穴を作らない。
目下J1首位のFC東京、その売りは失点数リーグトップの少なさ(16失点)が示す守備力。
しかし攻撃が弱いという事は無く、ここまでで33得点。
「良い守備から良い攻撃は生まれる」という格言を如実に表しており、特に今季の東京の戦術はカウンター中心のスタイルなだけに尚更です。
そんな屈強な戦術を浸透させているのが現監督の長谷川健太氏ですが、東京での指揮は3クラブ目。
清水で監督業をスタートさせ、ガンバでタイトルを次々と獲得したという実績(ここでは詳しくは述べない)からも着実にステップアップしている感が窺え、そして今季東京に初のリーグ優勝を齎さんとしている。
それを支える選手補強も、とにかく優勝に向けて邁進するための路線で、守備同様に穴を作らない。
リーグ前半に中盤で存在を輝かせた久保が海外移籍でチームを離れたのが16節以降(実際は代表招集があったのでそれ以前)ですが、それを見越して開幕前にナサンホ、アルツゥール・シルバと助っ人を加えており、ナサンホがその穴に入ります。
それでも今夏は神戸から三田を獲得と余念が無く、久保の穴埋めに万全な体制を作らんとしています。
他にもセンターバックのチャンヒョンス、DFのバックアップであった太田が移籍でチームを去ると、すかさずガンバからオジェソクを獲得したりと素早い動きを見せます。
CB渡辺の抜擢はあれど、優勝するチームの補強という印象付けには成功したと思います。
一方の仙台、現状の位置は残留争いから半歩~一歩前ぐらいでしょうか。
過去2年はリーグ前半で勝ち点を稼ぐも後半失速、というシーズンを歩んでいましたが、今季は一転してスタートで躓いてしまいます。
8節時点で1勝6敗1分の最下位。
前回述べた清水との違いは、監督交代では無く、監督が戦術変更を敢行して危機を乗り越えた事。
今季で仙台監督6年目となる渡辺晋氏、2017年から3-4-2-1のフォーメーションが基調のポゼッションスタイルをチームに植え付けてきました。
しかしオフの移籍による選手の入れ替えで機能しなくなり、9節から4-4-2へとシフトしチームを立て直しに掛かると調子を取り戻します。
息を吹き返した仙台、14節からの4連勝で危険水域から脱出、しかもその間には首位・東京にも勝利を挙げる(2-0)など奮戦。
新戦力の松下・道渕のレギュラー定着など様々な要因はあるでしょうが、最大なのは屈強なCBシマオ・マテの存在で、守備強化のため無くてはならない選手にのし上がりました。(彼が欠場した19節・鹿島戦は0-4の大敗だった)
日本代表GKシュミット・ダニエルの海外移籍も、すぐさまの補強(ポーランドからヤクブ・スウォビィクを獲得)で乗り切り、堅守が築かれつつあるようです。
試合の方は久々に箇条書きで。
- 東京は三田が移籍後初のスタメン(右サイドハーフ)。オジェソクも2試合連続でスタメンと新戦力抜擢に余念が無く。
- 仙台は前節と同じスタメン、新戦力は札幌から加入した中原がベンチ入り。
- 開始1分でいきなり仙台はシュートに持ち込む(石原直樹)。
- ボールを無理に握らなくなった仙台、頭では解っているものの前年からすると違和感。
- その影響もあり、東京はいつものカウンターサッカーの威力を発揮できず。
- 逆に仙台がカウンターを仕掛けようとする場面もあったが、東京の帰陣は早くチャンスを作れず。
- 東京が無理にボールを奪いに来ないので、仙台側も結局ボールキープの時間が長くなる。
- ボールを握らされる場面が多かった両者、東京は東・橋本・森重のサイドチェンジで活路を見出そうとする前半。
- シマオの屈強ぶりが光る仙台、彼を攻略せんと様々な攻めを見せる東京という図式に。
- 27分、左サイドでディエゴ・オリヴェイラがシマオの足元を抜くパス。この後三田→オジェソクと繋がりクロスが上がるも合わず。
- 34分にようやく東京がカウンター、左サイド奥でボールを持ったディエゴ、ここでも対峙したシマオを股抜きでかわしてカットインするもゴールラインを割る。
