※前回の山口の記事はこちら(35節・熊本戦、1-1)
※前回の横浜FCの記事はこちら(37節・栃木戦、0-0)
<山口スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 前節(愛媛戦、1-1)出場停止だったヘナンがスタメンに復帰。
<横浜FCスタメン>
- 相変わらず昇格リーチから決められない状況。しかし前節の勝ち点1で、引き分けでも昇格決定と僅かながら前進。(敗戦の場合は長崎が引き分け以下で昇格)
- 前節出場停止だった高橋がスタメンに復帰。
- その高橋の代役的にスタメンになった櫻川が、累積警告で入れ替わるように出場停止。
- 今季限りでの引退を表明している武田が、4節(栃木戦、0-1)以来のスタメン出場。
奮戦虚しく、今期の昇格レースからは脱落が決定してしまった山口。
最大の要因である、終盤に喫した6連敗という成績はもどかしいの一言で、その最中にエース河野も負傷離脱と踏んだり蹴ったりとなり。
来季も同様のサッカーによる、同等以上結果を残せるかどうかが試される最終節は、開幕戦と同じカードと折り返しで締められる事になりました。
その相手の横浜FC、昇格寸前の足踏みにより、悪目立ちも甚だしいといった状況に。
そして迎えた最終節は、引退表明している武田をスタメンに組み込む・長らく戦力から外れていた立場の新井がベンチ入りなど、思い切ったメンバー選択を敢行してきました。
そんな風変りのメンバーで行われたサッカーは、一言で言えば堅い(硬い?)というものであり。
「一歩間違えれば……」という意識が強い状況故に仕方ないといえますが、とにかくリスクを排除する事を第一とした立ち回り。
後方からのロングボールを送り、山口のボールとなった所にゲーゲンプレスを掛けるという、「ストーミング」の色を目立たせる事となりました。
硬さが取れないなか、唯一冴え渡るのがその前線の守備。
今節を前に突如坊主頭に変貌した小川を軸としたプレッシングで、相手の山口にも余裕を与えず、ロングボール中心と自身と同様の立ち回りを押し付ける事に成功。
決定機を与えずにやり過ごす事で、次第に自身の主体的な攻撃へと舵を切り始め。
前半10分、ユーリのボール奪取から敵陣でパスワークに入り、サイドを振りながらの保持を経て最終ラインへ戻して作り直し。
立ち上がりの様子見は終わりか……と思われた刹那、ンドカの低いロングパスで右奥を突き、山口のクリアが逆方向へ流れた事でコーナーキックとやはり長いボールを軸とした攻めは変わらず。
そして福森の左足を活かしたセットプレーと、リスクを抑えたまま先制点を狙いにいく横浜FC。
しかしこのCKからは、エリア内での空中戦でカプリーニがヘナンを倒してしまい反則・警告と、今後このサッカーを駆使するには辛くなるカードの被害が出てしまい。
結局その後も横浜FCの慎重ぶりは続き。
前節積極性を目立たせた山根も、切り込みを選ばずアーリークロスという、本来?の姿へ逆戻り。
しかしこの日はこれが正解という雰囲気も伺えました。
スタメンに抜擢された左の武田も、攻撃の際はボールキープから戻し→福森のアーリークロスと、あくまで潤滑油に徹するような立ち回り。
そんな相手の姿勢に、攻めっ気を反らされた感のある山口。
18分、横浜FCが最終ラインでボール確保した所にプレッシャーを掛け、左サイドで山根を追い込む末永。
そして苦し紛れのミドルパスを新保がカットしてショートカウンターの体勢に入るも、佐藤謙のボールキープが反則気味に奪われて終了となり。
それでも、相手の思惑と立ち回りを掴んだ事で、ここからポゼッションの姿勢を高めに掛かります。
佐藤謙が最終ラインに降りる3枚でのボール保持により、ワイドに開く両センターバックという具合に、普段通りのスタイルを見せ始め。
そして前がボランチの位置に回り、野寄が下がって受けにいく可変を軸に前進を図ります。
この辺りは、武田の起用でイレギュラーな陣容である横浜FCの左サイドに対し、こうした可変の色を強める事で惑わせる狙いが出ていたでしょうか。
