタンは主権の侵害と非難している)。どれをとってもルールを逸脱している。
そもそも超限戦は民間セクターを含め、全てを兵器化し、民間人も戦争に参加させる(経済や文化が兵器になるのだから当然そうなる)のだから全体主義的価値観の社会でなければ実行は難しい。
ちなみに「民主主義」も戦争のための兵器と考えれば、古い非効率な兵器は代替されてしかるべきということになる。「ソビエト連邦は核兵器競争では負けなかったが、西側の世論操作で崩壊した」とロシアは考えている。
アメリカでは、エドワード・スノーデンが国家安全保障局(NSA)の監視活動を暴露し、黒人人権運動(Black Lives Matter)で黒人活動家を監視していたSNS監視ツールが暴露されたことでアメリカ政府機関は批判にさらされ、そのために超限戦で取り得る選択肢は狭まった。民主主義国家である欧米では超限戦を思うように遂行できない。
さらに悪いことに民主主義的価値を奉じる国は少数派だ。エコノミストの研究所が 2006 年から発表している民主主義指数によれば「完全な民主主義」国家は 20 カ国、人口では 4.5 %、GDPは 20 %未満である。
「完全な民主主義」でない国の多くはアジア、アフリカ、ラテンアメリカにある。つまり経済と人口の成長が著しく、これから世界の主役になってゆく地域だ。そしてそれらの国々には中国の存在感は大きく、中国企業製の監視システムも数多く納入されている。本書では超国家的な組み合わせ(国家を超えた連携)が広がるとしているが、まさにその通りの展開だ。
最後に申し上げたいのは本書が刊行されたのは20年前という事実である。おそらく日本の安全保障の概念は本書のレベルにすら達していない。この先も敗戦国のままで超限戦を戦う国々に追い抜かされてゆくのか、それとも巻き返せるのか、どちらになるかは国民であるみなさんに委ねられている。日本の未来を考えるためにも本書は必読だ。あらゆる場所が戦場となる以上、日本に暮らすみなさんもすでに戦場に立っているのだ。
この書評と私が受けた講義とで考え合わせると、日本はすでに中国の仕掛けた超限戦に負けているという事実に逢着します。メディアは完全に中国に抑えられています。これは誰れもが認識していることです。情報統制のIT業界も、イーロン・マスク後のツイッターを除けば中国の存在なくしては成り立たなくなっています。
しかも、最大の衝撃は政界にあります。立憲民主党などの中国傀儡政党だけでなく自民党には大幹部から末端の陣笠議員にまで中国の手がかかっています。最近では、宮崎県選出の松下新平参議院議員が「中国人女スパイにハニートラップ!」と週刊誌で叩かれていました。自民党の半分は中国の手先と見て良いでしょう。公明党に至っては山口代表が朝貢外交をしています。
地方自治体の首長も同様で、静岡、愛知の両県知事に疑惑の目が向けられていますし、中国が太平洋侵出の足掛かりとしてのどから手が出るほど欲しい沖縄県は、知事が媚中派どころの騒ぎではありません。
こうしてみるだけでも、中国の超限戦はすさまじく、軍事的な侵攻をせずに静かに日本を侵略していることがわかります。サイレント・インベージョンです。この方が効率よく日本を搾取できます。ミサイルで都市を破壊し、工場を破壊するよりも、よほど効果的です。日本人が軍事的脅威に気を取られているうちに、精神的に侵略されていることに気づかなかったことは誠に残念です。
どうやったら日本人が覚醒するのか、いま真剣に悩んでいます。
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