<両軍スタメン>
- コイントスでコートチェンジ。
- 長野のフォーメーションは、DAZNの予想では三田・藤森がインサイドハーフとなっての3-1-5-1というもの。
- アウェイ・栃木Cのカラーは、白+ピンクとホーム色は全く無いもの。
長野ベンチメンバー=田尻(GK) 大野 石井 樋口 吉田桂介 藤川 安藤 古賀 浮田
栃木Cベンチメンバー=原田(GK) カルロス・エドゥアルド 奥井 森 岡庭 表原 加藤丈 藤原 東川
念願叶い、今季からJリーグでの戦いをスタートさせた栃木シティ。(以下栃木C)
近年、何度も地域サッカーチャンピオンズリーグの壁に阻まれていただけに、歴史的な一歩となる1年なのは言うまでも無く。
同じ昇格クラブ(JFL→Jリーグは厳密には昇格では無いが便宜上こう表記する)の高知とは一線を成した編成で、「元Jリーガー」が中心となって掴んだ昇格。
スタメンの顔ぶれを見ても、一時選手生命が危ぶまれながらも再起を果たしたGK相澤。
Jリーガーで無くなってもSNSで常に前向き思考を貫いてきた田中パウロ淳一(以下パウロ)など、ドラマティックな顔ぶれが並び。
そして今季を戦うに辺り、セレッソで主力中の主力であったヨニッチを獲得と、戦力・ネームバリューはJリーグ初年度とは思えない程にまでなったでしょうか。
この日のセンターフォワードの平岡は、対戦相手の長野でプロ入りしたものの、退団後実に9年かけて再度Jリーグ出場を果たしたという具合にドラマティックの極みぶりを描く存在に。
アウェイ感の強い、長野のホーム(長野Uスタジアム)での一戦となったこの日。
早速の前半2分、平岡のプレスバックによるボール奪取からショートカウンターを見せる栃木C。
古巣対戦に燃える平岡とともに、この試合の基本的展開の幕開けとなるシーンが生まれます。
その基本というのは一重に、長野のボール保持に対するハイプレス+ショートカウンターであり。
今季から藤本主税監督(前年まで熊本のコーチ)が就任した長野は、同氏の下、J2・熊本と類似したフォーメーションに変更して臨むもまだ日が浅く。
ウイングバック(右)にゲームメーカータイプの長谷川を配置し、彼を軸にした可変が行われる保持時。
つまりは彼が熊本における豊田のように内側へと搾る意識が強く出るも、一向に前進出来ない状況を受け、最終ラインに吸収される絵図となり。
そして行徳が前に出るという具合に、ビルドアップで苦しむなりの工夫は見られたもののそれだけという感じ。
大木武氏が熊本で操るシステムを他チームでも導入するも、「仏作って魂入れず」の感が拭えないというのが全体の印象でした。
かくして、労せずして自分達のサッカーを大いに展開できる一戦と化した栃木C。
4分に前に出た鈴木裕が縦パスをカットすると、そのままパス&ゴーで鈴木国のスルーパスに走り込んで奥からクロス。
そして平岡のヘディングシュート(枠外)と、小気味良く縦に速い攻めを徹底します。
放送席の談では、藤本監督は「ロングボール中心の攻めを封じる」という旨の発言をしていたとの事。
しかし栃木Cの主体的な攻撃は、パワーサッカーにありがちなロングボール一辺倒という訳では無く。(あくまでこの日の印象のみ)
GK相澤も積極的に最終ラインでの保持に加わり、両センターバックがワイドに開いて地上で繋ぐという根底の姿勢を見せるという具合に、守備面でも読み違いによるズレが深刻であった長野。
ロングボールの出し所を防ぐべくのプレッシングを、それにより剥がされた上で空いたスペース、特に左サイド(栃木Cから見て右サイド)を何度も抉られる事で立ち上がりから劣勢に陥る事となりました。
攻撃も守備もままならずでは、決壊は必然であった長野。
パスミスによるショートカウンターが圧倒的に目立ち、7分にパウロのパスカットから素早く左ポケットを突き、平岡のクロスをファーサイドで関野がヘディングシュート。(GK松原セーブ)
止むを得ずGKからのロングフィードに切り替えても、11分にそのフィードの跳ね返しから、関野スルーパス→鈴木国エリア内からシュート(GK松原セーブ)とフィニッシュに持ち込まれる状況を変えられず。
そして12分、またもミドルパスをカットした宇都木から手数を掛けずに攻める栃木C。
すかさず送られた緩い縦パスを土佐がフリックと、搦め手でエリア内へ送った事で抜け出しに成功しシュートしたのはまたも鈴木国。
