※前回の岡山の記事はこちら(PO準決勝・山形戦、3-0)
※前回の仙台の記事はこちら(PO準決勝・長崎戦、4-1)
※両クラブの対戦の記事=2戦目(23節、岡山 2-0 仙台)
<岡山スタメン> ※()内は前試合のスタメン
- 藤田息が体調不良との事でベンチ外に。
<仙台スタメン>
- ベンチメンバーを松下→モラエスと入れ替え。
とうとう迎えた、今季のラストを飾るプレーオフ決勝。
準決勝で共に下位のクラブが勝ち上がった事で、急転直下的に開催決定となった岡山のホーム・シティライトスタジアム。
販売開始から10分でチケット完売との事で、そのスピードは木村やオナイウの比では無い……と冗談を言える場では無く。
あくまで勝ったら来季はJ1・負けたらJ2という、瀬戸際の戦いを彩る場であり。
岡山と仙台、ともにボール保持を重視する相手に完勝した準決勝。
その内容もいかにもハイプレスがベースのチームに相応しくありましたが、その2チームがぶつかるとあれば予想はし辛く。
とはいってもリーグ戦では岡山がダブル達成と、相性差はハッキリしている組み合わせで、かつ順位の面からしても巻き返しを図らなければいけない仙台。
その入りはやはりロングボールの蹴り合いによる主導権争い。
しかしその際に敢行されるぶつかり合いの結果、岡山が反則を量産する流れになった事で仙台がフリーキックから攻勢に。
それでもその位置はいずれもセンターライン付近からで、かつ放り込みを選択したため、そんな争いに大きな変化は無く。
そしてこれによりオープンになりかけた所を、9分に阿部の持ち運びで突く岡山。
そのまま中央へ流れてミドルシュートを放ち、工藤蒼のブロックでエリア内へこぼれた所を末吉が詰めにいく(触れる前にクリア)、紛れを生み出し試合を動かしに掛かり。
しかし直後の10分、浮き球を収めた相良に対する(輪笠の)反則でまたも仙台のFK、今度は遠目ながら直接シュートも視野に入る位置となり。
キッカーは中島で、距離はあっても果敢に無回転シュートでゴールを狙います。
これがゴール左側へブレる軌道となりましたが、GKブローダーセンは惑わされずしっかり両手で弾いて防ぎ。
これにて立ち上がりの時間が過ぎ、お互い主体的な攻撃へ舵を切り始める時に。
FKでは肝を冷やした岡山、先程のように阿部の上がる右サイドを軸としたビルドアップで形作り。
一方の仙台も、リーグ戦でお馴染みの右の真瀬が上がったうえで、3枚の最終ラインの形をとって繋ぎ。
共に右肩上がりの節が見られる基本形。
その後岡山も、仙台サイドの反則から中盤でのFK→コーナーキックとセットプレーでひとしきり攻め。
そして20分、一度は途切れるもゲーゲンプレスにより木村がボール奪取と、岡山らしい起点から迎えた好機。
左ワイドで末吉・木村がボールキープと、ドリブルに定評のある2人で溜めを作ったうえで、ポケットに入り込んだ田部井へ送られるスルーパス。
この突然の変化に仙台ディフェンスも良く対応し、田部井のカットインを防いだものの、こぼれ球を木村が倒れながら繋いだ所を末吉がダイレクトでシュート。
角度の小さい場所からながら、これが芸術的なループシュートと化してゴール右へと吸い込まれます。
大一番に相応しい、咄嗟のスーパープレーで先制を果たしました。
これで実質2点差と、単なる1点以上の重みが仙台サイドにのしかかり。
これまで以上にボール保持の色を高めて反撃体制を作らなければならない状況ですが、岡山のプレッシャーによりままならず。
25分には最終ラインから左への展開がズレてしまい岡山へ右スローインを献上、そこから本山クロス→一美ニアでヘディングシュート(ゴール右へ外れる)と脅かされ。
準決勝の山形同様、強度に屈する流れが組み上がりつつありました。
仙台のサイドバックにはウイングバックが前に出て規制を掛ける、ハイプレスが持ち味の岡山。
しかしこれにより後方の陣形は動揺する事無く、左右のセンターバックをSBと見立てての4バックを採る事で破綻を防ぐシステム。
この意識(と、守護神ブローダーセンの存在感)があるからこそ、WBが尻込みしての5バックで引き籠ってしまう事無く、積極性が発揮できるというものです。
何とかそのプレッシャーを掻い潜りたい仙台ですが、やはり地上からは難しく。
32分にはまたも遠目からのFKで放り込みを選択し、これがエリア手前で合わせにいった菅田がさらに(一美の)反則を呼び込んだ事で、FKの連続という絵図に。
そしてまたも直接狙える位置でのFKとなり(横軸は左ハーフレーン)、当然中島が直接シュートを放つも、今度は壁を直撃と有効打とはならず。
正攻法では崩れないため、セットプレーも絡めながら岡山の僅かなスキを狙うという立ち回りを取る仙台。
