リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

PTA:任意加入を徹底したら加入率が下がって解散して……―兵庫県川西市の場合―

2025-01-13 | 一般
「PTAは任意加入」ということが知られるようになってはきたが、それでもデフォルトは加入になっていることが多いのではないだろうか。だが兵庫県川西市では、2020年4月から「入会届」を出すよう周知しはじめたところ、翌年には加入率は6~7割に低下し、新入生の保護者の新規加入がほぼなかった例さえあったという(朝日新聞2025-1-13)。予想はされていたことだろうが、当然それまでの仕事を回していくのは大変になる。「活動には協力できませんが、PTA会費は支払います」という選択肢を新設して加入率の低下にある程度歯止めをかけたものの、人繰りの問題解決にはならない。委員会活動を廃止したり、登下校見守りなどの当番制をやめて自発的な参加制にするなどして負担軽減に努めたという。だが前年と同じことを続けていくことが自己目的化しているようなPTAのあり方に疑問が生じ、2023年春、市内の4校(東谷中学校とその校区内の3小学校)がほぼ同時にPTAを解散したという。
きっかけになったのは、上部組織「P連」(川西市PTA連合会)の役員負担だ。P連の役員は各校のPTAが持ち回りで担当しているのだが、次年度にそれが回ってくる牧の台小では自校のPTA役員さえ担い手がおらず、会長は2年連続で担当していた。限界を感じ、同じ思いだった小学校の会長らとも話し合って、4校がほぼ同時にPTAを解散したのだという。

PTAに代わって、4校の全保護者と全教職員が「参加資格」をもつ新しい保護者グループ「ココスクール(Connecting Community and School)」が誕生した。会費も会員もないというが、実際に組織を動かしていくには何らかの役員は必要なのだと思う。そのあたりがどうなっているのか、今後の連載に期待したい。

追記:PTAを解散して、「会費ゼロ・役員なし」で始めた「ココスク」。だが現実問題として、誰かが取りまとめ役にならないことには何もできないはず。そのあたりをどうするのだろうと思って連載の続きを待っていたら、案の定、スタッフは固定化してきているという(朝日新聞2025-1-15)。強制にならないよう気をつけながら、地道に親たちに声掛けをしているという。はたしてこれで持続可能なのか。毎年の続報を期待したい。

だが負担軽減という意味ではPTAのままでも参考になることはある。「夏祭り」は好評だったが、スタッフの負担が重かったことから翌年は「水遊び」にしたそうだ。
一方、疑問に思ったのは登校班の扱い(朝日新聞2025-1-14)。登校班を学校が編成するのでは地域に詳しくないため遠回りになる児童が出たりして不都合があった。また、全学年の「見守り当番表」を作るのがPTAの役員総出の膨大な作業だったという。改革として、保護者どうしで班を編成できるようにLINEのオープンチャットを作ったのだそうだ。記事は「PTAの役員だけで担っていた業務を、すべての保護者が関われる仕事に変えた」と評価するが、私は疑問をぬぐえない(自分がオープンチャットの仕組みをわかっていないだけかもしれないことをお断りしておく)。「保護者どうしで」となると、保護者間の輪にはいっていけないような親が仲間外れになったりしないのだろうか。外国籍の家庭にもちゃんと対応できているのだろうか。学校が班を決めることで近くに住む人たちがゆるくつながる、というのも登校班のメリットであったのではないか。そもそもこの仕組みで「見守り当番表」がうまくできるのかどうかも私にはよくわからない。

連載の最終回(朝日新聞2025-1-16)は他の事例。東京の嶺町小学校ではPTAを廃止し、A(Association)をO(Organization)に変えたPTOがあるそうだ。委員や係の義務はなく、できる人が手伝うボランティア制にした。人が足りない場合は内容を変えたり規模を縮小したりして対応しているという。これまでもたまに聞く話だが、やはりボランティアを募集したりする役員は必要なはずで、これで回していけるのかどうか心配だ。
おそらくだが、家庭の事情も考慮せずに全保護者に負担させようとすると、無理を強いられる人が一定数出る。たとえば学年200人から数人の役員を選ぶだけでいい、ということなら、引き受け手がありうるのかもしれない。

もう一つはやはり東京の山崎小学校のPTA。業務の必要性を精査し、8つあった委員会を5つに、来年度には2つにまで削減するという。また、情報共有や連絡はLINEを使って負担を軽減する(デジタルは苦手な人は…という問題は常にあるが、このくらいは今の時代、大丈夫だろう)。運動会の警備は一部を警備会社に委託したという(警備員一人約3時間で2万円)。ほかにも、IT企業などに依頼したほうが効率的にできる業務もあるという。

PTAのまま改革するか、別組織に移行するか。どちらの選択肢にしても、「前年やったから…」というのをやめて業務を削減すること、強制はやめてボランティアや外部委託を検討すること、あたりがポイントだろう。そのほか、私がこれまで読んだところでは上部組織から降りてくる業務が面倒らしい。最近たまに聞く、上部組織からの脱退も選択肢として考えられる。近視眼的に「メリット」ばかりを問うのはどうかと思うが、各校のPTAが上部組織とつながっている意義が現状ではあまりに不明確なのではないだろうか。


関連記事:
「PTA全国協議会から退会の動きに、PTA上部組織の意義を考え直すべきでは」
その他多数(検索機能をご利用ください)

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 迷惑メールを通報すると逆効果? | トップ | SNSで世論を盛り上げるのは悪... »
最新の画像もっと見る

一般」カテゴリの最新記事