3-3.元良親王 女性遍歴 修理の君の拒絶
馬場あき子氏著作「日本の恋の歌」~貴公子たちの恋~ からの抜粋簡略改変版
色好みの源流:元良親王 一夜めぐりの源流
次々と魅力あるものに移ってしまう。女にとっては身分も高いし気もゆるせない存在だが、親王の心をひく女は必ずしも容姿の美だけではない。
「心たかし」という自恃(じじ:自分自身をたのみとすること。自負)の気位が求められていたことも見逃してはならない。たとえば修理の君はすばらしいという噂に、ぜひお会いしたいと消息を届けたが、これは会う前にあっさり断られてしまった。
高くとも何にかはせむ呉竹のひとよふたよのあだのふしをば
(丈高い呉竹のように、高貴なお方ではありましょうがいかがなものでしょう。ただ一夜(一節:ひとよ)二夜の徒(あだ)な臥(ふし:節)寝にすぎませんものを)
なかなか手痛い断りの歌だが、修理にはすでに右馬頭(うまのかみ)という交際相手が居たのだった。「大和物語」の八十九話には数回にわたる才気の贈答が残されていて、そのよろしき仲をしのばせてくれる。男の後朝の歌に返歌して、こんな歌を詠むほどの親愛な仲だったのだ。
かきほなる君が朝顔みてしかなかへりてのちはものや思ふと
(朝帰りしてお寛ぎの朝のお顔がみたいものです。お帰りののち本当に物思いなどなさっているのかしらと)
すっかり打ち解け合っている仲に、元良親王は身分ある立場をいいことに気楽に物言いそめた失敗である。
つづく