36分に自陣からのFKで素早くリスタート、反則したのが降りたエロンに喰い付いた田上なため、その裏を突きに掛かり。
中島ミドルパス→郷家ポストプレイを経て、パスワークでアタッキングサードまで運んだものの岡山の戻りも早く結局シュートは撃てず。
40分には岡山の攻めを跳ね返し、クリアボールを鎌田が拾うという起点で前進の余裕が出来、右サイド奥まで運んでCKにまで繋げ。
CKでのキッカーは鎌田が多く、その鎌田は低いクロス中心に上げていましたが、この右CKでもニアへのクロスと疑うような軌道で中央の奥山の足下へのボール。
そしてボレーシュートが放たれるも木村がブロック、こぼれ球を菅田が追撃しましたがこれも鈴木がブロック、左へこぼれたボールを相良が折り返しと乱戦を生み出します。
幾多の折り返し→クリアを経て、最後の相良のシュートもブロックに阻まれるなど、ここでも岡山ディフェンスの壁は健在という結果に終わり。
仙台が完全な攻勢に入れずにいるため、当然岡山にも訪れる好機。
両サイドに顔を出してパスを引き出す木村に手を焼いているという印象の仙台ディフェンス。
43分にはその木村に対する鎌田の反則、これで中央遠目からのFKになると、田部井が直接シュート(ゴール右へ外れる)とこちらも遠目から矢を放ちにいき。
普段通りの姿勢ななか、フィニッシュで終われる所は終わらせる事で、カウンターの隙を与えないという理に適った立ち回りを見せます。
結局1-0のまま前半が終わり。
依然として厳しい状況の仙台、ハーフタイムで動く森山佳郎監督。
エロン→オナイウへ交代し、これによりオナイウ右サイドハーフ・郷家FWというポジションチェンジと、これまで通りの采配が頭を過るカードの切り方。
しかしこの日はオナイウがそのままFWに入るという変化を付け、正攻法での限界を感じさせるとともに、(実質)2点差を捲る秘策とも感じました。
そして始まった後半、岡山のプレッシャーをかわすため、多少ラフな繋ぎを交えてのボール運びを見せる仙台。
スローインのボールを収めてからバイシクル気味に逆向きで上げるロビング、それをヘッドで強引に収めてポケットへ進入という具合。
そうして前へ繋いだのち、オナイウや相良のスピードで打開を図りに掛かります。
依然として組織立った組み立てがままならずと暗雲が覆う状況ながら、こうした強引な手法により攻撃権を確保。
それでも、「早くボールを前に送れば、それだけ早く返ってくる」の法則を地でいくかのように、一定周期で岡山の反撃に遭うのは避けられず。
インテンシティの高いこの日の試合でも、やはり局面でハイプレスをいなせるだけの保持力は必要に思えました。
しかし決定機は、その訪れた岡山の好機から。
岡山のCKからのカウンターで、郷家のラフな裏へのロングパスに、長所を生かしフルスピードで走り込むオナイウ。
田上を強烈に追い抜いて受ける事に成功すると、そのまま左ポケットまで進入した末にカットインからシュート。
必死に追走した田上を振りきる形で放たれたこのフィニッシュでしたが、GKブローダーセンが横っ飛びでセーブとここでも立ちはだかる守護神。
ここからのCK攻勢(3本続く)もモノに出来ずと、早期に追い付くという算段はならずに終わった仙台。
一方憚らずも押される格好となった岡山、15分に交代カードに手を付ける木山隆之監督。
一美→ルカオへ交代と、駒の入れ替えで打開を図りにいきます。
仙台の攻めが途切れた所、左スローインの連続で前進する岡山。
すると敵陣に進入してのスローインで、収めたルカオが真瀬を背負い、さらにアタックにいった工藤蒼をも跳ね飛ばすという強靭なフィジカルによるカットイン。
これで生まれた仙台ディフェンスの混乱を他所に、悠々逆サイドでフリーになっていた本山へ送られる横パスを経て、右ポケットから放たれたシュート。
必死でブロックにいった奥山を掠める形でゴールへ突き刺さり、岡山が追加点。
ルカオの強烈なパワーにより相手を奈落へ突き落す格好で、昇格を手繰り寄せるゴールとなりました。
唖然とするしかない仙台ですが、諦める訳にはいかず。
この直後からオナイウと郷家を本来の位置へと入れ替え、郷家がFWに。
やはりHTの交代策は搦め手だったようで、相手が退く事を想定すると本来のスタイルでの崩しは不可欠と判断したでしょうか。
しかし実質3点差を痛烈に追い掛けるにはエネルギーが必要で、20分にそれを補填するべく2枚替え。
鎌田・相良→松井・名願へ交代し、今度は2人とも同ポジション同士。
一方岡山サイドも、このタイミングで田部井が足を痛めてしまった事で交代カードを切り。
田部井・岩渕→竹内・神谷へと、こちらも2枚替え。
