※前回の藤枝の記事はこちら(22節・群馬戦、2-1)
※前回の山形の記事はこちら(24節・いわき戦、1-2)
<藤枝スタメン> ※()内は前節のスタメン
- DAZNでのフォーメーションは、矢村・千葉寛の2トップかつ梶川をトップ下とした3-4-1-2。
- 千葉寛が清水から育成型レンタルで加入し、23節(水戸戦、3-1)から登録されて途中出場、中断明けの25節(鹿児島戦、3-2)からスタメンに定着。
- 世瀬がJ3・鳥取から完全移籍で加入し、25節から登録されて途中出場、前節(山口戦、3-0)からスタメンに定着。
- モヨマルコム強志が長崎から育成型レンタルで加入し、前節から登録されて途中出場。
- 中島がレンタル先変更という形で水戸に移籍(レンタル元はJ1・札幌)となり、25節をもって登録抹消。
- 小笠原がJ3・相模原へレンタル移籍となり(以下同文)
- 水野がJ3・岐阜へレンタル移籍となり(以下同文)
- 西矢がJ1・鳥栖へ完全移籍となり(以下同文)
- 天皇杯3回戦(鹿島戦、1-2)で負傷交代したアンデルソンの詳細が発表され、全治約6週間との事。
- 河本(AIE国際高)の来季加入が内定し、後日特別指定選手となり25節から登録され、26節(甲府戦、0-3)途中交代で初出場。
- 中村(札幌大)の来季加入が内定し、後日特別指定選手となり前節から登録される。
<山形スタメン>
- 土居がJ1・鹿島から完全移籍で加入し、25節(岡山戦、1-1)から登録されて即スタメン出場。
- 城和が群馬から完全移籍で加入し、前節(長崎戦、4-2)から登録されて途中出場。
- 阿部がJFL・ブリオベッカ浦安へ育成型レンタル移籍となり、25節をもって登録抹消。
- 杉山がレンタル先変更という形で千葉に移籍(レンタル元はJ1・ガンバ)となり(以下同文)
- レンタル移籍(ブラジル・CRアトレティコ・カタラーノへ)していた荒川が、JFL・ヴィアティン三重へ再度レンタル移籍。
- 吉田の負傷が発表され、8/10に発生して全治約8週間との事。
2点以上取れれば勝ち、そうでなければ負け、という流れがハッキリして来た最近の藤枝。
3得点で勝利→無得点で敗戦のサイクルを5試合も保てばそう思わされるのは当然で、この分だとこの日は無得点となる予想が立ってしまい。
それを覆したいのは当然ですが、同時に残留争いという観点では、この1勝1敗ペース(2試合で勝ち点3)を保つだけで安全圏が確保されるため外野からは「このままで良いか」とつい思ってしまうものであり。
現在の藤枝もそれに伴い、降格圏とはかなり差が生まれました。(18位・栃木との差は11)
そんな藤枝と勝ち点が並んでいる山形は、開幕前に優勝が目標とぶち上げただけあり、全く満足できないのが現状でしょう。
そして浮上すべき秘策として、鹿島から土居の獲得と一念発起ぶりが炸裂した夏の移籍期間。
地元出身とはいえ、鹿島でワンクラブマンの道を歩んでいた選手の加入というビッグニュースに歓喜の声が上がらない訳が無く。
徳島の岩尾加入の件然り、物語性の担保は後方から追いかける立場のクラブにとって非常に重要な武器となり得るものであり。
J2である以上補強策も限度があり、選手を増やしてもその効果はいささか不透明なため、理論値とは一線を成す要素であるものの最後はそれが有難がられるのは必然。
加入した土居はデビュー戦で早速ゴールを挙げるなど、上昇機運を齎す存在になったとあればそんなオカルトじみた要素も信憑性が生まれるものです。
強化部も物語を完結するため、群馬のキャプテンだった城和を獲得と強引な引き抜きも敢行するなど、前を向く体制を緩める事は無く。
かくして中断明け以降無敗を保っている山形ですが、昇格争いのためには勝ち続けない状況なのは変わらず。
早速の前半1分に、右サイドでスルーパスに走り込んだイサカのクロスを、ニアでフリック気味に合わせヘディングシュートを放った土居。(枠外)
システム的には、イサカとは逆の左ウイングである國分が肝で、純正サイドアタッカーでは無い彼が中央寄りになるという流動性を絡めた攻めのシステムと化しており。
