お母さんの病いは日に日に重くなりました。ムクは山菜を朝から採ったり、裏山にある木になる実を摘みお母さんの為に食べ物を作ってあげました。不思議なことに、最低限の食べ物だけは冬の日も見つける事ができました。
そして、雨の日も雪の日もムクは欠かさず1人で毎日同じ祠にいきました。
ある日のこと、祠の前でムクがいつものとおり「あ い あ う 」と頭を地面につけて唱えていると、狐がぴょんと祠の中から出てきました。
「毎日ありがとう」
そういうと狐は消えていきました。
ムクはびっくりして、ポカンとしました。「あ い あ う」としか言葉がでないので、「あ い あ う」とだけ言いました。
また、毎日同じように祠にいきました。
暫くたったある日「あ い あ う」と唱えると祠の近くの湧き水から、綺麗な七色のそれはそれは大きな龍があらわれていいました。
「雨の日も毎日、ありがとう」
ムクはびっくりして、尻もちをつきました。

「あっ い っ あ っ う」
すると次にびゅーんと風がふきました。それは強い風で、ムクは、祠の近くの大きな岩まで吹き飛ばされました。
すると、
「わっはっはっはっ」
と声が聞こえてきました。
祠の脇にある岩の中から、真っ赤な顔をした鼻の大きくて背の高い天狗が飛び出してきました。

ムクはびっくりしましたが、
「あ い あ う」
しか言葉がでません。
天狗は、いいました。
「おまえの母親につげるのだぞ。息子をして天狗になるでは無いぞ。そして、祠の前で、もっとくれ、もっとくれはないぞ。
お前は毎日、毎日、優しさを
あーりぃ がぁーとうー 」
そう言って、天狗はうちわを扇ぎながら風の中に消えていきました。ムクは気づいたらその風に吹かれて家の前に吹き飛ばされていました。
急いで家に入り、ムクは母に今まであった話を告げました。驚く事にムクはすらすらと言葉が出るようになっていました。
ムクの話を聞いた母は、その後少しずつ身体が良くなりました。あれしてください、これしてくださいともっと欲しいとお願いばかりした事、ムクの命が助かったことへの感謝を忘れてしまったことを恥入りました。
生きとし生けるもの全ての愛に心を合わす純粋な無垢のあいあうは、感謝と優しさのありがとうであり、この心が本当に大切だとわかりました。
命の根源の神様を思い、目をつぶって心を鎮め、「ありがとう」というまほうの言葉と感謝の気持ちをお母さんもムクもその後命ある限り心に持ち続けました。
おわり
長々と創作童話を読んでいただきまして
あいあう♡(*^^*)♡
【サムネイル画像は天狗フリー素材より】