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「知らざあ言って聞かせやしょう」 1、歌舞伎と人形浄瑠璃は兄弟の演劇 その3

2017年03月03日 00時11分22秒 | 伝統芸能(歌舞伎など)
 「知らざあ言って聞かせやしょう」 心に響く歌舞伎の名せりふ 赤坂 治績 新潮新書 2003年

 1、歌舞伎と人形浄瑠璃は兄弟の演劇 その3

 一方、語り物である人形浄瑠璃の台本(「丸本」と言う)は、すべての詞章を太夫(語り手)が語るように書かれています。(ただし、長編なので、複数の語り手が自分の担当する部分だけを語ります)。人形遣いはそれに基づいて人形を操るのです。

 したがって、人形浄瑠璃を歌舞伎にするためには、人形浄瑠璃の丸本を歌舞伎の台帳に書き直さなければなりません。浄瑠璃の詞章は大別して、登場人物のせりふの部分と小説で言う地の文に分かれますが、人間の動きでは無理な所などがあるので、俳優が演じられるように書き直さなければならないのです。

 こうして、対話を中心としながらも、状況説明や役の心理などを義太夫節の太夫が語るという、歌舞伎の義太夫狂言の様式が成立しました。本来の歌舞伎台帳の様式(スタイル)と人形浄瑠璃の様式を折衷し、俳優だけでなく、義太夫節の太夫・三味線も出演するという特殊な様式が生まれたのです。