ゴールネットを揺らし、圧倒的な圧力をとうとう得点に結び付けリードを奪いました。
スコアが動いたのちも、そんな展開を一向に変えられない長野。
そうなると張り切るのは古巣相手に良い所を見せたい平岡ですが、その思いは若干空回り気味。
17分に長野のプレッシングを受けながらの繋ぎで、右サイドでの1タッチパスの連続で剥がしたのち関野のスルーパスが左ポケットへ。
そして走り込んだパウロのクロスが上がり、合わせにいった平岡の前でクリアも、中途半端に浮いたボールをバイシクルで再度撃ちにいった平岡。
しかし結果は、田中康の頭部にチャージする結果となってしまい反則、警告を受けるのみに終わってしまい。
20分にも鈴木国低いクロス→ニアで関野スルーを経て決定機が訪れた平岡ですが、これもディフェンスと縺れ撃てずと、そう簡単に巧くはいかず。
24分左サイドで砂森・田中康の連係でプレッシングを剥がし、ようやくこの日初というべき好機を作る長野。
山中が長距離をドリブルして左奥に持ち込み、ポケットへのショートパス→伊藤のキープを経て藤森がクロスとボックス内を脅かすもフィニッシュには繋がらず。
散々ビルドアップに苦労しても、その成果は一向に報われません。
むしろ栃木Cの単純明快なビルドアップが、再三有効打に繋がる事数多。
前述の最終ラインの形により、サイドバックも高い位置を取る意識が旺盛であり(そのおかげで両ウイングも逆サイドに張り出すなど流動的に)、下手に細かく繋ぐよりもよっぽど効果的な感がありました。
そして29分、追加点に辿り着く栃木C。
ヨニッチが右ワイドから低いロングパス、中央の関野を経由し逆サイドで上がっていた乾に渡るという具合に対角線での前進をあっさり果たし。
奥を突いた乾が上げたクロスから、ファーで鈴木国足で折り返し→土佐シュートと、流れるように仕留めます。
早くも2点差と、大幅有利な状況に。
流れを変えられない長野。
ここから、左サイドでも田中康が絞り気味となる事が目立ち。
現在熊本がやっているような形(両ウイングバックがIHと化す)に近くする事で、ボランチ回りの流動性を高めに掛かったでしょうか。
それでも奪われる事が減った以上の効果を中々得れず。
好機は35分、栃木Cのロングボールの跳ね返しからで、空中戦を経て敵陣で藤森が収める状況に。
そして逆サイドへの展開を経て長谷川が縦パスを打ち込むと、小西がワントラップでエリア内に進入してシュート。
緩い軌道ながらGK相澤の逆を突く形でゴールインと、綺麗にワンチャンスをモノにした格好で1点を返しました。
これが切欠となったか、36分に行徳縦パス→三田ポストプレイ→長谷川スルーパスで奥を突いてコーナーキックに持ち込むという具合に、可変するもその効果を示せなかった右サイドでも跳梁する長野。
栃木Cは変わらぬ姿勢を貫くも、相変わらず好機を量産する中で何度か危機に晒されるという油断ならない流れに。
40分に抜け出さんとした三田を倒してしまった関野が反則・警告と、受けに回った際の脆さも顔を出し。
しかし44分、今度は平岡のドリブルを田中康が反則で止め、カードこそ出なかったものの栃木Cのセットプレー。
位置は中盤付近なためどんな立ち回りになるかという所で、キッカーパウロは放り込まずに近くの鈴木裕とパス交換。
そしてポケットへのスルーパスで鈴木裕を走らせるという変化を付け、彼のレイオフからシュートに持ち込んだパウロ。(GK松原セーブ)
その後アディショナルタイムに持ち込んだCKでも2本続けた事で、嫌な流れを吹き飛ばすセットプレー攻勢と成り得ました。
そしてそのCKが途切れた所で前半終了を迎え。
共に交代無く迎えた後半スタート。
早速の後半1分に長野が好機を迎えるも、左からの(砂森の)クロスがあろう事か味方の田中康に当たって跳ね返り終了。
それどころかこれが栃木Cのカウンターに直結し、土佐が中央からエリア内に持ち込んでシュート(枠外)と、前半の展開は継続されたかのような絵図を描き。
すると直後の2分にまたも長野のパスミスを拾ってのショートカウンター。(左での繋ぎから逆サイドへ展開、鈴木国がクロス)
そして結び付いた右CKから乾がヘディングシュート(枠外)と、効率よく攻める栃木Cという案の定全く変わらない試合展開。
しかし長野は5分、攻撃が途切れたのちクリアボールを跳ね返すと、栃木Cの前へのベクトルの裏を突いて好機。
