雨の日も風の日も ららる~♪

気ままな毎日を綴ります。

燕は戻ってこない

2024-05-27 | 

「燕は戻ってこない」桐野夏生の長編小説を一気読みした。この物語はNHK火曜ドラマで放送中。バレーダンサーの基(稲垣吾郎)と悠子(内田有紀)夫婦には子供がいない。一度は子供をあきらめたものの、優秀なダンサーの遺伝子を残したい…。日本では禁止されている「代理母」に子どもを産んでもらいたい。一人暮らしの派遣社員29歳のリキ(石橋静河)。憧れて東京へ出てきたものの夢も無い苦しいその日暮らし。お金が欲しい。ビジネスと割り切って代理母に応募する…そんな話だ。
タイミングよく原作を図書室で見つけたので迷わず借りた。物語の先が知りたくて一晩で読んだ。謝礼が1千万。仲介業者に1千万。2千万ものお金で命が売買される。子どものいない夫婦の人助けと言う名目のもとに。依頼主基のエゴ。蚊帳の外の悠子。お金は欲しいがビジネスでは割り切れない複雑なリキの心。都会の貧困、夫婦、命の売買、多くの問題を絡めながら、3人の心が揺れ動く。リキが命を宿すことによって変わっていく。肝心の子どもの人権はどう考えるのだろう。第3者である、春画を描く悠子の友人りり子とリキの友人テルが案外まともなことを言っていたように思える。想定外のラスト。この後の3人、子どもとどんな人生を歩んでいくのだろうか。吉川英治文学賞・毎日芸術賞受賞作。桐野夏生は好きな作家のひとり。結末を知ったドラマも楽しみだ。

102歳、一人暮らし

2023-11-04 | 

哲代おばあちゃんの、心も体もさびない生き方。
広島に住む哲代さんは何と102歳。1920年生まれです。86歳でご主人を亡くされて以来ずっとお一人暮らし。日記が中国新聞に掲載されて大人気に。何しろ笑顔がいいのです。ご近所さんたちに助けられながらのお一人暮らしは御立派です。小さな畑に野菜を作るのが日課。じっとしていると淋しくなるのでずっと動いているそうです。毎日が規則正しい。~よく食べよく寝てよくしゃべる~やはり基本はこれなんですね。
哲代さんの私らしく生きるための5カ条
    1 自分を丸ごと好きになる
    2 自分のテンポを守る
    3 一人時間も大切
    4 口癖は「上等 上等」
    5 何気ないことをいとおしむ
そうなんですね。しっかりメモさせて頂きました。元小学校の教員だった哲代さんは「仲よしクラブ」を立ち上げました。みんなで集まっておしゃべり。哲代さんがオルガンを弾いて歌います。子供さんが居なかったので姪御さんやご近所さんが助けてくれるそうです。もう一度20歳になれと言われてもなりたくない。年相応に生きるのがいいそうです。人生の場数を踏み人間が丸くなったと。100歳になっても一人で生きていける。それは自分次第。大先輩のお話はありがたいですね。元気が出ました。
戦争の無い平和な世界に。どの国の子どもも安心して暮らせますように~哲代さんの願いです。




8050

2022-12-29 | 

林真理子著「8050」を読んだ。
「8050」とは、80代の親が50代の子供の生活を支える。高齢者の親と中年の引きこもり。中高生で引きこもりになった若者たちが40代から50代になり、親も高齢になり社会問題となっている。この本は区民図書で400人待ちでした。それだけ関心があるということなのでしょうね。地元小学校の市民図書に希望を出したら、今月購入してくれました。

林真理子氏がこの問題をどう描くのか、自分も高齢になり興味があった。読んでみて「8050」とは違っていました。「5020」でした。この差は大きい。
ここからネタバレです。中学生の時に引きこもりになった20歳の息子と50代の両親。歯科医の父親を中心に、いじめた同級生に息子の無念を晴らす「復讐」の裁判をする話だった。
母と20代の姉の4人家族。7年間引きこもりだった息子に寄り添おうと父親が裁判に奔走する。知らなかった息子のこと。娘のこと。妻のこと。夫婦の問題…。家族の本音や姿がシビアに描かれていく。ただ父親は歯科医で経済的に恵まれており、息子も進学校に行った頭のいい子。母は役員の秘書をしていて専業主婦。娘は早稲田を出て大企業に就職しているという設定だった。

少年問題を扱っている庶民派の弁護士が力になってくれたり、7年前のいじめの有力な証人になってくれる人が登場したりと、上手くいき過ぎな感もする。息子が更生されていく過程も意外な展開。もともと頭のいい子なのでということらしい。引きこもりの解決はそんなに簡単ではないと思う。もっと根深いものがあるのでは。自分たちが死んだらこの子はどうして生きていくのだろう。自分の老いとともに子供の将来への絶望感。何より肝心の高齢者の問題が描かれていなくてがっかりだった。タイトルに異議ありです。安っぽいドラマを見せられたたようだった。日大理事長ともあろうお方が、こんなあざといやり方あかんよね。

読書三昧

2022-07-27 | 
やっと時間が出来た。随分遠ざかっていた読書に帰って来た感じです。
区民図書と市民図書から10冊借りてきました。うれしい。
昔好きで読み漁っていたのが、浅田次郎氏。
長編の「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」「メロトロに乗って」…。病院の待ち時間や旅行には文庫本を必ずお共に。
作家デビューは遅く。きっと作家になれると奥様がずっと応援してくれたそうです。自衛隊出身。中国生まれなので中国に関心が高く、小説も沢山書いておられます。時代物やおちゃらけたものは苦手。好きなのは「霞町物語」の中の「夕暮れ隧道」涙した。

今読んでいるのは「母の待つ里」やはり上手い!!物語と言い文章と言いぐいぐいと引き込まれます。還暦を過ぎ、ふと立ち止まった人がふるさとを思う。父母を亡くし、高齢になった私の心にもじわりと沁み込んできます。
「身につまされる物語」中井貴一さん。「ふるさと喪失の深さに涙せずにはいられない」隈研吾さん。物語は書きません。よかったらお読みください。

中国生まれでは無かったようです。どこかで勘違い。そう思い込んでいました。失礼しました。



桜木紫乃さん

2021-11-30 | 

この人の本は、気になって一気に読んでしまう。
物語と文章、それと構成のうまさで引き込まれる。久々に夜更かししました。

「家族じまい」題名に惹かれて初めて読んだ。
終わる事と終えることは違う。それぞれの家族じまい。
「ホテルローヤル」は、直木賞受賞作。ラブホテルを利用する男女の話が7つ。
波瑠主演で映画化。中でも、妻に浮気をされている男性教諭と女子高生の話が切ない。
現実に桜木自身も父親がラブホテル経営。そこで働いていたそうです。
ここで見聞きしたいくつもの男女の姿。みんなそれぞれの人間模様がある。
「蛇行する月」教師に恋した女子高生と同級生たちのその後を描く。
図書部員の皆で先生への告白を提案した。そのことが彼女の人生を大きく変えてしまうことになる。何気ない若気の至りだった。消息の分からなくなった彼女の幸せとは。
「二人暮らし」夢を追いかける仕事のない夫と看護師の妻の物語。
夫の母、妻の両親、隣の老夫婦・・・それぞれの生き方から自分たちの道を見つける。

どの物語も北海道が舞台です。
私の住む神戸とは全く違った独自の風景と気質がある。
いつもの市民図書にあったのは4冊だけ。足を伸ばして区図書館で数冊借りてきました。
小説もさながら桜木志乃さんご本人にも興味がある。どんな人なんだろう。
毎晩の楽しみが出来た。