民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「金色夜叉」 尾崎紅葉

2013年04月03日 00時19分22秒 | 名文(規範)
 「金色夜叉」 尾崎紅葉

 婚約者のお宮に裏切られた間貫一が高利貸しとなって復讐をはかる物語。
金銭と愛情の葛藤という主題により人気を博した。

 「ああ、宮(みい)さん、こうして二人が一緒にいるのも今夜限(ぎ)りだ。
お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜限(ぎ)り、僕がお前に物を言うのも今夜限(ぎ)りだよ。
一月の十七日、宮(みい)さん、よく覚えてお置き。
来年の今月今夜は、貫一はどこでこの月を見るのだだか!
再来年の今月今夜・・・・・
十年後(のち)の今月今夜・・・・・
一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ!
いいか、宮(みい)さん、一月の十七日だ。
来年の今月今夜になったらば、僕の涙で必ず月は曇(くも)らしてみせるから、
月が・・・・・月が・・・・・月が・・・・・曇ったらば、
宮(みい)さん、貫一は、どこかで、お前を恨んで、今夜のように泣いていると思ってくれ」