アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

爬虫類王国でトカゲに出会う

2008-09-13 | その他の国の旅
この写真の中に、トカゲがいる。

まるで回りに溶け込んでいて、撮った本人ですらよく眺めないと分からない。


場所はスリランカ南部、Sinharaja(シンハラジャ)国立公園。



ガイドの青年は時たま、急に腰をかがめて用心深く歩き、ふと後ろを振り返って言った。

「しぃーっ!静かに、ゆっくり歩いて来て!」

何を見つけたのか、息を殺して彼が指差す方向を見つめる。

「何?どこ??」
「あそこ!小枝の真ん中くらい!」


キツネにつままれているような気分で更に目を凝らして見ること2~3分。
そこには、微動だにせずじーっと上を向いたまま静止している緑色のトカゲがいた。






そもそもこの森は比較的最近になって価値が認められ、国立公園に指定されたらしい。

その「価値」のひとつが、爬虫類の種類の多さだという。



それにしても、森の中でトカゲを見つけるのは大変だ。
辺りが薄暗い上、緑色のものも茶色いものも回りの枝や幹の色に激しく同化している。動いてくれればまだ分かりやすいものの、彼らは本当に驚くほどピタッと静止して動かない。動かないまま、ひと所に2時間も3時間もステイしているらしい。

ちなみに私が見たあるトカゲの歩き方は、ピョンピョンと陽気に跳ね上がりながら素早く前進し、まさかこれがトカゲか?と疑いたくなるような全身運動で瞬く間に薮の中に消えていった。







こうやって ひっそりと森の中に生きている生き物に出くわしながら歩いていると、ここはまさに彼らの王国で、こちらが単なる訪問者なのだということを感じさせられる。

そもそも人間なんてほんの数百万年しかこの地球上に生きていないんだ。
それを彼らは、あのギョロッとした剥き出しの目で、じーっと私たちの動向を観察しているに違いない。
気づかれないように、回りの色に溶け込んで。


コンクリート社会に生まれ育った私には、動物たちの間に流れているそうした果てしない時間の流れが奇妙に思えた。それはまるで理科の教科書に書いてあった生物史の年表か何かが突然三次元世界となって現れたような感じで、今まで知識として分かっていたはずのことを、実は何も分かっちゃいなかったんだと思い知らされた証だった。


きっと「自然」というものの貴重さは、人間社会に生きる人の想像を超えて存在する。

そのことを、トカゲが教えてくれたんだ。




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