コンビニエンスストア大手のセブンイレブンが一部の店舗(フランチャイズ店でなく直営店10店)で営業時間を午前7時から午後11時までとする脱「24時間」を試験的に実行する。売り上げや商品搬入への影響を調べるという。(朝日新聞2019-3-2)
先ごろ東大阪市のフランチャイズ店の店主が人手不足で24時間営業を維持できないとして営業時間を短くしたところ、本部から契約解除と1700万円の違約金を求められた矢先のことだ。店主らで構成される「コンビニ加盟店ユニオン」が24時間営業の見直しに向けて交渉を求めたが、拒否されている。
「24時間営業」は、売り上げの少ない深夜にも人件費がかかり、人手が確保できなければ店主が身をけずって終夜店番をするなど、店主にとってあまりに負担が大きい。深夜に売り上げがなくても店主がそうした重い負担を強いられる一方、売り上げがあれば一定歩合が本部の懐に転がり込む。資本主義原理からすれば、本部にとって24時間営業をやめる理由はない。だが、一方的に店主に負担を負わせて売り上げだけは吸い上げるという、客のない深夜営業により本部が一方的に得をするフランチャイズ契約は問題だと言わざるを得ない。(こういう一方的な内容は、たとえ契約していても無効になるのではないだろうか?)深夜にも売り上げが多い一部地域を除いて、脱24時間営業を本気で考えるべきだ。
他のコンビニチェーンでは営業時間短縮の動きもあるという。ローソンは約40店で、オーナーの意向で24時間営業をやめたという(同39面)。セブンイレブンの今回の実験には、歓迎の声のほか、少数の直営店だけでの施行であることから、お手盛りの調査結果で24時間営業継続の口実にされるのではないかとの懸念も出ている。「24時間営業はコンビニのビジネスモデルの根幹」(ファミリーマート広報)という声もあるが、業界は24時間営業の緩和に向けて真剣に検討してほしい。
人手不足は今の日本にとって深刻な問題だ。あの安倍首相でさえ、口ではどう取り繕おうと、事実上の移民解禁に向けて動き出している。店によって24時間営業でないところが出てくれば、一時的に混乱が生じたり苦情が出たりすることもあると思うが、そこは消費者側も受け入れるべきだ。また商品搬入は深夜のうちにやってくれると住宅街などでは助かるが、これも日中に移せば輸送に関わる人たちにも歓迎されるのではないだろうか?
24時間営業のコンビニは、たしかに深夜にちょっと用事ができたときなど便利このうえない。だが、今やさまざまな手続きができて社会インフラになったコンビニというシステムを維持するためには、客に対する過剰なサービスは見直すべきだ。さまざまな側面をよく検討してほしい。
関連リンク:
「(社説)コンビニ24時間 変化を直視し改革を」(朝日新聞2019-3-3)
関連記事:
「コンビニ店主の過重労働問題:大企業と契約する零細事業者の保護は必要だ」
追記0:コンビニの24時間営業についての談話を読んだ(朝日新聞2019-4-10)。
社会デザイン研究者の三浦展氏も、労働者の生活を考えると「長くて『朝5時-深夜1時』で十分でしょう」と指摘する。
コンビニ研究家の田矢信二氏も、24時間営業の原則には理解を示しつつ、「本部は加盟店ともっと対話し、営業時間を含めて個別に対応すべきでしょう」としている。氏はさらに、深夜の売り上げは多くないのだが、24時間営業のおかげで商品配送車が効率よく店舗を回ることができ、朝に備えて品出しを万全に終えられるなど、売り上げ以上のメリットがあることを指摘している。
たしかに配送の効率は私も気になっていたが、上記では商品搬入は日中にできるのではないかと書いてしまった。弁当など消費期限が近いものはやはり朝の通勤時間帯の前に(も)搬入をするのが理想的だろう。一部店舗で脱「24時間」の実験はしているというから、そのあたりの検証結果を知りたい。
追記:政府が静観の姿勢から一転、コンビニ大手に問題解決に向けた行動計画づくりを求めることにした(朝日新聞2019-3-27)。記事によれば、コンビニ本部も全く無策であったわけではないようだ。ある大手は「省人化や人手不足の店へのスタッフの派遣など、できることはやっている」という。省人化は当然だが、スタッフの派遣までしてくれているとは思わなかった。ただ、報道を見ていると店主が身を削って終夜店番をしているという例は多そうで、「できること」はやっていても、それで十分でないのはあきらかだ。もちろん、全国のコンビニの人手不足を本部派遣スタッフで賄うことは不可能だ。やはり「24時間営業の短縮」が最も妥当な落としどころではないか。
