民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「大本営発表」 その3 辻田 真佐憲

2018年01月17日 00時18分23秒 | 雑学知識
 「大本営発表」 その3 改鼠・隠蔽・捏造の太平洋戦争 辻田 真佐憲 幻冬舎新書 2016年

 「はじめに」 その2

 大本営発表のデタラメぶりは、実に想像を絶する。
 大本営発表によれば、日本軍は、太平洋戦争で連合軍の戦艦を43隻沈め、空母を84隻沈めたという。
だが実際のところ連合軍の喪失は、戦艦4隻、空母11隻にすぎなかった。つまり、戦艦の戦果は10.75倍に、空母の戦果は約7.6倍に、水増しされたのである。反対に、日本軍の喪失は、戦艦8隻が3隻に、空母19隻が4隻に圧縮された。

 単純ミスなどではとうてい説明できない。あまりにもデタラメな数字の独り歩きである。こうした戦果の誇張と損害の隠蔽は、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦など小型船艇や輸送船、さらには飛行機や地上兵力の数字などにも及んだ。

 数字だけではない。大本営発表のデタラメぶりは、表現や運用にも現れた。絶望的な敗北は闇から闇へと葬られた。守備隊の撤退は「転進」といいかえられ、その全滅は「玉砕」として美化された。悲惨な地上戦は数行で片付けられ、神風特別攻撃隊の「華々しい」出撃で覆い隠された。本土空襲の被害はもっぱら「軽微」とされ、ときに「目下調査中」のまま永遠に発表されなかった。

 大本営発表は戦局の悪化とともに現実感を失い、ついには軍官僚の作文と化した。当初こそ軍部を支持した国民も、やがて疑念を抱きはじめ、戦争末期にはほとんど発表の内容を信じなくなった。今日に至る「あてにならない当局の発表」としての大本営発表は、戦時下にすでに成立していたのである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。