民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「ふつうがえらい」 佐野 洋子

2013年12月20日 00時44分40秒 | エッセイ(模範)
 「ふつうがえらい」 佐野 洋子 著  マガジンハウス 1991年

 「神様はえらい」 P-22

 「うちにね、娘が二人居るんですけどね」
 と、ちゃんと背広を着た男の人が私に言った。
 「年子ですよ。上が六歳で下が五歳なんですよ。うちで金魚飼っていたんですわ。
そしたら、水槽の温度が上がったんですね。金魚が死んじゃったんです。
そしたら二人でお墓作るって言うんです。私見てたんです。
そしたら上の子はですね、まあ掘って掘って掘るんですわ。そんなに掘らんでもいいだろってつい言ったら、おこりましてね、猫が掘って食べちゃうじゃないかって、また掘って掘って掘るんですわ。

 なるほど思いましてね、見てました。何々きちんとしていると思いましてね。
それで妹見ましたらね、そのへんの落ち葉ぱっぱっと集めて来ましてね、その上に金魚置いてね、
その上にまた落ち葉パラパラとまいておしまいなんですわ。私腹立ちましてね、おねえちゃんを見なさい、
ちゃんと穴掘っているだろうと言ったんです、いいかげんなことするなって。
そしたら妹が、これがおこりましてね。そんな穴の中に入れてぎゅぎゅづめにしたら苦しいじゃないの、
暗くて寂しいじゃないのって泣いておこるんですわ。落ち葉のふとんの方がいい気持ちにきまっている。
わたしはこれがいいのって言うんですわ。いやあ違うもんだなあと感心しました。
子供って一つずつちがうもんですなあ。それぞれでいいんです」

 私は明らかに落ち葉パラパラの方である。もう世の中ってこの二つのタイプに分けられちゃうのね。
やたらくそまじめと、他人から見るといいかげんなヤツ。
世界に男と女がおよそ半分位にばらまかれているのと同じに、この二つのタイプがちょうどいいかげんに
分布している。そして、これが、何だか知らないけど変にぴったりくっついておぎない合っている。
一つの家の中に、片方は電気をつけっ放しにして、一人がいちいち消し歩いて、ののしり合いながら
結構夫婦三十年などやっている。

 後略

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
それぞれでいい (かりん)
2013-12-24 20:10:06
はじめまして。
毎回いろんなお話を読ませてもらい楽しくも勉強になってます。
このお話、まるで我が家の家族を見てるようでした。
でも、それぞれでいいんだなーって思いました。
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REそれぞれでいい (akira)
2013-12-24 21:41:09
コメントありがとうございます。

 >このお話、まるで我が家の家族を見てるようでした。

 似たように性格が違う姉妹(兄弟)がいるんでしょうか?
それともダンナとあなただったりして・・・。

 私は深く掘るタイプですね、・・・たぶん。
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