しかし22分の決定機は可変せずに、左から新保が対角線のロングパスを、高めの野寄に通さんとする手法から。
クリアボールを右ワイドで拾った前がカットインと、普通のサイドバックとしての振る舞いを経て放たれたミドルシュート。
これがゴールバーを掠める際どいフィニッシュとなり、昇格を決めたい横浜FCに冷や汗を掻かせ。
そんな状況もあり横浜FCは一層硬さに覆われてしまったか、流れの中で好機を生み出せずに時間を潰し。
31分にGK関のロングフィードを跳ね返しての好機、ユーリのスルーパスを受けたカプリーニがエリア内を突くも、ディフェンスに遭い撃てず。
しかし山口の後方からのロングパスを遮断という同パターンで継続すると、今度は直接カットしたガブリエウが前進を経てカプリーニに託し。
そしてやや遠目ながらミドルシュート(枠外)と、ハイプレスで蹴らせるという姿勢のみは一貫させ。
その先はカプリーニの才覚に任せるという、単純さが強いながらも間違いの無い選択を採ります。
これが奏功し、終盤まで攻撃機会を確保した横浜FCでしたが、フィニッシュは中々生み出せず。
期待を一身に受けたカプリーニは、ポストワークからのサイドチェンジありワンツーでの切り込みありと、多彩な手法による崩しで存在を輝かせるもののあと一歩届かず。
再びリスク回避を図りながら……という立ち回りの色が強まるも、45分にふとした隙から山口が新保の持ち運びで抜け出さんとした所を、ユーリが反則で阻止。
カードは出ず命拾いも、これによるフリーキックから、前半の最後は山口の攻撃ターンとなり。
一度はクロスを跳ね返すも最後方からの作り直しとなった山口は、佐藤謙が左へ展開するや、すかさず新保に掛けられたプレッシャーの背後を取ってリターンを受け。
ここから前進していき奥一歩手前でキープする新保が、ディフェンスの間を通してハーフレーンの佐藤謙に渡し、最後はその佐藤謙がミドルシュート。(ガブリエウがブロック)
今季の山口の特徴である、要所での相手のプレッシャーを利用した崩しが炸裂した末に前半終了となり。
何とか凌いだ格好の横浜FCですが、後半も我慢の展開を続けるのか選択を迫られます。
ハーフタイムでの交代は共に無く、今季最後となる(横浜FCサイドは「したい」でしょうが)残り45分。
その采配の通りに、後半も横浜FCの立ち回りは大きく変わらず、後半2分に縦パスを受けたカプリーニがボールを出し入れしての好機。
裏へのミドルパスを受けてポケットへ進入、切り返しでヘナンをかわした末にクロスと、攻撃の橋頭保の役割を果たし続けるカプリーニ。
そのカプリーニが受けた反則で得たFK(5分)から、福森の左足によるクロスで脅かすという具合に、あくまでシンプルかつベストな攻めを続けていきます。
それに合わせて山口もロングボール中心の攻めに傾倒と、前半の立ち上がりのような様相となってきた試合。
こうした展開により、間違いは許されなくなるのが厄介であり。
6分の山口のゴールキック、ロングフィードに末永が合わせられずも、流れたボールを若月が拾う形で好機。
そのまま追い越した末永へのスルーパスは遮断するも、拾った野寄に右奥を突かれてクロス(クリアされてCKに)と厚い攻めを許し。
相変わらず硬さが健在ななか、その間違いが起こる確率を減らさなければならないのが横浜FCサイド。
気になる他会場でも、3位・長崎がリードを保つ状態が続くだけに尚更であり。
10分、またも小倉の縦パスを受けたカプリーニが中央からエリア内へ突撃、ディフェンスに遭いこぼれたボールを小川→武田と繋いで左ワイドへ。
ベテラン武田の採った選択は1タッチクロスをチラつかせての中央への戻しで、小川を経由して受けた小倉がミドルシュート(佐藤謙がブロック)と、ラストダンスにより齎される味を加え。
尚も繋いで武田クロス→高橋利ヘディングシュートと攻め立て、CKに持ち込む攻勢を作ったものの、試合を楽にする先制点は奪えません。
その後もこの立ち回りを続ける横浜FC、引き分けOKという条件の下、意思統一はブレません。