安全圏といえるリードを得た岡山ですが、相変わらず積極的に中盤~敵陣でボール奪取を目指す一貫した戦い。
24分には仙台陣内左サイドでの奪い合いの果てに、竹内がボール確保して逆サイドへ展開、そしてボックス内へ送られるミドルパスを収めたルカオ。
チャンス到来という絵図ですが、ここからボール保持に努めた末に最終ラインに戻しと、神谷の投入もありこうした立ち回りも出来るようになり。
目立たない所でチーム力の向上が果たされた岡山ですが、一方目立ったのはやはり前線のルカオ。
27分に神谷のロングパスに裏抜けして受けたルカオ、そのまま左ワイド奥から強烈なカットインを見せた末にマイナスのクロス。
これは合わずに流れるも、逆サイドの本山から上げられたクロスをポストプレイ、神谷のシュート(枠外)へと繋げます。
しかしまだ序の口で、その直後の同27分には竹内のパスカットからのパスワークを経て持ったルカオ、勢いのまま前を向いて左ハーフレーンからミドルシュート。
これが右ポストを掠めて決められずに終わりましたが、再三発揮されるパワーで(ルカオ自身の煽りもあり)ひとしきりホームのスタンドも盛り上がり。
これにより、得点どころか糸口すら見えなくなってしまった仙台。
31分に最後の交代を敢行、小出・工藤蒼→石尾・中山へと2枚替え。
石尾がCB・(中山がFWに入った事で)中島がボランチと、本職では無いポジションチェンジが起こるも、流れを変えるには至りません。
ルカオの存在感に押されるように、前半から走りずくめだった木村もそれを止めずと、躍動感を増す岡山の前線。
32分にルカオ右ポケットへスルーパス→木村走り込んでマイナスのクロス(誰にも合わず)と、まさにノリノリといった格好で好機に絡み続け。
最早仙台サイドは3点目を防ぐのが精一杯という状態ななか、35分には奥山の蹴り出しをブロックしたルカオ、そのまま自分で拾いまたもパワー溢れる推進力を発揮。
中央からエリア内を伺う中、サンドした真瀬・中島にCBも加わる事で何とか反則気味に止める(笛は鳴らず)という具合に、1人の力がここまで相手ディフェンス全体を翻弄する姿は今季のJリーグ全体を彩る絵図の一つといっても過言では無く。
※余談
これらの活躍により試合後「ルカオはJ1でも通用する」という声が数多上がったものの、こうしたパワーを発揮させる事で故障も膨らむというキャリアを描いているため、正直スーパーサブ起用を貫き時間を限定させないと苦しい気がします。
尚も38分、木村のスルーパスに走り込んだルカオのシュートが右ポストを直撃と、ひたすら脅かされる仙台ゴール。
それでも39分、岡山が最終ラインでビルドアップをミスし、右サイド深めでオナイウがカット。
彼からのパスをポケットで受けた中山がそのまま角度の無い所からシュート(枠外)と、終盤を迎えた事で隙も生まれ始め。
40分には最終ラインで岡山のプレス回避に成功と、ようやく相手のストロングポイントを折っての好機を作り。
奥山のミドルパスを収めた中山がペナルティアークからシュートするも、これもブロックを掠めて枠を捉えられず。
投入された中山がフィニッシュを連発するも、やはりルカオ程のインパクトは残せません。
45分に石尾のラフなロングパスから、セカンドボールを繋げて前進する仙台。
奥山が持ち運んでエリア内へ進入、そしてカットインを経てシュートと先程のオナイウのようなフィニッシュを生み出しましたが、これも阿部を掠めてゴールバー直撃と決められず。
2点差のままとうとう突入したアディショナルタイム、岡山は残っていたカードを使い。
柳育・柳貴と、リーグ戦を支えてきた2人の柳を同時投入(阿部・木村と交代)と心憎い?采配も見せ。
右CBに入った柳育のクリアミスを切欠に、仙台攻勢の流れが生まれたものの、それでも3点奪われなければ良いという心の余裕は大きく。
最後の一矢というべき郷家のペナルティアークからのシュートをブロックと、ミスを帳消しにする柳育の働きもあり、昇格へのレールをひた走ります。
そして鳴らされる試合終了のホイッスル。
16年目で初の昇格を果たした岡山、それにより興奮のるつぼと化したシティライトスタジアム。
今季の戦いぶりは元より、これまで一度もJ2から陥落せず着実に根付きを果たした過去の奮戦も貢献は大きく。
近年新規のJ1クラブは、1年での舞い戻りが当たり前のようになっている(例=徳島・松本・長崎)感がありますが、それを跳ね返すべくの戦いが待ち受けている来季。
それでも来るべき時に備え、訪れたハレの日を存分に楽しむべきでしょう。
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