山本あけみ「緑ゆたかな環境を子どもたちへ」

建築士や生活者として、都市計画・公共施設マネジメント・地球温暖化対策・SDGsなど、独自の視点で日々発信

平成24年 第三定例会がはじまり一般質問が終わりました。

2012-09-06 | 議会報告

昨日から第三定例会がはじまりました。

事後報告ですが、今回の一般質問では「教育について」を取り上げ、

約15分にわたり質問をし、教育委員会から答弁を頂きました。

杉並区でもグローバル化を見据えた教育体制を構築していってほしい、

という願いを込めて。

次世代を担う子供たち、ひとりひとりに力をつけていって欲しい、その仕組みを考えてほしいという問題的です。

正直なところ、今回の答弁の内容には期待が持てるものではなかったのですが、

これからも意を固くして推進していきたいと考えています。

(答弁を含めた区政報告は作成次第アップいたします。)

 

質問全文

 

先の第一定例会の一般質問で、「ガラパゴス化現象」という言葉を

ご紹介致しました。

「技術やサービスなどが日本市場で独自の進化をとげて、世界標準からかけ離れてしまうという現象が起きており、ガラパゴス諸島における、

固有の生物の進化にたとえられている。」

というものです。

 

昨今見られる具体的な事例としては、

・耐震基準が厳しく技術水準は世界トップでありながらもコストが高く

積極的に海外展開できない日本の建設業であるとか、

・大型液晶テレビにおいては、

当初は世界市場をリードする技術力を誇っていたものの、

数年経つと、国内市場の顧客の一部に目を向けた技術の過度な追求によるコスト高となり、また、不必要とも思われる機能を多数付けてしまった結果として評価をされない、つまり購買につながらなくなってしまったという例があげられると考えます。

 

高度なニーズに基づいた市場が日本国内に存在するため、日本市場がそれに照準を合わせて独自の進化を遂げている間に、

海外では「事実上の世界標準」が決まり、気がついた時には、世界の標準から大きく取り残されているということです。

言い換えると、内向きばかりに気を取られた結果、外から見た内、を見ることが出来なくなってきたと言うことでは無いでしょうか?

 

1980年代に入ってからのインターネットの普及により情報革命が起こった結果、一挙にグローバル化の進展が地球規模で始まりました。

これまで存在していた国家・地域などタテ割りの境界を超え、地球が

ひとつの単位となりました。

国家ではなく人類の視点から、先に述べたようなそれぞれの国の経済活動の動向においても、また

環境破壊、戦争、貧困などの地球的問題にも取り組む時代へと突入しています。

一方で各国が金融自由化を進めてきた結果、地球上の1カ所の経済破綻が、通貨危機や世界同時不況として波及する事態が相次ぎ発生し、私たちの生活をも直撃するという経験もしました。

そして昨今では一度何かことが起こると、その波及する早さが加速度を増してきているように感じています。

 

この様にグローバル化されていく世の中をこれから生きていく、次世代を担う子どもを育てていくために、今最も改革を迫られる分野として

グローバル化を見据えた教育があるのではないでしょうか。

これはOECDの生徒の学習到達度調査である通称PISAの創設理念にも通じるものであると考えています。

つまり、これからの学力の向上は国際的にみても柔軟に対応ができる能力を持った生徒の育成を目標とすべきという、明確な方向性を示しているのだと考えています。このことは先ほど例示をしたような経済活動に限ったことではありません。

 

文部科学省が平成21年に行った国際教育 交流政策懇談会の具体的な論点としては、

「グローバル化する世界の中で文化の多様性を尊重し受け入れる寛容な姿勢を育むための国際教育交流はグローバル化に伴い、地球規模での相互連結性が高まり、異なる文化・文明の接点が大規模に広がっていく。

このことは異なる倫理観・価値観の間での摩擦を生み出す危険性が高まっていくことを意味している。このため、異なる文化・文明を理解、尊重し受け入れる寛容さが国際的な摩擦を緩和し、平和な国際社会を維持する上で重要となる。」としています。

そして結びには「このような精神的寛容さを培い、共通の倫理観・価値観を確認するためには実際に異文化・文明に属する人びとと接触する機会を増やすことが重要であり、国際教育交流を通じた取り組みが必要である。」とあります。

 

