※前回の甲府の記事はこちら(10節・金沢戦、3-2)
※前回の山口の記事はこちら(11節・水戸戦、2-3)
<前節からの変更>
甲府=連戦が終わり通常運営……と思いきや、林田をセンターバック(野澤陸と入れ替えで左CBに)という大胆な起用。彼含め4人を代え、左ウイングバックが荒木→小林・右シャドーが飯島→鳥海、そして1トップがブルーノ・パライバからウィリアン・リラに。控えGKは岡西が8試合ぶりにベンチ入り。
山口=2人を入れ替え、右インサイドハーフを池上→山瀬、右ウイングを吉岡から兒玉へと代え、開いた左WBに沼田を入れる。大槻の離脱に加え岸田もベンチ外が2試合続き、センターフォワード不在の苦しい戦い。
5連戦という苦しい日程を越え、ここからが真価を問われる戦いに。
確かに連戦の最中日程を消化するだけでも精一杯、といった感じになりがちですが、そこは全クラブ平等であり。(ウィルス禍に襲われた岩手を除く)
5戦で3勝1分1敗と反抗体制を見せた甲府。
しかし連戦で出づっぱりだった3バックのうち野澤陸がスタメンから外れ、代わりに持ってきたのはボランチの林田。
これが吉と出るかどうか、という一戦となりました。
試合が始まり、早速ボールを保持してパスを回していく甲府。
すると前半2分、長いパスワークの末最終ラインに戻して左へ展開、山口の前掛かりな姿勢を誘ったのち小林のスルーパスに走り込んだ長谷川がエリア内左からマイナスのクロス。
これを中央でリラが合わせ、早々にゴールゲットに成功します。
得点期待値の高いマイナスのクロスを入れる展開に綺麗に持ち込む、幸先の良いスタートとなりました。
いきなり出鼻を挫かれる事となった山口、こちらもパスワークによる主体的な攻撃が生命線なチーム。
早速反撃を始め、4分には縦パスをエリア内で受けた田中がシュート。(ブロック)
9分には左サイドから攻め、橋本が浅い位置からエリア内へロビングを送ると、高木がフリック気味にヘディングシュート。(GK河田キャッチ)
CFが壊滅状態になった事を受け、2試合続けてその役割を務める高木も、幸先良くターゲット役をこなします。
その後は山口が攻撃権を支配し、得意の5レーンをフルに使う攻撃で押し込み。
プレッシングを掛けたい甲府も、リラの1トップではそれはままならず、みすみすビルドアップを許したのち圧を受けるという苦しい展開となります。
ただし中央は固められているので、アンカー(佐藤謙介)を経由せずにサイドに送り、そこから前進するというシンプルな形。
それでも左サイドには絶対的な存在感を放つサイドバックの橋本が居り、ボールを運ぶのに苦労は見せず。
18分には最終ラインから、右に寄って受けた渡部がサイドチェンジのパスを送ると、受けた橋本のスルーパスに走り込んだ沼田からマイナスのクロス。
中央に転がったボールを山瀬が合わせ、先制点のお返しのようなシュートとなるも甲府・浦上のブロックに阻まれ同点ならず。
プレスが掛からない事が原因なのは明らかだった甲府の失速、これを受けて途中から守り方を変更します。
守備の際は鳥海が前に出て、リラとの2トップのような形になり、5-3-2のシステムを採り。
2列目が薄くなるというデメリットも抱えるこのシステムですが、これにより山口にサイドへ誘導させ、そこで人数を掛けて守るという意識がハッキリとしたのが大きかったでしょうか。
前に出てくる甲府WB(右=須貝・左・小林)により、山口のサイド攻撃は詰まりがちとなり、一気に攻撃機会が減少するに至りました。
24分に山口がセットプレー(右サイドからのフリーキック)から、ヘナンがヘディングシュートを放ったのを最後に、甲府が攻撃権を支配する流れへと移り変わり。
願っても無い展開に持ち込んだ甲府、右CB・須貝のオーバーラップが特徴的な攻撃を繰り広げ。
一方逆の左サイドでも、WBの小林が跳梁して偏らせず。
前回観た際は急な出場(前半10分から交代出場)だったためか、あまり機能している場面が見られず終わってしまった感がありましたが、この日はスルーパスの出し手と受け手双方をしっかりとこなしていました。
出来ればこの時間帯に追加点を得たかった甲府でしたが、良い流れだったものフィニッシュの面では不発に終わり。
34分、敵陣でボールカットに成功した山田陸がそのままエリア内右へ切り込み、そこからカットインを経てシュートの体勢に。
しかしバランスを崩した末に振った足は、ディフェンスにいった山口・渡部へのチャージとなってしまい、反則となり警告まで受けてしまいました。
目ぼしいシーンはこれぐらいに終わり、結局前半は1点のみ。
一方の山口も見るべきものは少なく、終盤には田中がロングスローを入れる(43分)強引な場面も見られるなど苦しさが垣間見え。
甲府1点リードで前半を折り返します。
停滞感が明らかであった山口は、ハーフタイムで動き。
右SBを交代し、眞鍋に代えて石川啓人を投入します。
その石川啓を経由して好機を作りにいく後半の入り。
左サイドに偏っていた前半の意識を改めるという効果もあったでしょうか。
高木を裏に走らせるという攻撃を繰り返したためオフサイドも量産しましたが、機能していた甲府の対策も無効化する事に成功し、再びペースを握る山口。
変化としては佐藤謙が下がってボールを受ける場面が増え、甲府2トップをいなすパスワークを展開したのち、佐藤謙が下がる分高木も降りてポストワークに参加するといった感じでしょうか。