一方の藤枝も、通常の3-4-2-1とは一線を成すシステム。
守備時は矢村・千葉寛の2人が最前線となって前線から果敢な守備体制を採る状況が多く。
しかし攻撃時には、梶川が降りてボールを受ける事で2トップ化するという具合に、同じ3-5-2でも「2トップ化」か「3ボランチ化」かの違いと言うべきでしょうか。
そんな可変システムを採るも、根幹をなす部分は変わらず。
つまりは前に出てボールに触れるGK北村をスタートとする、最終ラインが幅広く距離感を取ってのビルドアップ。
これにより、主に右ワイドに開く久富により大曽根がハーフレーンに絞る立ち位置がメインとなりました。
入りの山形ペースも直ぐに途切れ、こうしたシステムによるボール保持の体勢に入る藤枝。
しかし10分、新井のエリア内へのスルーパスが通らず攻撃終了となると、山形はGK後藤雅のスローから素早く攻めに入りカウンターに。
左へ展開ののち山田がスルーパス、走り込んだディサロのクロスで鋭く裏を突く攻撃、イサカがこれを足で合わせて完遂させるもののシュートはゴール右へと外れて先制ならず。
この山形の鋭い槍に苦闘の色を隠せず、13分には國分とディサロのワンツーに対しアフターチャージでディサロを倒してしまった新井が警告を受け。
これによる左サイドのフリーキックから、放り込みと見せかけてパス交換から左ポケットへスルーパスを送ったキッカー國分。
走り込んだディサロがクロス気味にシュートを狙ったもののこれも(中央に西村が走り込むも合わずに)ゴール右へと外れ。
一方の藤枝も、20分に矢村が縦パスを受けた所西村に倒されて反則、左サイド遠目からのFKを得。
キッカー梶川はここから放り込みと見せかけて同サイドへスルーパスと山形と類似する立ち回り、走り込んだシマブクのクロスと変化を付けます。(その後逆サイドに流れ、久富のクロスの跳ね返りを梶川がミドルシュート・枠外)
山形の攻撃に苦労しながらも、立ち回りで互角に渡り合う姿勢を保つ。
そんな藤枝の様相でしたが、それを揺るがす事件が27分に発生します。
自陣で反則を受けた山形、素早いリスタートを選択して高江が一気にダイレクトで最終ライン裏へロングパス。
そこには判断良く抜け出していた山田が居り、そのままワントラップでエリア内を窺うという所で、追いすがった大曽根が後ろから倒してしまい。
反則を告げる笛が甲高く鳴り響くと、すかさず大曽根に対し突き付けられたカードは退場を告げる赤色のもの。
辛うじてエリア手前という位置でPK献上は避けられたものの、決定機阻止による一発退場で大曽根がピッチを後にする事を余儀なくされてしまいました。
試合が止まった瞬間という、気を抜き易いものの抜いてはいけない場面を突かれる格好となり。
思い出すのが前年の開始12秒で山原が退場となった試合(28節・仙台戦、1-1)ですが、そのリスクが常時付いて回るのは避けられないのか。
ともかく、PKでは無いもののエリアからすぐ手前という位置での直接FKとなった山形。
横軸は左ハーフレーンなため、右足即ち國分が蹴るという選択をすると、放たれたシュートは壁を越えてゴール左を襲い。
しかしポストを叩いて跳ね返り、尚もイサカがエリア内で拾うも撃てずに終わります。
これによりスコアレスのままで10vs11での戦いに突入し、藤枝は久富・シマブクをサイドバックにした4バックへシフト。
前線は相変わらず矢村・千葉が「1.5トップ」といった流動性を取るも、基本的には4-4-1で凌ぐ体勢となり。
34分(GK以外)全員敵陣に入り込んで攻める山形、左サイドで奥へ切り込むと見せかけ、土居のレイオフを受けた山田の手前からのクロス。
角度を付けて上げられたこのボールを、ファーでディサロが綺麗に合わせて右サイドネットを揺らしたものの、角度が付いた故のオフサイド判定に引っ掛かってノーゴール。
防戦を強いられる藤枝は、こうした危機一髪のシーンを凌ぎながらも、チームスタイル的に何処かで押し返したいのは明らか。
39分にそのチャンスが訪れ、梶川が最終ラインに降りての組み立てと見せかけ、GK北村は前に位置を変えた世瀬をターゲットとしたフィード。
