赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

⑤トランプ次期大統領の人事——司法長官、財務長官他

2025-01-07 00:00:00 | 政治見解
⑤トランプ次期大統領の人事
——司法長官、財務長官他




前回に引き続き、日本メディアでは報じられることが少ないトランプ政権の布陣について、米政治に精通する専門家に、人となりを含めた詳しい解説をお願いしました。これほどまでに詳しい解説はないと思いますので特別に公開させていただきます。



司法長官に指名されたパム・ボンディ氏

今回の人事の中でも特に重要なのが司法長官のポジションです。トランプ氏は、優秀な下院議員であるマット・ゲイツ氏を指名しました。しかし、ゲイツ氏に対して「17歳の少女と交際していた」などの非難が持ち上がりました。この件について調査が進むと、事実無根のでっち上げであることが明らかになっています。

トランプ氏自身も様々な冤罪で4件の刑事裁判を抱えていますが、これらと同様にゲイツ氏に対する非難も根拠のないものです。それにもかかわらず、ゲイツ氏は司法長官としてディープステートと戦う覚悟を持ち、国会議員を辞任しました。しかし、反対意見が非常に多かったため、トランプ政権がスタートする際に混乱を避けるべく、自ら辞退することを決断しました。


共和党の上院議員は53名いますが、そのうち約5名がゲイツ氏の司法長官就任に反対しました。その理由は、ゲイツ氏が議員の不正行為を徹底的に調査していたことに起因します。彼は株取引やウクライナ戦争に関連した疑惑を含む、不正行為を暴いてきました。これには共和党議員も含まれており、ゲイツ氏が司法長官になると自身の不正が明るみに出ることを恐れた議員たちが反対に回ったと見られます。これが反対の背後にある真相ではないでしょうか。

結果として、ゲイツ氏が辞退したことで、トランプ氏は11月23日にパム・ボンディ氏を司法長官に指名しました。ボンディ氏は元フロリダ州の司法長官であり、医師の資格を持つ人物でもあります。トランプ氏の弁護団にも加わっていた経験があり、ディープステートとの戦いを公然と宣言している人物です。このような経歴を持つ彼女の指名は、予想外の強力な一手であったと言えるのではないでしょうか。

ゲイツ氏と同等、あるいはそれ以上の実力を持つ、司法省のディープステートと戦う新たなファイターが現れたということですね。非常に力強い出来事だと思います。トランプ陣営は人材が豊富で、頼もしい限りです。

現在、司法省では辞任が相次いでいます。アメリカでは大統領が交代し、政党が変わると、中央官庁の人員も大規模に入れ替わります。その数は約4,000人に上ると言われています。この仕組みは政治方針の転換を反映したものですが、日本に例えると、局長や課長といった中枢の人員が総入れ替えになるようなものです。

こうした状況の中、職を失うことがほぼ確実な人たちは、自ら辞任する動きが加速しているようです。さらに、司法省の前にはシュレッダー機能を備えた大型トラックが止まっているのが目撃されています。これについては、コンピューターのデータを削除し、書類をシュレッダーで処分することで、証拠隠滅を図っているのではないかという憶測が広がっています。


財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏

11月22日にスコット・ベッセント氏が財務長官に指名されました。これは、明らかな妥協による人事といえるでしょう。この方は同性愛者であり、同性婚をしている人物です。トランプ陣営にはLGBTQの方々も存在しており、こうした個人の性的指向は個人主義の範囲内の問題であり、保守の陣営に属していても何ら問題はありません。

アメリカの保守思想は、個人の自由を最大限に尊重することを基本としています。以前、アメリカで開催されたCPACに参加した方をリモートでインタビューした際、同性愛者の男性がこう述べていました。「これまでは同性愛者は民主党を支持しなければならないと思っていたが、それは思い込みだった。政策的にはトランプの主張は理にかなっており、個人の自由を尊重している。」トランプ運動は、一言でいえば経済ナショナリズム運動です。LGBTQの権利を尊重する姿勢は非常に寛容で、そうした理由からトランプを支持する同性愛者も多いのです。

この点は非常に良いことだと思います。しかし、ベッセント氏に関しては「ソロス・コネクション」という懸念があります。彼は長年ジョージ・ソロス氏の下で働いており、ソロス氏から20億ドルの資金提供を受けて自身の会社を立ち上げた経験があります。現在はソロス氏との関係を否定していますが、過去の経歴が問題視される可能性は否定できません。


