赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

「脱炭素は幻想」のアメリカ  topics(634)

2022-11-04 00:00:00 | 政治見解



topics(634): 「脱炭素は幻想」のアメリカ

昨日の『苦境に立つバイデン政権』で、カーボンニュートラル・ゼロ実現のためにバイデン政権が化石燃料の採掘に制限をかけたところ、ロシアのウクライナ侵略戦争の引き金を引いただけでなく、結果的に、エネルギー価格の高騰を招き、インフレを引き起こして政権が窮地に立っているとお伝えしました。

では、バイデン政権が強力に押しすすめる脱炭素の動きはどこまで進捗しているのでしょうか


石油大手は大儲け

アメリカでは石油企業の株が上り、一方のEV化は目標通りには進んでいません。

世界最大の石油企業大手エクソンモービルの株価は、2020年の最安値が30.11ドルでしたが、今年の10月21日に最高値である一時106.40ドルまで上昇し、実に三倍強、今もなお、高値が更新中のようです。これで、通期利益は548億ドルと過去最高を記録し、株式時価総額は世界の上所企業10位の4380億ドルとなる見込みのようです。

なお、同社は20年に224億ドルの巨額の赤字を計上し、ダウ工業株30種の構成銘柄から除外されていました。好調の背景には、原油価格が下落した20年に同業他社が太陽光・風力発電に身を乗り出す中、同社が石油への投資に踏み込むことを決定したためと報道されています。

もっと株価の上昇が激しいのは準大手のオクシデンタル・ペトロリアムです。大統領選挙があった2020年の9月1日の株価は10.01ドルだったのが、ちょうど2年後の9月1日には終値が69.24ドル。2年間で6.9倍にもなっています。10月末は72.6ドルです。

これを見ると。脱炭素で、脱化石燃料、石炭石油、そして天然ガスを使わない時代が来る、自然エネルギーと原子力でやっていくなんていうのは、実は全くの幻想ではないのかと思えます。

実際、アメリカ国民は石油会社の株を買っているわけですから、バイデン政権の言う脱炭素ということは聞いていないようにも見えます。騒いでいるのはマルキシズム崩れの民主党左派の環境保護主義者だけなのかもしれません。


EVの目標達成は不可能

この話をEV (Electric Vehicle;電気自動車)化と対比してみるとわかりやすいかもしれません。

バイデン政権はEVを大規模に普及させようということで政権は、2030年までにEVの台数を全体の40%から50%にするといっています。これは新たにその年に売り出す車の4割から5割の新車は全部EVだということになります。

これに対して、EV車の普及を目指すアメリカ自動車イノベーション協会=AAI(Alliance of Automotive Innovation)の会長兼CEOは、バイデン政権の目標達成は不可能だと述べています。

その理由は、アメリカ議会がいわゆるインフレ抑制法を可決しましたが、その中に電気自動車優遇の税額控除案が織り込まれていて、税額控除でどんどんEVを買ってもらおうということにしているのですが、「アメリカ市場には72のEV車種が投入されているにもかかわらず、そのうちの7割が実は税額控除の条件を満たさないから」ということのようです。

要は、バッテリーや原材料に外国の製品を使っていると、この税額控除の対象外になってしまうということでそれがEVの7割に上るということなのです。

EVはバッテリーを含めてレアメタル、希少金属を使う部分が多いわけで、これを中国に依存せざるを得ず、国内で生産することは可能だけれども、鉱山がペイしないので閉鎖っしていることに問題があるようです。

したがって、国内でサプライチェーンを再構築しなければならないとなると、当然時間もお金もかかるし、企業としても投資もしなければいけない。しかし、それをやって価格競争に勝てないということであると、結局、企業は投資をしないということになります。要は、純国産のEVはできないということを言っているわけです。作ろうと思えば、時間とコストがかかるわけです。しかも、補助金・税額控除はずっと続きません。なくなった時には、高価なEVを買う国民はいなくなってしまいます。


洋上風力発電にも危険信号

欧州や中国は再生可能エネルギーの柱として、洋上風力の導入を急拡大しています。アメリカも積極的に参入しているようですが、GE(ゼネラルエレクトリック)が作っている超大型のウインドタービン、Haliade-X (ハリアデ-X=一般家庭16,000世帯の電力をたった1基で十分まかなえるほど強力な洋上風力発電タービン)がライバルのドイツ・シーメンスガメサ者に特許侵害で訴えられ、地方裁判所から有罪、製造中止が申し渡されました。

作ったものについては相当の対価を支払わないとならないようですが、この問題、上告するかどうかはわかりません。このままだと、GEによるアメリカにおける洋上風力発電所は作れなくなりそうです。しかも、この問題は日本にも波及するのは確実です。三菱商事などの企業連合がGEと提携することが決まって準備を進めているからです。


EVも普及せず、そして太陽光発電や風力発電の仕組みにしても、アメリカの国産化というのはなかなか進んでいないということです。少なくとも今の勢いですと、アメリカのEV車普及というのは難しいということになります。だから、石油会社の株価も上がっていくんだということだと思います。

結局、バイデン政権のエネルギー政策が残すのは原発再稼働だけということになるのではないでしょうか。そして、このことが原発推進派にとって最も望ましいことになるのだと思います。



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