先ごろ東大阪市のフランチャイズ店の店主が人手不足で24時間営業を維持できないとして営業時間を短くしたところ、本部から契約解除と1700万円の違約金を求められた矢先のことだ。店主らで構成される「コンビニ加盟店ユニオン」が24時間営業の見直しに向けて交渉を求めたが、拒否されている。
「24時間営業」は、売り上げの少ない深夜にも人件費がかかり、人手が確保できなければ店主が身をけずって終夜店番をするなど、店主にとってあまりに負担が大きい。深夜に売り上げがなくても店主がそうした重い負担を強いられる一方、売り上げがあれば一定歩合が本部の懐に転がり込む。資本主義原理からすれば、本部にとって24時間営業をやめる理由はない。だが、一方的に店主に負担を負わせて売り上げだけは吸い上げるという、客のない深夜営業により本部が一方的に得をするフランチャイズ契約は問題だと言わざるを得ない。(こういう一方的な内容は、たとえ契約していても無効になるのではないだろうか?)深夜にも売り上げが多い一部地域を除いて、脱24時間営業を本気で考えるべきだ。
他のコンビニチェーンでは営業時間短縮の動きもあるという。ローソンは約40店で、オーナーの意向で24時間営業をやめたという(同39面)。セブンイレブンの今回の実験には、歓迎の声のほか、少数の直営店だけでの施行であることから、お手盛りの調査結果で24時間営業継続の口実にされるのではないかとの懸念も出ている。「24時間営業はコンビニのビジネスモデルの根幹」(ファミリーマート広報)という声もあるが、業界は24時間営業の緩和に向けて真剣に検討してほしい。
人手不足は今の日本にとって深刻な問題だ。あの安倍首相でさえ、口ではどう取り繕おうと、事実上の移民解禁に向けて動き出している。店によって24時間営業でないところが出てくれば、一時的に混乱が生じたり苦情が出たりすることもあると思うが、そこは消費者側も受け入れるべきだ。また商品搬入は深夜のうちにやってくれると住宅街などでは助かるが、これも日中に移せば輸送に関わる人たちにも歓迎されるのではないだろうか?
24時間営業のコンビニは、たしかに深夜にちょっと用事ができたときなど便利このうえない。だが、今やさまざまな手続きができて社会インフラになったコンビニというシステムを維持するためには、客に対する過剰なサービスは見直すべきだ。さまざまな側面をよく検討してほしい。
関連リンク:
「(社説)コンビニ24時間 変化を直視し改革を」(朝日新聞2019-3-3)
関連記事:
「コンビニ店主の過重労働問題:大企業と契約する零細事業者の保護は必要だ」
追記0:コンビニの24時間営業についての談話を読んだ(朝日新聞2019-4-10)。
社会デザイン研究者の三浦展氏も、労働者の生活を考えると「長くて『朝5時-深夜1時』で十分でしょう」と指摘する。
コンビニ研究家の田矢信二氏も、24時間営業の原則には理解を示しつつ、「本部は加盟店ともっと対話し、営業時間を含めて個別に対応すべきでしょう」としている。氏はさらに、深夜の売り上げは多くないのだが、24時間営業のおかげで商品配送車が効率よく店舗を回ることができ、朝に備えて品出しを万全に終えられるなど、売り上げ以上のメリットがあることを指摘している。
たしかに配送の効率は私も気になっていたが、上記では商品搬入は日中にできるのではないかと書いてしまった。弁当など消費期限が近いものはやはり朝の通勤時間帯の前に(も)搬入をするのが理想的だろう。一部店舗で脱「24時間」の実験はしているというから、そのあたりの検証結果を知りたい。
追記:政府が静観の姿勢から一転、コンビニ大手に問題解決に向けた行動計画づくりを求めることにした(朝日新聞2019-3-27)。記事によれば、コンビニ本部も全く無策であったわけではないようだ。ある大手は「省人化や人手不足の店へのスタッフの派遣など、できることはやっている」という。省人化は当然だが、スタッフの派遣までしてくれているとは思わなかった。ただ、報道を見ていると店主が身を削って終夜店番をしているという例は多そうで、「できること」はやっていても、それで十分でないのはあきらかだ。もちろん、全国のコンビニの人手不足を本部派遣スタッフで賄うことは不可能だ。やはり「24時間営業の短縮」が最も妥当な落としどころではないか。