鬼退治
むかしのことだそうだ。
めったに人が通んねぇような山道を、ひとりの男が 走るように歩いていたと。
おっかさんが 危篤だっていうんで、郷里(くに)へ帰りを急いでいたと。
すると、突然、男の前に、鬼が飛び出してきたと。
「丁度いい、腹が減っていたところだ。」
鬼は男を食おうとしたと。
(おっかさんに会うまでは、食われてたまるか。)
男はなんとか助かる方法はないかと考えたと。
そして、ひらめいたと。
「よーし、おれも男だ、いさぎよく、食われてやらぁ。
だけんど、おらぁー、どうせ食われるんなら 大入道に 食われてぇ。
おめぇも鬼なら 大入道になるくらい わけなかんべ?
頼むっから 大入道になってから、食ってくんねぇか。」
「お安い御用だ。」
鬼は グン グン、グン グン、大きくなって、大入道になったと。
「うわぁー、たいしたもんだ。・・・だけんど、大きくは なれても 小さくは なれめぇ。」
「小さくだってなれるわい。なにになってほしい、言ってみろ。」
「そうだな、アリンコなんかは どうだ?」
「お安い御用だ」
大入道は シュル シュル、シュル シュル、小さくなって、アリンコになったと。
男は 足元で チョコ チョコ 動いているアリンコを 見下ろすと、
足のウラで (グシャッと) ふみつぶして、なーんにもなかったように、先を急いだと。
おしまい
むかしのことだそうだ。
めったに人が通んねぇような山道を、ひとりの男が 走るように歩いていたと。
おっかさんが 危篤だっていうんで、郷里(くに)へ帰りを急いでいたと。
すると、突然、男の前に、鬼が飛び出してきたと。
「丁度いい、腹が減っていたところだ。」
鬼は男を食おうとしたと。
(おっかさんに会うまでは、食われてたまるか。)
男はなんとか助かる方法はないかと考えたと。
そして、ひらめいたと。
「よーし、おれも男だ、いさぎよく、食われてやらぁ。
だけんど、おらぁー、どうせ食われるんなら 大入道に 食われてぇ。
おめぇも鬼なら 大入道になるくらい わけなかんべ?
頼むっから 大入道になってから、食ってくんねぇか。」
「お安い御用だ。」
鬼は グン グン、グン グン、大きくなって、大入道になったと。
「うわぁー、たいしたもんだ。・・・だけんど、大きくは なれても 小さくは なれめぇ。」
「小さくだってなれるわい。なにになってほしい、言ってみろ。」
「そうだな、アリンコなんかは どうだ?」
「お安い御用だ」
大入道は シュル シュル、シュル シュル、小さくなって、アリンコになったと。
男は 足元で チョコ チョコ 動いているアリンコを 見下ろすと、
足のウラで (グシャッと) ふみつぶして、なーんにもなかったように、先を急いだと。
おしまい