勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

上質のラブコメが好き

2006-01-23 | 映画のお喋り
心が疲れた時は、難しい映画なんか見たくない。
痛快なアクション映画も、下手をすると疲労が増すばかり。
そういう時は笑いたいけど、ただのコメディではなくラブコメが見たくなる。
ただ当たりに出会う確立はそう高くないのが難点だ。

今回借りてきたのは《50回目のファーストキス》
なんのこっちゃと言う題名だが、映画をしばらく見ていれば、すぐに謎は解ける。
これが私の中では大当たりとなった。
後味がとっても爽やかで、早速上質のラブコメにランクインさせた。

  《50回目のファーストキス》2004年 アメリカ
    監督:ピーター・シーガル
    主演:アダム・サンドラー、ドリュー・バリモア

つい最近見たばかりのコメディ《NY式ハッピーセラピー》の監督と主演の再共演。
ゴーストバスターズのダン・エクロイド、ロードオブザリングのショーン・アスティンらが適材適所に使われている。
ロード…で太めのホビット・サムを演じたアスティンが、ボディビルおたくと言うのが適材かは知らないが、微妙に面白い。

ストーリーは全編ハワイで進行する。(それだけでもちょっと楽しい)
水族館で獣医をしているヘンリーは、ハワイにバカンスにやってくる女性たちを次々にモノにして楽しむのが趣味。
女性のほうも、現世を離れた楽園でいい思い出が作りたいだけだから、もちろん修羅場なんか経験したこともない。
つまりヘンリーはプレイボーイぶってるが、実は恋愛に臆病なだけの男性なのだ。

そのヘンリーがある朝レストランで見かけた女性にときめいてしまう。
彼の信条は地元の女と関係を持たない。(長続きしたくないから)
だが翌日、とうとう彼女に声を掛けてしまい、すぐさま意気投合。
彼女から明日もここでと誘われて、ヘンリーの恋は走り出す。
ところが、翌日の彼女はまるで別人。
彼のことを知りもしなければ、昨日の話をしたとたん変態扱い。
まったくわけのわからないヘンリーに、レストランのオーナーおばさんが・・・。
(以後ネタバレ注意!)

「ルーシーは昨日のことを覚えていられないんだ。すっかり忘れてしまうのさ」

そう、ルーシーは去年の10月に事故に遭い、脳にひどい損傷を受けた。
その事故までの記憶は元通りなのだが、その日以後の記憶は翌朝には消えてる。
短期の記憶は睡眠中に長期の記憶に変換されるんだが、事故の為その機能が働くなくなってしまったらしい。
(この障害が実際あるのかは知らないが)
こうしてルーシーは、事故の日の朝、10月の日曜日、父親の誕生日を毎日繰り返しながら生きている。

家族も回りの人間も、ルーシーの状態に合わせながら付き合っている。
もちろんバレることもあるが、その都度寝れば忘れてしまう。
その話を聞いて、ヘンリーはビビるどころか闘志を燃やしてしまうのだ。
長続きすることを恐れるヘンリーとしては、毎日新しい出会いを繰り返すルーシーは、ある意味理想の女性だったのかもしれない。
父親と弟に二度とレストランに行くなと言われると、帰り道で待ち伏せをする。
手を変え品を変え、ヘンリーは毎日ルーシーと出会い、そして彼女に恋をさせるのだ。

記憶は消えるかもしれない。
だが相手の顔も名前も覚えてなかったとしても、恋をしたという気持ちだけは、何か身体の奥底だか神経だかに染み込んでいるはずだ。
私はそう思った。
ルーシーは毎朝新しく恋をしているのではなく、恋をしたことがある男性と新しく出会っていたような気がする。

毎日日記をつけるという習慣(私が真っ先に思いついた手段だけど)のお陰で、ルーシーは朝起きるたびに日記を読み、見たこともない恋人に会うのを楽しみに出かけて行く。
だがある日、彼女の為に十年来の夢を諦めると父親に話しているヘンリーの言葉を聞いて、ルーシーは思い知るのだ。
回復不可能な記憶障害を抱えている自分は、ヘンリーの重荷でしかないと。

この辺を変に泣かせようとしてない作り方に好感が持てる。
これでもかと泣く方向に持っていく、どこかの国のドラマよりずっといい。
ルーシーはヘンリーを完全抹消することに決める。
日記から、彼に関する記述をすべて破り捨て、燃やしてしまうのだ。

ネタバレ覚悟でここまで書いてきたが、やはり結末だけは控えよう。
人を愛するということは、日々の積み重ねだと思っていた。
昨日の記憶を反芻し、逢えない間も愛を育てていくものだと。
だが愛は出合った瞬間に始まるのだから、毎日が新しい出会いだとしても、それだけで愛は継続していくものなのかもしれない。

毎日ファーストキスのときめきを感じられるルーシー。
それだって幸せのひとつの形だ。
Comments (2)
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