イカ焼き

　ギターリストのリオネルの誕生会に招待されていました。彼はバーベキューをすると言ったので、何を持って行くのがおもしろいか、スーパー内を見て回り、イカを見つけ“イカ焼き”をすることに決めました。
　家に戻って、イカの下ごしらえをしました。透明な骨、正確には“甲”と言うらしいですが、を取り除くのはもちろん、食べやすくなるように皮を剥いで、硬いカラストンビを取って、外国の人には目も取り除いたほうが良いかと思い取りました。切込みを入れて完成。ショウガのみじん切りとしょうゆを持って出掛けました。
　初めて行く彼の家、湖のほとりの静かなところです。玄関を入ると、そこは吹き抜けになっていて、小さめなグランドピアノが置いてありました。深い木の色で統一された家具と調和していてとても素敵でした。
　少し遅めに着いたので、すでにたくさんの人が集まっていました。飲み物を片手に、みな楽しそうに話していました。
　湖に面している庭を覗いてみました。煙は上がっていません。そういえば、何か食べている人もいません。
「リオネル、ハッピーバースデイ！ところで、バーベキューは？」
「ああ、レストランを予約したからやめたんだよ。」
「…。」

　まあ、この家に“イカ焼き”は不相応のような気もしましたし、いいことにしましょう。