彼の落としから素早く前進に入り、縦パスを受けた矢村が前を向くものの、小西のプレスバックで倒されて奪われ。
反則無しどころか山形のカウンターを招いた(右ハーフレーンから土居がクロス気味にシュート・枠外)事で、先程の退場と相成って主審に猛反発を見せる藤枝サイド。
起こった一悶着の末に須藤大輔監督が警告を受ける、憚らずもピッチ内で異議を飛ばさんとしていた梶川への被害を請け負う形となりました。
その後自陣での繋ぎでのミスを拾われての危機(42分、國分の左ポケットからのクロスがゴールに向かうもGK北村キャッチ)など、判定への苛立ちが悪影響を呼び込んでしまう藤枝。
この流れのうちに決めたい山形はアディショナルタイム、最終ラインから距離感の長いパスでサイドを変えながら地上での前進。
そして川井のスルーパスに走り込んだイサカが右からクロス、グラウンダーでGKとDFの間を突いたこのボールに、ニアで土居が跳び込むも合わずに流れたボールをGK北村が脚でクリアの形で跳ね返し。
最後方の奮闘でゴールは割らせずに、何とかスコアレスのまま前半を終わらせた藤枝。
ハーフタイムでの交代は行わず、出来るだけ主力を引っ張る選択をした藤枝・須藤監督。
始まった後半戦、1人1人がより頑張らなければこの不利を打開できないのは当然であり。
後半3分、例によって前に出たGK北村から攻撃を始める藤枝、山原・中川創の両CBもGKを中央にして大きく開いてパスを受ける体勢を採り。
ここからパスワークでの前進の末、新井の右ポケットへのミドルパスに走り込んだ久富がマイナスのクロスに辿り着き。
最後方に伴いSBも押し上げられるその体制はまさにリスキーですが、こうでもしなければゴールに辿り着けないのも確か。
直後の4分、山形のGKからのビルドアップに対し2トップが追い掛け続けると、GK後藤雅のパスミスを生んでショートカウンターの絶好機が訪れ。
左サイド深めで拾った梶川から、パスを受けたシマブクがカットインを経て中央からシュートを放つも、右へ大きく逸れてしまい(タッチを割る)モノに出来ません。
その藤枝の体制に度肝を抜かれる格好となった山形。
しかし冷静さを取り戻し、藤枝2トップの間に位置取るボランチ(主に小西)からの組み立てを冴え渡らせ、ペースを取り返します。
6分にはその位置でパスを受けた小西が左に大きく展開するロングパスでビルドアップ成功、その後クロス→跳ね返しを経て右からイサカのクロス。
これをファーで土居が胸で収め、すかさずボレーシュートを放ったもののふかしてしまい決められず。
続く8分には逆手に取った、左サイドに開いた高江からの前進と、藤枝に的を絞らせずに攻撃権を支配します。
ラインアウトが精一杯となる藤枝ディフェンスの前に、量産されるセットプレーからもゴールを狙う山形。
11分にコーナーキックからの二次攻撃、左サイド奥でディサロのスルーパスに走り込んだ國分がクロス、低いボールでニアを突いた所を川井が合わせ。
山原が眼前でブロックするも、脇にこぼれたボールを拾い直し再度シュートした川井、しかしこれもふかしてしまい決定機を逃し。
13分にも左CKから、キッカー國分のクロスを直接安部がヘディングシュートに持っていき、GK北村が横っ飛びでセーブするも尚も繋ぐ山形。
そして右手前からのクロスを再度合わせた安部ですが、このヘディングシュートもゴール上へ僅かに外れ。
膨らむ決定機に、何とか凌ぐ藤枝も決壊は避けられない運命となってしまったか。
15分、右サイドで西村・川井・イサカのローテーションでのパス回しから、裏へのミドルパスに高江が走り込むという崩し。
これは遮断した藤枝ですが、こぼれたボールを拾わんとした新井と高江が交錯すると、笛は鳴らずに継続となった結果拾ったディサロがゴールに迫り。
そして土居とのワンツーを経て右ポケットからシュートが放たれると、左ポスト内側を叩いてゴールへ吸い込まれ。
押し込み続けた末に、待望のレレマスク先制点に辿り着いた山形。
一方藤枝サイドはここでも反則を巡って異議を飛ばすも、覆るどころか梶川への警告という余分な被害を受けるのみに終わり。
