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「中高年のための文章読本」その1 梅田 卓夫

2014年10月22日 01時17分51秒 | 文章読本(作法)
 「中高年のための文章読本」その1 梅田 卓夫 著  ちくま学芸文庫 書き下ろし 2003年

 エッセイを書くようになって、いろんなエッセイに関する本を読んでみたけど、
なかなかこれといった本がなくて、やっと出会ったのがこの本。
エッセイを書いている人、これから書いてみようとしている人のために抜粋して紹介します。

 「<私>を表現する」 P-12

 人は自分のこころを書きとめてみたいと思うものです。
 子育てや会社の仕事に追われている人間は抑えていても、それらに一段落がつき、ゆとりが生じたときに、多くの人が自分のこころを書きとめたいと思うものです。
これはある意味で青年期の再来といってもよいでしょう。
人生の新しい1ページが開かれようとしているのです。

 日々、私たちはさまざまなことを考えます。
それらは一瞬の後には消えていってしまう。
少なくとも自分にとっては、かけがえのないものが、そこに含まれていたのではないか―――あれを書きとめることができたらいいな、考えることがあります。

 これまでにいろいろなことを経験してきた。
仕事でも、子育てでも、それらを文章にすることができたら、貴重な記録になるのではないか。
他人に読んでもらえるものになるのではないか―――とも。

 詩や小説を読む。
人間の感性や想像力が鮮やかに作品化されているのを楽しみながら、ときには、読むだけでなく自分にも、こういう作品が書けたらいいな、勉強して書けるものなら書いてみたい―――と考えることもあります。

 これはきわめて自然なことです。
私たちはことばによってはじめて自分を再認識することができるからです。
日々、漠然と生きているうちに見失ったり、とらえ損ねている自分を、ことば(文章)という、他人にも自分にもとらえることのできる体系のなかに置いて客観的に眺めてみたいと願うことは、人間として自然な願望です。