アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

今日も工場日和-3

2015-01-06 | 2015年たわごと

今年も始まりました。

今月はかなり連日行く予定です。

 

しかし。

午後から思いも寄らぬ事態になり、私のイライラ虫は大増殖・大氾濫を起こした。

同じチーム(工場ではラインと呼ぶ。複数人が同一線上に並んで流し作業をするから)のフィリピン人女子2人が、ペチャクチャペチャクチャとお喋りしながら作業をし始め、数十分で収まるかと思いきや何時間もずっと同じ調子で喋り続けたのだ。

 

そのうちの一人は、工場の社長の愛人業も兼務していることを私は知っていた。

その子は半社員のような立場で、以前別のラインで一緒になった時は、能面のような顔で私を含む派遣社員の指導に当たっていた。昔から彼女を知るブラジル人の友人によると、彼女はいつもそんな調子で気取っているという。

さすが愛人。この工場の裏番長みたいな存在なんだ、きっと。

 

その彼女が派遣社員のフィリピン人と、年相応な(恐らくどちらも20代半ばと思われる)はしゃぎ方をしているのに私は少し驚いた。そして、最初はそんな様子を微笑ましく思っていた。

 

フィリピンにいるフィリピン人の親友と、以前こんな会話をしたことがある。

友人「日本人経営の会社って、みんな黙々と仕事するのよね」

私「そりゃそうよ、仕事だもの」

友人「フィリピン人はすぐ喋る」

私「そうよね。なんで?」

友人「私たちからすれば、何も喋らないでひたすらパソコンに向かってしかめっ面してる日本人の方が奇妙なのよ」

私「そうなの?」

友人「仕事だって、楽しい方がいいじゃない」

私「そりゃそうだけど、集中できないじゃん」

友人「私たちには能力があるのよ。一度に二つのことをやる」

私「あぁ…つまり日本人は脳が単純ってことね(笑)」

 

それ以来、私は「仕事や勉強する時はお喋りをしない」という常識を捨てた。

 

…はずだった。

 

なのに今日、そうして寛容になったと思っていた私のココロに再び亀裂が入り、途中からイライラが止まらなくなってしまったのだ。

うるさい…なんだこのフィリピン人は…喋るなよ…ここは夜のスナックじゃねぇんだヨ…うるさい…あぁうるさい…いちいち笑うな…何言ってっか意味も分かんねぇし…くそー!!!!

 

ということで、イライラの頂点に立った私の脳みそはすっかり我を忘れていた。

 

私は自覚した。

やばい。このままではフィリピン人そのものを嫌いになってしまう。いや、すでに嫌いになりかけている。

フィリピン本国には両指では足りないくらいたくさんの友人がいるというのに。

これまで何度も何度も足を運び、取材もして、日本の次によく理解している国だったはずなのに。

その結果として特にフィリピン人の国民性が大好きだ!と確かに胸を張って言っていたのに。

タガログ語のチャーミングな響きも大好きだったというのに。

 

つまり私は蔑んでいた。

彼女たちを。そして「フィリピン人」全体を。

 

私としたことがそんなのあり得ない…と思えば思うほど、その感情はへどろのように私の胸にこびりついて離れなかった。

 

「これだからフィリピン人は嫌なんだ…」

 

もう全く自分ではコントロール不能な、醜魂のかたまりが存在していた。

もう、友人の顔を一所懸命思い出そうとしても、楽しかったフィリピンの情景を頭に描こうとしても、2人の耳障りな笑い声が全てをかき消して無駄に終わった。

 

そのうち別のフィリピン人男子が作業上の小さなミスをし、私の反対側にいたブラジル人の女性も部品を落としてあたふたし始めた。

もうダメだ…と私は思い、2人に向かって一言いった。

 

「ちょっと、うるさい(怒)」

 

彼女たちは、なんだこの女…という眼差しで私の顔を見、少し大人しくなって作業を続けた。

一方の私は、なんて言葉足らずな怒り方…と早速自己反省の嵐で、本当はこう言いたかったのに、とか、次にまた同じシチュエーションになったらこう言ってやるゾ、とか頭をぐるぐるさせた後、ふと、そうだ…ブラジル人の友人Dだったら何て注意していただろう…と考えた。

いつも陽気なDは、人を笑わせたりリラックスさせるプロだから。

 

そして思い至ったこと。

…私は、きっともうすぐ生理に違いない。

(だからイライラするのは仕方なかったんだ)

 

そうやってうずくまるように震えていた自尊心をなだめ、内在する差別心との根本的な闘いには蓋をすることにした。

そのことについては、また日を改めて書くことにします。

 

とりあえず今日のフィリピン人女子2人が、次に会った時はケロリとしていたらいいなぁ。

 


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