この前のため池のあるところ・・・ここは両親の生まれ育った故郷です。
子供の頃の夏休みはほとんどここで過ごした。
思い出すのは暑い暑い夏の日。
父の生まれた家まで、バス停からてくてく歩いて行った。
子供の足なので途方もなく遠く感じた。
ほんとうはどのくらいの距離だったのだろう・・・。
大きな池があって、池には鳥たちが沢山いた。
あれはカイツブリだよと父が教えてくれた。
カイツブリはくるんと回転して水の中のエサを取る。
頑丈で逞しい父が歩く。その横を一生懸命ついて歩いた。
田舎育ちの父にすれば、この道も何でもない日常の道だったのだろう。
休憩することもなく話をすることもなくひたすら歩いた。
父方に遊びに行くことは数えるほどであまり思い出が無い。
遊びに行ったのはほとんど母の方。
何の用で行ったのか、その後のことは覚えていない。
大きな岩のような父が誇らしかった。
ただ父と歩いたあの道を思い出す。
道路の真ん中を蛇が横切る。ほんものの蛇だ!!
干からびたヘビの死骸も見つけた。
田舎道を父と歩くのが嬉しくて仕方なかった。
頭上から容赦なく照り付ける太陽にセミの声。
こんもりした木々の中に小さな祠。
ここを過ぎるともうすぐだ・・・。
どこまでも広がる祖父の葡萄畑が見えてくる。ここに父の家があった。
父と歩いたあの夏の日。
カイツブリのいる大きな池の道。
あの日の私はいくつだったのだろう・・・。
あの道はどこだったのか、どんなに時間がかかったのか・・・。
父はあの夏の日を覚えていただろうか。