意気消沈しかねない流れで、19分には自陣でのプレス回避がままならずディサロに奪われる危機となり。(前に出ていたGK北村がクリアして凌ぐ)
これを変えたのが交代選手で、22分に久富・梶川→モヨマルコム・浅倉へと2枚替え。
新戦力のモヨマルコムが、その身体能力を活かしたプレーでチームに再度前向きのベクトルを齎します。
右サイドを強引なドリブルで突破し、前に出てのターゲットにもなれ、ロングスローも会得しているという八面六臂の活躍。
その圧力にさしもの山形サイドも委縮せざるを得ず。
23分にはディサロのポストプレイがズレた所を千葉が拾ってショートカウンター、矢村のミドルシュートがゴールを襲うもGK後藤雅がセーブ。
一気に塗り替えられた試合絵図に、ベンチも25分に土居・國分→藤本・氣田へ2枚替えを敢行(ディサロ・藤本が2トップの4-4-2へシフト)したものの流れを取り戻せません。
その後もモヨマルコムのドリブルやロングボールのフリックに苦しめられ、26分にはそのモヨマルコムのクロスをブロックした山田が足を攣らせてしまい。
直後の藤枝のCKの攻めが途切れた(クロスのこぼれを浅倉がシュート・枠外)所で倒れ込んだ山田、担架で運ばれて交代となり。
城和が投入され、安部が左SBに移る事で穴埋めを図ります。
31分にようやく、藤枝がモヨマルコムのロングスローという局面から、クリアボールを高江が拾い持ち運んだ事でカウンターの好機が訪れた山形。
スルーパスを受けたイサカが右ポケットから低いクロスを送るも、中央に走り込む藤本の手前で、戻ったモヨマルコムがクリアと何とか凌いだ藤枝。
数的不利により忘れられていた「『超攻撃的』の裏を突かれる事での危機」が蘇るも、形振り構っている余裕は何処にも無く。
33分にさらに動き、新井→カルリーニョスへと交代します。
(山形も直後にイサカ・ディサロ→横山・南へと2枚替え、再度1トップに)
35分にパスワークで攻め込む藤枝、エリア手前でパスを受けた千葉が安部にチャージされながらもボールキープし、そのまま強引に右奥へと切り込み。
それでも引っ張り続けた安部により倒されると反則・警告となり、このエリアラインすぐ脇からのFKで、キッカー・シマブクはグラウンダーでマイナスのクロスと変化を付け。
矢村のスルーを経て千葉がシュート、と意表を突きに掛かるも山形ディフェンスは釣られずに対応した結果不発に終わります。
その後山形も、マイボールの際は保持を重視(38分のカウンターチャンスでは戻して作り直しを選択)し落ち着きを図り。
その結果、藤枝の溜め込んでいた不満も原因か反則塗れという流れにもなり、42分に城和が・45分にモヨマルコムが警告と双方被害も膨らみます。
前半からカードが出やすい展開に突入していた側面もあり、ある程度は仕方無く。
齎されるFKから、42分に安部がヘディングシュートを放つ(ゴール右へ外れる)という具合に尚もスコアを動かす余地は見られ。
ATに突入し、山形は小西が左ウイングバックを務める、5バックシステム(3-4-2-1)へと布陣変更。
しかしその後敵陣でボール保持する局面になると、左から氣田がカットインでポケットを急襲、そのままシュート。
GK北村がセーブした跳ね返りを、さらに横山が詰めてシュートしますがこれも右ポストに当たり、跳ね返りが中川創に当たるも左ゴールへと逸れる決定機逸に。
結局追加点は得る事が出来なかった山形、1点差を逃げきる体制へと移り。
数的不利はどうしようも無い藤枝。
交代の駒による優位性も薄れていき、結局最終盤はFKによる放り込みしか出来る事が無くなるに至りました。
目安6分のATを凌ぎきった山形が、0-1のまま勝利に辿り着き。
完勝とは言い難い数的優位での戦いでしたが、シーズン序盤から渡邉晋監督が連呼して来た「どんな形でも勝利する事がまず大事」という精神が、ようやく本当の意味で重要となる局面。
そしてその通りに勝ち点3を積み重ねた事で、逆転への体制は整えられたか……を考えるより、貪欲に目の前の勝ちを拾いにいく事でしょう。
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