本年2月の第一定例会でのわたくしの一般質問、

「教師が教育についての見識を広める目的に行う海外の友好都市や先進地域への教育視察・研修派遣については大変大きな成果を期待できると思いますが、区の考えや今後の方向性についてはいかがでしょうか。」とい問いに対し、

 

 

教育長からの答弁では、

「教員が海外に行き、諸外国の教育事情について見識を広めることは、教員としての資質能力を向上させるとともに異なった文化に触れ、交流を深めることができ、様々な効果が期待できるものと認識している。教育委員会としては、文部科学省や東京都教育委員会が実施している海外

派遣研修等へ積極的に参加するよう働き掛けていく。」

という大変心強いもので、私の質問した意図と区の方向性が合致した

ことに対してはありがたく感じました。

 

現在、文部科学省の海外教師派遣制度では、

「教育課題研修 指導者 海外派遣プログラム」というものがあり、

派遣テーマに関しての地域の中核的な役割を担う指導者となる者を

参加者対象者としています。

ねらいは学校現場が抱える重要な教育課題についてとし、先進的に取り組んでいる諸外国の指導内容や指導方法の調査・研究を行い、各地域における教育課題研修の指導者を養成することとしています。

 

平成24年度の教育課題は10テーマあります。

①学校経営の改善   ②言語力・コミュニケーション力の育成 

②ISA型学力の育成  ④学校安全・防災教育の推進   

⑤生徒指導・教育相談の充実   ⑥キャリア教育の充実

⑦スポーツ・健康教育の推進   ⑧学校教員の情報化・ICTの活用   ⑨特別支援教育の充実 そして⑩学校と地域等の連携

が挙げられています。

 

これらは、いずれも杉並区においても取り組みをしているものであり、

これから一層の充実が望まれるテーマであると考えます。

派遣対象国はアメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・スウェーデン・フィンランド等があり研修期間も長期に渡ります。

参加は各都道府県、および政令指定都市の推薦にもとづき、教員研修センターと文部科学省によって選考は決定されることになり、

参加をするには大変ハードルの高いものと考えられます。

 

また、東京都教育委員会での休職制度を適用することが出来る教師向けの海外研修プログラムを用意している東京都指定の民間の団体によると、教員や学校職員の方々が、海外の小・中・高等学校等の

客員教員として、日本文化や日本事情を紹介しながら、海外の教職員と交流する海外研修として、春休みや夏休みを利用した教育交流である

インターンシップ プログラムがあり、 2週間から9週間を選択して、海外の教育事情を身近に体験する、というものがあります。

 

日本語教育に熱心なオーストラリアやニュージーランド、そして前述のPISAという学習到達度調査においてトップの成績をあげてきた

フィンランドを始めとする北欧での短期研修も用意されています。

 

実際に制度を利用してオーストラリアのインターンシップに行かれた

先生の感想として、

「これから日本で教員をやる上で良い経験だったと思います。海外へ行かずに毎日、時間に追われて学校教育という仕事をするよりも自分の経験を生かして幅広い見識から生徒との関係をもてるような気がします。

そして、一番は、これからの国際社会の先頭に立つ子供たちに、

国一つ一つという考えから世界は一つであること。そして、子供達がその世界で必ずできる事があるということを自分の経験から教えることができるのではないでしょうか。

とおっしゃっています。

これから杉並区内に一人でも多くのこういった経験を持つ教員を増やすことで、自らの経験として国際社会を語ることが出来るのでは無いで

しょうか?

 

そこで質問をいたします。

≪質問1≫

杉並区においては休職制度を利用しての海外留学にはどの様なものがあるのかお尋ねいたします。

≪質問2≫

また、教員が文部科学省や東京都教育委員会が実施している公的な海外派遣研修制度や休職制度を活用した「海外教育交換プログラム」などの海外留学による自己啓発を行う意義とこれまでの

杉並区での教員の派遣・参加状況について伺います。

≪質問3≫  

そして、今後教員の休職による、海外留学ができる制度についての

広報・啓発に努めるとともに、

参加したいという強い意欲をもつ教員の思いに応えていける必要があると考えますが、いかがでしょうか。

 