右ポケットへの(行徳の)スルーパスに走り込んだ三田から鋭いクロスが入ると、ファーで走り込んだ伊藤が合わせたものの左へと逸れ、突如訪れた決定機もモノに出来ません。
その後試合を落ち着かせに掛かる栃木C。
前半に比べ、最終ラインからのロングボールの割合が増え、長野のハイプレスをいなしてきたクレバーな立ち回りは若干影を潜める格好に。
しかし、「ロングボールの出所を潰す」という当初の長野の狙いは既に雲散霧消しており、大した痛手にはならず時間が経過していきます。
11分に長野ベンチが動き伊藤→浮田へと交代。
本来のストライカーである浮田の投入と、流れを変えに掛かったのは明らかでしたが、それが果たせなかった事で特異なシステムに対応できない感の方が強く。
後半も、田中康が中に絞るという変節をそのまま続行してのビルドアップ。
それにより薄くなった左サイドを前進するシーンは何度か見られましたが、やはり未だ発展途上の感は拭えません。
23分にようやく、自陣深め右サイドでのキープから、栃木Cのゲーゲンプレスを剥がして逆サイドへ展開という「らしい」絵図を作り。
ここは結局好機に繋げられなかったので、序盤にこうしたシーンを量産する事で相手のハイプレスを折るのが勝利のカギなのは言うまでも無い、といった所でしょうか。
一貫した栃木Cの立ち回りですが、21分に土佐も(小西への反則で)警告を受けるなど経験の浅さ故の被害は付いて回り。
こちらもカードを切る段階となり、22分に平岡→東川へと交代します。
再び前向き姿勢という矛を突き出しに掛かる栃木C、24分には裏へのロングパスを受けた東川が田中康に倒されて反則・警告とやり返す格好に。
ここから、押し込む過程で量産していたCKだけでなく、反則によるFKでもセットプレーで脅かしに掛かります。(長野は26分に三田・藤森→藤川・樋口へと2枚替え)
28分には土佐のパスカットから持ち込んだショートカウンターで、またも田中康が反則で止めてしまい。
2枚目が出ても可笑しくない絵図で、それは起こらずも今度は直接狙える位置(中央やや右寄り)でのFKとなります。
そしてパウロが躊躇わずに直接シュートを放ち、壁の左を通すもののGK松原が読み切って正面でキャッチ。
31分に再び栃木Cベンチが動くと、今度は一挙3枚替え。
土佐・関野・鈴木国→加藤丈・表原・森へと交代します。
加藤丈がオーストラリア帰り(本名は加藤カレッティ丈で、二重国籍との事)、表原・森が元Jリーガーと、苦労人が揃ってピッチに登場し。
それでも固定化された流れは変わらず、長野の苦闘は続き。
35分にはまたも、左サイドでロングパスを収めた東川が冨田に反則を受けて(警告)FKに。
今度はワイドからという位置で、直接狙うには厳しい位置。
しかしキッカー表原は、その逆を突くように敢えて直接シュートを選びます。
これがGK松原が際どくセーブする惜しいフィニッシュとなり、何事も逆節を匂わせておくのは大切という事を実感させ。
40分頃から、長野の攻勢を迎えましたがそこは流石に終盤。
最後の意地と言い換えても良く、何とか押し込んで左スローインから好機を重ねるものの決定機には繋がらず。
44分に縦パスを受けた浮田から右へ展開、持ち運んだ安藤(小西と交代で出場・43分)がカットインシュートを放った(枠外)のが最後の好機となりました。
無事やり過ごした栃木C。
ATに突入すると、あくまでパワープレイを見せない長野のビルドアップに対し、再度ボールゲイン連発という流れに突入します。
そして好機の連続ののち持ち込んだカウンターで、東川のラフなロングパスに走り込むパウロ。
彼の手前で防がんとした長野ですが、山中のクリアが逆方向に流れてしまった事で、GK松原の飛び出しの逆を突く格好となりゴールが空っぽに。
そして労せずしてパウロが蹴り込み、3点目と思われましたが、パウロの抜け出しの時点でオフサイドという判定で残念ながらノーゴールに。
止めは刺し損ねましたが、大勢に影響はありませんでした。
長野が最後まで反撃の糸口を掴めぬまま、試合終了を告げる笛が吹かれ。
1点差でしたが、内容的には完勝と言っても良かった栃木C。
目下首位に立っているFC大阪に続き、新興勢力がJ3の秩序全体を崩すといくでしょうか。
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