そうしてクロスに持ち込んでいく山口の攻撃でしたが、後半6分には左からの田中のクロスを、ファーサイドで兒玉がスライディングで合わせるも威力無くGK河田がキャッチ。
9分には左コーナーキックから、中央へのクロスをヘナンが合わせましたが、叩き付けたヘディングシュートは大きくバウンドしてゴール上へ外れ。
後はフィニッシュの精度という、定番ともいえる課題が見られた直後に大ピンチを迎えてしまいます。
10分の甲府、右サイドでのパスワークから中央の山田陸を経由して左へ展開、奥へスルーパスを供給した小林が鳥海のリターンを受けてエリア内へカットイン。
そしてエリア内左奥からクロスを上げ、ファーサイドで石川俊輝のジャンピングボレーが放たれ、GK関にセーブされるもさらに関口がボレーシュート。
完全に決まったと思われた連撃でしたが、関口のシュートは左ゴールポストを直撃して跳ね返り、決定機を逃した甲府。
辛うじて命拾いした山口、再びペースを握り直したものの、以降クロスの精度自体も乱れがちとなり。
押され気味の甲府が先に動き、20分に3枚替えを敢行。
リラ・鳥海・関口→三平・宮崎・荒木へと交代します。
吉田達磨監督はやはりFWの機動性に不満があったようで、リラの後にはここまで毎試合途中出場していたパライバを選ばずに、守備でも機能できる三平を選択しました。
以降暫くは山口の攻撃機会を減らしに掛かった甲府と、それを機能させる前に仕留めたい山口のぶつかり合いに。
22分、渡部の裏へのミドルパスに走り込んだ兒玉が右サイドからクロスを上げ、中央で高木がヘディングシュートを放つもゴール左へと外れ。
続く23分は長いポゼッションから、左サイドで前進して田中がクロス、合わずに流れたボールを拾った兒玉がペナルティアークからシュートするもブロックに阻まれます。
フィニッシュまで辿り着くもゴールは奪えない山口、24分には燃料切れの山瀬に代えて池上を投入。
そして流れはイーブンとなり、交互に攻撃する展開に。
甲府が再び決定機を迎えたのが27分、GK河田からのビルドアップでプレスを剥がしたのち左サイドで前進、宮崎がカットインを経てエリア内左を突き三平へ横パス。
ニアサイドで受けた三平はさらに前進し、ゴールライン近くからシュートしGK関を抜いたものの、角度の無い所からなのが災いしてゴールポストに当ててしまい。
またもモノに出来なかった甲府。
一方の山口も、攻勢の中何処かで反撃を浴び、点差を広げられるという危惧を抱えながらの攻撃を強いられる事となります。
何とかその状況を振り払いたい山口、31分に再度ベンチが動き沼田・佐藤謙→島屋・神垣へと2枚替え。
そして迎えた32分、甲府の攻撃を切ったのちGK関からビルドアップ、甲府のプレッシングを何とかいなして左サイドで前進。
橋本のスルーパスを受けた島屋がさらにエリア内へとスルーパスを送り、走り込んだ池上が奥から浮き球を送ると、すかさず高木がヘディングシュートをネットに突き刺し。
これまでのクロス→シュートという流れからの、近い距離で浮き球を合わせる変節に甲府サイドは成す術無く、といった同点弾でした。
同点となった事で、元来ボールポゼッションの下地はある甲府も主体的な攻撃を強く押し出し始め。
交代でシャドーに入った宮崎の奮起で好機を作っていきますが、悲劇もその流れから生まれてしまいます。
34分右サイドでのパスワークから、山田陸の裏へのミドルパスを中央で受けた宮崎、そのままGKと一対一へ持ち込まんとします。
しかしその過程でバランスを崩し、GK関に抑えられるも振りにいった足を止められず、関の頭部を蹴る形となってしまい反則に。
たまらず危険なプレーとして主審(田中玲匡氏)から赤いカードが突き出され、ヒーローとなるはずが一転して退場処分となってしまった宮崎。
これで数的有利となった山口でしたが、上記然り裏を取られる場面が目立ってきた影響か、再開前に最後の交代をCBの渡部にあてがいます。(菊地を投入)
10人となった甲府、尚も余勇を振るって攻め上がり、39分には左から小林のグラウンダーのクロスを三平が受けてシュート。
ブロックされてのCKからも、クリアボールを荒木がボレーシュート(GK関キャッチ)と、不利な状況でも勝ち越しを狙いにいく姿勢は変わらず。
しかしこれ以降は有利不利がハッキリと表れ、ひらすら山口がボールポゼッションを高める展開となります。
5-3-1のブロックで守備を固める甲府に対し、42分に石川啓が遠目からミドルシュート。(GK河田セーブ)
45分にはクロス攻勢を島屋のヘディングシュートで締める(GK河田キャッチ)も、ゴールを奪えない山口。
試合は同点のままアディショナルタイムに突入します。(43分に甲府は小林・石川俊→大和・松本へ交代、大和が右CBに入り須貝が右WB・荒木が左WBへシフト)
山口が攻勢を続けるもフィニッシュには辿り着けず、すると終盤に甲府の逆襲となり。
須貝の敵陣でのドリブルを山口・橋本がスライディングで止め、反則・警告を受けるという具合に、山口の「10人相手に負けられない」という意地とプレッシャーも相当なもの。
その後パワープレイを仕掛けた甲府、荒木のロビングが流れた所を、大和が走り込んでシュートしますが枠を捉えられず終わり。
押し気味の山口と、フィニッシュで目立つ甲府という構図は最後まで変わらずの印象で、試合終了の時を迎えました。