しかし18分に再び間違いが起き、クリアボールを合わせたユーリのヘディングが逆方向に向かってしまい、拾った若月がンドカと競争に。
そのままドリブルで左奥まで持ち運んだところ、何とかンドカが遮断して撃たせず。
失点はせずも、こうした戻りを強いられる事で消費する体力面も気になる局面に。
ベンチはやはり最初に動き、21分にその体力面で不安のある小川を退け、室井を投入します。
これを受けて山口ベンチも動き、野寄→小林へと交代。(末永が右サイドハーフへ回る)
最早ボールポゼッションは、乱戦模様を避けるべくの手段というような展開に。
25分にその体勢に最終ラインで入った山口ですが、降りて受けた小林が小倉に詰められ、ボール奪取と同時に倒してしまい反則・警告。
これにより再度セットプレーからゴールを狙う横浜FC、ここからの攻めは実らずも、セカンドボールを確保して左サイド奥を突き。
細かい繋ぎのなか、高橋利の浮き球パスを腕でブロックする形となった下堂によりハンドの反則で、再びのFKと量産されるセットプレー。
左ワイドFKという位置でのこのFKから、キッカー福森ニアにクロス→ユーリ跳び込むも合わず→その奥で高橋利がヘッドと、電光石火的に繋げたものの枠を捉えられず。
こうした横浜FCの立ち回り(ならびに、普段のルーティーンともいえる福森のセットのゆっくりぶり)により、極端に少なくなるアクチュアリープレイングタイム。
山口も記録上は下位なため、望む所という思惑が絡んだのでしょうが、この日はそれが好循環を齎す事は無く。
ホーム故に攻勢の流れを作りたいのは当然で、31分に一挙3枚替え。
佐藤謙・吉岡・若月→田邉・山本・奥山へと交代。
カードを1枚残した事で、最後はパワープレイで平瀬投入か……と、シンプルに予想し易いものとなった采配。
尚も続けられる横浜FCのセットプレー攻勢でしたが、33分の左CKから、クロスの跳ね返りを拾った室井が奥山に奪われてカウンターに。
そのまま短期突撃で敵陣に切り込んだ所を、戻った山根が反則で阻止して警告と、何とか決定機だけは作らせないという必死な姿勢の横浜FCディフェンス。
そして36分、横浜FCは武田がラストダンスのお役御免となり中村と交代。(同時にカプリーニ→パウロへと交代、山根が左へ回る)
昇格へのレールを保つ、最後の仕事を無事に終えました。
すると山口も直後に平瀬を投入、末永と交代でやはり最前線に。(奥山が右SHに回る)
交代で流れを掴みたかった山口ですが、その後は前進の際にパスミスが目立つなどでロクに攻撃機会を掴めず。
その隙を突きたいといった横浜FCですが、無理に攻め上がる事はせず。
こうした、ややもすると低次元なぶつかり合いにより、極端に好機が減る流れで終盤に突入しました。
その最中に高橋利が足を攣らせた事で、最後の交代を敢行する横浜FCベンチ。(高橋利→伊藤、44分)
得点への期待は一向に膨らまずも、時間が押し迫った事で昇格への雰囲気は高まりを見せ。
それを阻止せんとする山口、ロングパス→平瀬落としという強引な手法を経て、アディショナルタイムに攻勢を掛けんとします。
それでも目立つのは相田のロングスローと、後方からのフィードのみ。
完全にアバウトな姿勢へと全振りになり、横浜FCもミス無く跳ね返せばいいというATに。
そして最後の山口の中盤からのFK、キッカー新保が平瀬を狙ったボールをクリア。
次の瞬間、試合終了を告げる笛が鳴り響き。
引き分けで勝ち点1を得た結果、横浜FCが念願の昇格へと辿り着きました。
その姿は苦しかったという一言が良く似合いますが、シーズン通して貫いた堅守が、最後の最後で最大の武器となったのも確かであり。
2年ぶりのJ1で、その時のメンバーも多く残る中、今度こそリベンジを果たせるか注目となるでしょう。
この終盤の失速ぶりでフロントがまた「これではJ1は戦えない」と乱心を起さなければ良いが
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