さて、この夏、渋谷区では児童のフィンランド派遣が実施されました。公立小学校5 、6 年生の志願者が面接と作文による選考の上、

各校1 名、全19 名が渋谷区としてもはじめて派遣をされたのです。

この児童派遣が実施された背景には、それまでの7年にわたる準備

期間がありました。

平成17、18年に 小中学校校長と教職員、

平成20年に    区長と区議会議員、

平成22年に    教育長と区議会議員、

そして中学校校長と区職員が相次いでフィンランド視察に行かれました。

そして区役所内の会議室では「フィンランドの生活」や「フィンランドの教育」といったテーマで在日フィンランド大使による講習会を重ね、

その重要性を区内議論として熟成していきました。

そして本年8月小学生による5泊のフィンランド派遣研修が実現しました。

 

募集要項によると、その目的として、

「次世代を担う子どもたちに、異文化を理解し、国際的視野や感覚を

養う機会を提供することを目的として、フィンランド共和国へ派遣します。児童相互が交流に取り組む中で、コミュニケーションの重要性を理解し、文化や習慣の違いについても認識していく機会とします。」としています。

 

 先日、わたくしは実際にこの研修に参加をした児童の保護者にお話を伺うことができました。

フィンランドでの研修は、首都ヘルシンキ近辺の総合学校といわれる、

小中一貫校及び特別支援学校において片言の英語とボディーランゲージを駆使しながらも、現地の生徒と一緒に、

夏真っ盛りの、緑豊かな森へのハイキングや、設備・情報とも充実した

科学館の見学をしてきたといいます。

帰国をしてからは、児童自らが撮影した写真をご両親に説明をしながら、とりわけこの児童が興味を持った東京とはまったく異なるヨーロッパの

街並みのすばらしさを、興奮した様子で「楽しかった。」と話してくれたと

いうことです。

渋谷区ではこの実際のフィンランドでの研修のほかに、事前と事後においても研修を用意し、また、児童の安全を一番に気遣う、国内で待つ保護者への報告には、日々フィンランドでの児童の様子をネット配信して報告をしてくれたといいます。

 

この派遣に関してはそれぞれの自治体の事情により、一概に直ぐに

そのまま実現を望むということではないものの、その先進的な取り組みには学ぶところが大きいと考えます。

また、派遣の成果を拙速に児童や学校、また自治体に求めるという

ことも難しいと考えていますが、渋谷区がこれらの取組みをすることで、

児童・生徒が国際社会への関心を当時者として持つことができる、

という点においては、これは大きな成果の一つではないかと考えます。

 

そこで質問を致します。

≪質問4≫ 

 杉並区の児童・生徒の海外派遣のねらいと、これまでの実施状況及び今後の方向性についてお伺いしたいと思います。

 

また、私は、国内においてもグローバル化に対応できる教育を後押しするための、国際理解教育を推進することが出来ると考えています。

現在、区有施設の再編整備が行われる中で、これらを有効活用した

夏季限定の小・中学生向けのイングリッシュ キャンプを実施しては

いかがと考えています。

 

イングリッシュ キャンプとは宿泊を伴うキャンプをネイティブイングリッシュスピーカーが引率し、川遊びやバーベキュー、キャンプファイヤーなどの遊びを通して、英語漬けの時間を過ごすことにより、

日本にいながらにして英語のヒアリング能力を高め、異文化を持つ引率者との交流により異文化コミュニケーション能力を高める効果が期待できると考えます。

民間営利団体が夏休み期間中に主催するものも多くありますが、参加のためにまとまった費用がかかるために、その意義は感じながらも残念ながら参加を躊躇する家庭も多くあると伺っています。

 

そこで質問をいたします。

 

≪質問5≫  

現在、区立学校において、夏季休業期間中を利用した「イングリッシュ キャンプ」のような国際理解教育や英語教育にかかわる特色ある

教育活動の実施状況はいかがでしょうか。

≪質問6≫  

また、小中学生を対象とした「イングリッシュ キャンプ」を区宿泊施設等において実施することについて、今後の方向性を伺います。

私は、お子様を持つ各ご家庭が経済的にどのような状況であっても、イングリッシュ キャンプのような未来の国際社会で生きるために

役に立つ学習プログラムに参加することができる社会であって欲しい、

それを推進していける杉並区であってもらいたいと考えております。

 

大変残念なことに、これからの少子高齢化に伴い、次世代を担うという子供たちへの負担はさらに増してくると考えます。

ひとりひとりの力を育成していく、それを培うためのグローバル化を見据えた教育への期待もさらに増すばかりでしょう。

 

是非とも前向きな導入のご検討を要望いたしまして、わたくしの質問を終わらせていただきます。