部活動その他で教員の激務が問題になっている.そういう話になると「民間企業ではもっときつい仕事をしている人が大勢いる」と言う人が必ず出てくる.先日も「身分の安定した高給」であるだけ甘い,少子化で「お客様が減ったけど給料も人も減らすな,なんて民間企業で言ったらクビか左遷」だという60代女性の声が紹介されていた(朝日新聞2018-6-10).
私は教員が高給かどうかは知らない(私は逆だと思っていたが,データを知っているわけではない.もし仮に非正規の人たちの賃金と比べれば高給という意味なら,それは比較の対象が間違っている).民間企業でも,売り上げが減ったからと言って賃下げや首切りはよほどの事情がない限り許されないはず.「クビか左遷」は不当労働行為になる.そしてそもそも,「民間企業で重労働の人がいるのだから教員の労働環境改善は許されない」という,労働者の「足の引っ張り合い」論理はよくないと思う.
「先生は長期休暇があるじゃないか」という点については,先日,「子供の夏休みも先生は「勤務日」!」で書いた.
前置きが長くなったが,データ上はどうやら,「教員の激務」は民間企業と比べてもきびしいようだ.上記朝日記事は文部科学省が2017年4月に発表した教員勤務実態調査のデータを紹介している.公立小中学校の教員は平均で1日11時間以上働き,小学校で3割,中学校で6割の教員が「過労死ライン」とされる「残業が月80時間」を超えるという.連合のシンクタンクによる2015年の調査では,週に60時間以上働く中学教員86.9%は,建設業や製造業など他業種と比べ約2~26倍高いという.
こういう統計の数字はえてして自説に都合のいい部分だけを引用しがちなので,「民間企業のほうが大変」と主張する人たちのデータと突き合わせてみないと本当のところは判断できない.民間企業では残業を申告させないなどして,数字に現われない残業もあると聞く(教員でもそうかも).
だが少なくとも上記の数字からは,教員の激務は民間企業以上のような気がする.
追記:残業したのに申告させない事例が教員でもあるかもと書いたが、私の理解はいろいろな面で不十分だった。
そもそも教員は時間外勤務をしないという建前になっていて、代わりに全員一律に給料に4パーセントが「教職調整額」として上乗せされているというから、普通には教員が残業時間を申告するということはない。この「みなし残業」手当ての対象となる時間外勤務は本来は校外実習、修学旅行、職員会議、非常災害の対応なのだが、実際にはそれ以外の日常業務に多くの時間を割いている教員が多い。規定の「その他やむを得ない場合に必要な業務」の部分が肥大化しているということなのだろう。(参考:トウマコの教育ブログ)
ただ、判例によれば、4パーセントの教職調整額以外にも残業代が支払われる余地はあるという。ただし、それは、特定の教員が具体的に文書で時間外業務を命じれた場合に限られそうだし、申請のハードルは高そうだ。(参考:家庭科の実習生のお話。by trainee4)
教員は「子供のため」と思って頑張るので過重労働になりがちだ。保護者たちもそのことはよく理解しておくべきだろう。
私は教員が高給かどうかは知らない(私は逆だと思っていたが,データを知っているわけではない.もし仮に非正規の人たちの賃金と比べれば高給という意味なら,それは比較の対象が間違っている).民間企業でも,売り上げが減ったからと言って賃下げや首切りはよほどの事情がない限り許されないはず.「クビか左遷」は不当労働行為になる.そしてそもそも,「民間企業で重労働の人がいるのだから教員の労働環境改善は許されない」という,労働者の「足の引っ張り合い」論理はよくないと思う.
「先生は長期休暇があるじゃないか」という点については,先日,「子供の夏休みも先生は「勤務日」!」で書いた.
前置きが長くなったが,データ上はどうやら,「教員の激務」は民間企業と比べてもきびしいようだ.上記朝日記事は文部科学省が2017年4月に発表した教員勤務実態調査のデータを紹介している.公立小中学校の教員は平均で1日11時間以上働き,小学校で3割,中学校で6割の教員が「過労死ライン」とされる「残業が月80時間」を超えるという.連合のシンクタンクによる2015年の調査では,週に60時間以上働く中学教員86.9%は,建設業や製造業など他業種と比べ約2~26倍高いという.
こういう統計の数字はえてして自説に都合のいい部分だけを引用しがちなので,「民間企業のほうが大変」と主張する人たちのデータと突き合わせてみないと本当のところは判断できない.民間企業では残業を申告させないなどして,数字に現われない残業もあると聞く(教員でもそうかも).
だが少なくとも上記の数字からは,教員の激務は民間企業以上のような気がする.
追記:残業したのに申告させない事例が教員でもあるかもと書いたが、私の理解はいろいろな面で不十分だった。
そもそも教員は時間外勤務をしないという建前になっていて、代わりに全員一律に給料に4パーセントが「教職調整額」として上乗せされているというから、普通には教員が残業時間を申告するということはない。この「みなし残業」手当ての対象となる時間外勤務は本来は校外実習、修学旅行、職員会議、非常災害の対応なのだが、実際にはそれ以外の日常業務に多くの時間を割いている教員が多い。規定の「その他やむを得ない場合に必要な業務」の部分が肥大化しているということなのだろう。(参考:トウマコの教育ブログ)
ただ、判例によれば、4パーセントの教職調整額以外にも残業代が支払われる余地はあるという。ただし、それは、特定の教員が具体的に文書で時間外業務を命じれた場合に限られそうだし、申請のハードルは高そうだ。(参考:家庭科の実習生のお話。by trainee4)
教員は「子供のため」と思って頑張るので過重労働になりがちだ。保護者たちもそのことはよく理解しておくべきだろう。