一方で、彼はどのような経緯かは不明ですが、トランプ氏に高額の献金を行い、今回の選挙で尽力した結果、財務長官に指名されました。しかし、個人的には商務長官に指名されたハワード・ラトニック氏が財務長官にも適任だと思っていました。この話は以前にも触れたと思いますが、ラトニック氏は対中国政策において非常に強硬な姿勢を取る人物であり、中国共産党に対して高関税を積極的に導入する方針を掲げています。

商務長官としてラトニック氏が内閣にいることは非常に心強いですが、もしベッセント氏が財務長官として問題を起こすようなことがあれば、ラトニック氏がその役職に移ることも十分に考えられるでしょう。

財務長官というポジションは政権の「顔」とも言える重要な役割を担っています。予算編成に関与するだけでなく、アメリカのドルをどのように管理するかという極めて重要な責務を負っています。そのようなポジションにかつて敵対していた人物を起用するというのは、非常に興味深い判断です。この背景については今後さらに掘り下げて調査し、分かったことを皆さんにお伝えしていきたいと思います。


商務長官に指名されたハワード・ラトニック氏

さて、ハワード・ラトニック商務長官については特に問題ないとの評価です。また、この方がUSTR(米国通商代表)も兼任する可能性があるのではないかという見方もあります。というのも、トランプ氏は具体的に明言しなかったものの、「この人にUSTRとしての責任も持たせる」と発言しているためです。




この発言が「米国通商代表を兼任させる」という意味なのか、それとも「商務長官が通商政策を完全に掌握し、USTRを指揮下に置く」という意味なのかは明確ではありません。ただし、特に対中強硬論を実践するという意図があると考えられ、大変良い人事だと感じます。


教育長官に指名されたリンダ・マクマホン氏

さらに、リンダ・マクマホン氏が教育長官に指名されました。これらの人事はすべて11月19日に発表されています。マクマホン氏は第一次トランプ政権で中小企業庁長官を務めた経歴を持ち、プロレス団体の経営者としても知られています。これは、トランプ氏が格闘技好きであることが影響しているのかもしれません。

ラトニック氏とマクマホン氏はいずれも政権移行チームの一員であり、トランプ氏と直接協議しながら、どのような人物をどのポジションに指名するべきかを検討してきた人物です。



次に、連邦教育長官という役職についてですが、保守派の間では教育省の廃止を議論するほどの意見があります。保守派の考えでは、教育の主導権は各州や自治体に与えるべきであり、さらに根本的には親に教育の主導権を持たせるべきだというものです。そのため、連邦教育省が教育現場に干渉するのは望ましくないとされています。

特に、LGBTQ関連の教育方針をワシントンD.C.の教育省が上から押し付けるような状況が問題視されています。保守派としては、連邦教育省は必要なく、各地の教育委員会や州・自治体で対応すれば十分であるという考えが強くあります。また、自分たちの身近な場所で教育方針を決めたいという思いが強く、自分たちから遠いワシントンD.C.の官僚に子供の教育を委ねたくないという意識が根底にあります。

このような背景から、教育省の役割を縮小することがリンダ・マクマホン氏の重要な任務となるでしょう。また、教育関連の補助金の中には、LGBTQ教育など特定の利権に結びついたものが多く含まれているため、これらを削減していくことも彼女の仕事になると考えられます。

2024年の大統領選挙では、マクマホン氏はトランプ支持のスーパーPAC(政治行動委員会)を設立し、活動に大いに尽力しました。このように、政治資金団体を通じてトランプ氏を支援する役割も果たしてきた人物です。


運輸長官に指名されたショーン・ダフィー氏

ショーン・ダフィー氏が運輸長官に指名されました。彼は電気自動車の補助金や税金控除といった政府の補助金をすべて廃止する方針を決めています。ただし、それに対してイーロン・マスク氏が抗議したという話は特に聞かれていません。


また、トランプ氏の考えとしては「CO2削減は必要ない」という姿勢を取っています。そのため、ダフィー氏の役割はこうした補助金の削減を進めることにあるといえます。

さらに、アメリカ国内の空港や港湾、高速道路といったインフラが老朽化している現状も問題視されています。これらのインフラが戦後、特に1950年代から1960年代にかけて整備されたものですが、現在ではすっかり劣化が進んでいます。この状況はレーガン時代から指摘されてきた課題です。

そのため、ダフィー氏のもう一つの重要な仕事は、当時十分な予算の中で作られたこれらのインフラを再構築することです。

(了)
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