赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

脱炭素に逆行する国際社会 topics(635)

2022-11-05 00:00:00 | 政治見解



topics(635): 脱炭素に逆行する国際社会


脱炭素を諦めたEU!?

10月28日、気候変動問題に取り組む金融機関の有志連合「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」は、参加機関に求める国連の温暖化対策に関する要件を廃止すると明らかにしました。要は、脱「脱炭素」にしたわけです。

アメリカのバイデン政権とイギリスのジョンソン政権(当時)が地球温暖化防止のための最優先課題として取り組んできた二酸化炭素削減の政策がすべて裏目に出ました。しかも、エネルギーの高騰とロシアのウクライナ侵略戦争を招き、いまは両国のみならず世界中が物価高騰にあえいだ状態となっています。


石炭の大復活

なかでも物価を押し上げる要因となっているエネルギー問題は、石油や天然ガスの値段を高騰させ、石炭を大復活させ、さらにヨーロッパでは薪の値段までを押し上げています。

アメリカの石油産業は輸出が増えてウハウハの状態ですが、ウクライナ侵略戦争の帰結の一つは世界的に石炭消費量を拡大させています。ヨーロッパの2022年における一般炭の輸入は1億トンとなり、2017年以降で最大になるという予測が発表されました。

これはインドネシアのバリ島で行われた石炭国際会議の場で調査会社が発表したもので、インドネシアの供給増加が非常に大きいということです。オーストラリアも石炭輸出国ですが、豪雨の関係で生産が減少したという話です。今の勢いですと、石炭価格は2025年まで高値を維持するだろうと言われております。

また、ロシアから中国への石炭輸出、これも急増しています。そして石炭火力発電所の電力への需要が急増しています。二酸化炭素をものすごく出した上、汚染物質の処理をやらないため空気が汚くなります。それが偏西風に乗って日本に来ますので、日本は大気汚染がひどくなります。


短期間で脱炭素社会の構築は不可能

結局、現状では、脱炭素社会、石油とか天然ガスを使わない社会なんていうのは不可能だよということになりそうです。実際、これを証明するように、ヨーロッパではこの冬に向けて、天然ガスの貯蔵率を上げているようです。

すでに8月31日の時点で、EU全体の天然ガスの備蓄率は80%を超えたと言われています。先日のブルームバーグ記事では「欧州のエネルギー危機が劇的に好転、ガスが予想外の供給過剰」とあります。

日本のメディアは、とくにテレビメディアは「大変だ、大変だ」、「ロシアが政治的にガス供給を絞って、この冬は大変なことになる」、「エネルギー不足でヨーロッパで凍死者が出るんじゃないか」などと騒いでいたのですが、冬に対してガスの備蓄、貯蔵率というのは着々と上昇して、今まで計画以上の早さでうまく進んでいるわけです。

だから、基本的に日本のメディアを信用してはいけません。天然ガスを止めるということなど、そんな簡単にできるはずはありません。

ロシアから買う量を減らしても、それ以外のところから、ヨーロッパでは、ノルウェーでも天然ガスがでます。イギリスも北海油田を持っています。そして、 アメリカを含めてさまざまな国から天然ガスを液化天然ガスの形で輸入できるのです。フランスなどは、元の植民地のナイジェリア、ナイジェリアも石油天然ガスの大国ですから、そこからの天然ガス輸入を増やしているのです。

ウォールストリートジャーナルもフェイクニュースを流しています。8月の記事で「ドイツは今年いっぱいで原発を止める」というニュースを流しましたが、ドイツ経済気候保護省の報道官に全面否定されてしまいました。どこでも、メディアは自分の頭の中で想像したことを書きたがるようです。


なお、現状のエネルギー価格は上昇していますので、企業も個人も困っているのは確かです。一番困っているのはイギリスかもしれません。冒頭に書いたように、あまりに出鱈目なエネルギー政策をやってきたツケが来たと思われます。

また、短期間に脱炭素だ、化石燃料全廃だなどという極端な政策はありえないことも、今回の教訓で分かってきたことだと思います。



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