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3.イギリス 「こぢんまりした田園風景」

2021-05-15 19:19:01 | 伝統国家イギリス
 「こぢんまりした田園風景」 一部引用編集簡略版

  イギリスはスコットランドの高原地帯を除けば、高い山や険しい丘陵がない。野原はほとんどが牧場だ。だから、イギリスの本島のグレートブリテン島は面積では日本の本州とほぼ等しいのに、日本より広々としているように見える。
  イギリスの自然の景色はどこへいっても、小じんまりしていて親しみがもてる。イギリスの自然は隅々まで何世紀にもわたって、絶え間なく人手が加えられている。多分に人工的だ。人々が一千年以上も、そうしてきたことが伝わってくる。イギリスは実物大の箱庭のような国なのだ。
  田舎道を抜けていくと、両脇にどこまでも生け垣が続いている。ヘッジロウと呼ばれているが、イギリスを象徴するものの一つだ。あるいは、イギリスをもっとも連想させるものだといわれる。
  ヘッジロウは牧草地や畑などの境界を示すもので、古いものになると十世紀まで一千年近くも遡る。

  イギリス人の愛国心をなによりも駆り立てるものといったら、この田園的な国土である。王室よりもなによりも、イギリス人の心情に強く訴える。
  イギリスの都市には、いまでもブルック・ストリート(小川通り)、ファーム(農園)、ヘイ(干し草)、ドゥローバー(羊追い)、メドウ(牧草地)、ウッドサイド(森の道)といったなつかしい言葉がついた通りの名や、地名が多い。かって農村だったころの名残りである。日本は地方自治体がアメリカの真似をして、なんでも効率をよくして過去を捨てればよいということから、歴史に根付いた町名を廃止したところが多いが、愚かしいことだ。

  世界のなかでイギリスほど車を運転しやすい国はないだろう。ここにも、国民性が現われている。イギリス人の九十九パーセント以上は、マナーが正しい。粗暴な運転をする者はまずいない。だから、いったん地方へ出ると、信号が驚くほど少ない。一時間以上も村や町を通り抜けて走っても、信号が二つか、三つしかないことが珍しくない。

  道路が交差するところになると、信号のかわりに「ラウンドアバウト」と呼ばれるロータリーがある。先に入った車を優先するが、譲り合い精神を分かち合っているから、楽だ。運転してみると、イギリス人がヨーロッパ大陸の人々よりも公徳心をもち、自制心が強いことが印象づけられる。
  ロンドンであっても、警笛を鳴らす者がほとんどいない。イギリス人の忍耐強いところが、こんなところにも現れている。

参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
 加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長

2.イギリス 「偽善が社会に落ち着きを」

2021-05-15 11:24:08 | 伝統国家イギリス
 「偽善が社会に落ち着きを」 一部引用編集簡略版

  加藤氏はアメリカのホテルに泊まると、落ち着きがないので休まらない。イギリスの格式のあるホテルでは、従業員の躾がすばらしい。
  廊下ですれ違っても、目を合わせることがない。ルームサービスを頼んでも、ほとんどわからないように入ってきて、飲み物や料理をセットすると、にわかに出ていく。このあいだに必要最小限の会話しかない。小気味良いほどだ。
  ほんとうのサービスは、サービスをしていることを客にまったく感じさせないものだ。与えられた役割だけを適確に演じることだ。イギリスのホテルやクラブの従業員は、見事なまでにその役に徹している。
  従業員のこのような振る舞いは、代々にわたって召し使いを使ってきた貴族社会の伝統が培ったものだ。それに、ホテルの従業員までがうやうやしい態度をとるのは、イギリスに王室があるからだろう。アメリカはもちろん、ヨーロッパの共和制の国では見られないことだ。
  王室があると人々はより偽善的になる。しかし、人々が野放図で野卑であるよりも、偽善的であるほうがはるかによい。偽善は善を模倣するのだから、悪いものであるはずがない。偽善は社会に落ち着きを与えてくれる。
  日本人はまだ日常の生活の中で形を重んじて礼儀正しいし、敬語が使われているから救われる。言葉は人の生き方を決める、もっとも強い力をもった鋳型である。日本社会における敬語は、イギリス人にとっての英語の抑揚や言い回しに当るものなのだろう。
  イギリスは人にたとえてみれば、先祖から美しい広壮な家を受け継いですんでいるようなものだ。その家を深く愛しているのに、どうしたらその家を現代の生活に適応させることができるのか、とまどっている人に似ている。これはなんとも難しいことだ。古い家は屋根や床下、壁を絶え間なく補修しなければならない。

参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
 加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長