- ディエゴの個人技が光る反面、仙台のFWハモン・ロペスは中々良い所を見せれず。
- ロングボールを収めてもすぐさま東京選手に囲まれチャンスを作れない。
- 東京の左SH東のポジションチェンジは(この記事でも書いたが)もはや定番となっている感。この日は純粋に三田とポジション入れ替えを敢行するも、すぐに戻った。
- 32分、仙台左サイドバック・永戸が遠目からミドルシュート、DFに当たってゴール左に外れる。これが前半の最も惜しい場面か。
- 42分もハモンがミドルシュート。松下ロビング→道渕ヘッドで落とす→石原直ポストプレイでエリア外へ→ハモンという良い流れも、シュートは枠外。
- 前半は0-0で終了。現状守備重視チーム同士の対決に相応しいといえば相応しい前半。
- 後半立ち上がりは仙台やや優勢、両サイドから満遍なく攻撃。
- 後半3分蜂須賀カットインからの関口のシュート、9分関口クロスがクリアされた後の蜂須賀のシュート。(いずれも枠外)
- その他クロスは山ほど上がるもののゴールに結び付かず、すると東京が決定機。
- 12分、ゴールキックの後東京にボールが収まり中盤で東がスルーパス。エリア内に永井が抜けて走り込むと、たまらずシマオがバックチャージして反則・PK獲得。
- キッカー・ディエゴのPKの結果は周知の通り、GKスウォビィクが止める→蹴る前に前に出ていたとされやり直し→ゴール右上に決める、というプロセスで東京先制。
- 無理にでも攻めなければならなくなった仙台、21分の直接フリーキックはかなり距離があったものの永戸が直接狙い、惜しくもバーの上に外れる。
- 26分、仙台は石原直→長沢に交代。東京も永井→ジャエルに交代だが、こちらは永井負傷という要素あり。
- 以降も仙台はチャンスを作る。ただし長沢は殆ど関与せず。
- 32分、永戸のクロスが流れたのを右サイドでハモンが拾う。そこからカットインしてシュートも高萩がブロックで防ぐ。
- 33分、コーナーキックの流れからのクロスをGK林がキャッチにいくもこぼれ、そこを平岡がシュートするも外れる。
- このコーナーの前に仙台は富田→中原に交代。中原は今季リーグ戦初出場となったが、この交代は凶。
- 36分に三田のドリブルを反則で止めて警告を受けたのがケチのつき始めで、以降マイボールの際パスミスを連発してしまう。
- 逆に東京視点では、この場面三田が何度もチャージを受けながらも倒れずに中央突破。この迫力が中原を焦らせたのかも。
- その後のジャエルの直接フリーキックも惜しかった。(GKスウォビィクがセーブ)
- 38分、仙台は関口→梁勇基(リャンヨンギ)に交代。これは割と吉に出て、梁はチャンスエリアで動き回り受け手・出し手となり好機を演出。
- 東京の交代は38分三田→大森、41分ディエゴ→ナサンホ。以降東トップ下の4-5-1のような形に。
- 最終盤の仙台の攻撃、42分は蜂須賀縦パス→梁ポストプレイ→ハモンシュートもオジェソクがブロック。
- アディショナルタイム、GKスウォビクのロングフィードの跳ね返しを道渕が拾い、一旦奪われかけるも橋本がクリアミス。これがハモンに渡るという絶好機となったが、最後のブロックは固くシュートは阻まれる。
- その後東京にうまく陣地を稼がれ試合終了、1-0で東京勝利となった。
特に印象的だったのが仙台・中原の出来の悪さで、個人的にも今年札幌のカップ戦で何度か見た選手なので、一度J1の試合に出されるとこれ程に表れてしまうのかと愕然。
仙台はシーズン前にも札幌から兵藤を獲得しているので、二匹目のドジョウを狙ったか?なんて見方も浮かんでしまいますが、これからチームにフィットする事を願うばかりです。
逆に東京はしっかりと首位固め。
ラグビーW杯の開催により、24節から地獄のアウェイに入るという日程なので、追走するライバルチームとの差を広げられているのは何よりでしょう。(2位・鹿島とは勝ち点7差)