「まえがき」 「空想科学 日本昔話 読本」 柳田 理科雄 株 扶桑社 2006年
きっかけは、ある年配の方に「どんな本を書いているの」と尋ねられたことだった。
「ウルトラマンが本当に現れたらどうなるか、現実の科学で研究しています」と答えると、
まったく要領をを得ない面持ちで「ウルトラマン?よく知りませんねえ」とおっしゃった。
ご年齢を考えれば当たり前なのだが、ちょっとした衝撃だった。
われらのウルトラマンを、ある世代から上の人は知らない。
すると彼らは、どんなヒーローに憧れて育ったのだろう。
鞍馬天狗か、笛吹童子か。その前の世代、源義経など歴史上の人物か。
ならばその前は?
このように考えていくと、ある一群が浮かび上がってきた。
昔話の主人公たちではなかったか。
考えてみれば、彼らも物凄い人たちである。
一寸法師は自分よりはるかに大きな鬼を倒し、
桃太郎は犬 猿 雉子という兵力で鬼の大軍勢を屈従させる。
わらしべ長者が一本のわらから巨万の富を得れば、かぐや姫はたった三ヶ月で美しい乙女に成長。
なんと思い切った設定。
そしてパワフルな展開であろう。
ウルトラマンや仮面ライダーがそうであったように、彼らもまた 子供たちの憧れを
全身で 受け止めてきたのではないだろうか。
ゆえに、その横顔や行跡には、人間の想像力が限界まで注ぎ込まれているに違いない。
ならば 科学の力で、その実力を見極めてみようではないか。
昔話に科学。
無謀のようでもあり、愚行のようでもあるが、筆者は信じている。
いかなる対象も、疑問や興味を抱き、データを集め、技能を磨き、自分の頭で徹底的に考えれば、
それまでになかった新しい何かが生まれる、と。
はるか昔から多くの子どもたちに愛されてきた人々が、何を見せてくれるか、楽しみでたまらない。
こうして研究を初めてみると、あることに気がついた。
細部を確かめるために本を開くと、自分の知っている話と微妙に違うのだ。
本によって、食い違うことも多い。
それもそのはず、昔話は口承文化であるから、語り伝えられているうちに、
語り手の脚色や改編が加えられて当然である。
子どもや孫を少しでも喜ばせたい、わくわくさせたい、あるいは 陰惨すぎる場面は聞かせたくない。
そうした愛情が、昔話をバージョン豊かにしているのだろう。
味噌汁の味が家庭によって違うように、人々の心の中にある昔話も、さまざまである。
本書は筆者が知っている昔話を材料にして書かせてもらった。
あなたが知っている昔話と違う点があったら、
それこそは 人みな それぞれに愛されてきた証拠なのだと思う。
きっかけは、ある年配の方に「どんな本を書いているの」と尋ねられたことだった。
「ウルトラマンが本当に現れたらどうなるか、現実の科学で研究しています」と答えると、
まったく要領をを得ない面持ちで「ウルトラマン?よく知りませんねえ」とおっしゃった。
ご年齢を考えれば当たり前なのだが、ちょっとした衝撃だった。
われらのウルトラマンを、ある世代から上の人は知らない。
すると彼らは、どんなヒーローに憧れて育ったのだろう。
鞍馬天狗か、笛吹童子か。その前の世代、源義経など歴史上の人物か。
ならばその前は?
このように考えていくと、ある一群が浮かび上がってきた。
昔話の主人公たちではなかったか。
考えてみれば、彼らも物凄い人たちである。
一寸法師は自分よりはるかに大きな鬼を倒し、
桃太郎は犬 猿 雉子という兵力で鬼の大軍勢を屈従させる。
わらしべ長者が一本のわらから巨万の富を得れば、かぐや姫はたった三ヶ月で美しい乙女に成長。
なんと思い切った設定。
そしてパワフルな展開であろう。
ウルトラマンや仮面ライダーがそうであったように、彼らもまた 子供たちの憧れを
全身で 受け止めてきたのではないだろうか。
ゆえに、その横顔や行跡には、人間の想像力が限界まで注ぎ込まれているに違いない。
ならば 科学の力で、その実力を見極めてみようではないか。
昔話に科学。
無謀のようでもあり、愚行のようでもあるが、筆者は信じている。
いかなる対象も、疑問や興味を抱き、データを集め、技能を磨き、自分の頭で徹底的に考えれば、
それまでになかった新しい何かが生まれる、と。
はるか昔から多くの子どもたちに愛されてきた人々が、何を見せてくれるか、楽しみでたまらない。
こうして研究を初めてみると、あることに気がついた。
細部を確かめるために本を開くと、自分の知っている話と微妙に違うのだ。
本によって、食い違うことも多い。
それもそのはず、昔話は口承文化であるから、語り伝えられているうちに、
語り手の脚色や改編が加えられて当然である。
子どもや孫を少しでも喜ばせたい、わくわくさせたい、あるいは 陰惨すぎる場面は聞かせたくない。
そうした愛情が、昔話をバージョン豊かにしているのだろう。
味噌汁の味が家庭によって違うように、人々の心の中にある昔話も、さまざまである。
本書は筆者が知っている昔話を材料にして書かせてもらった。
あなたが知っている昔話と違う点があったら、
それこそは 人みな それぞれに愛されてきた証拠なのだと思う。