NASA、ハッブル宇宙望遠鏡の方向決定方法を変更
一連のテストを完了し、選択肢を慎重に検討した後、NASAは、火曜日に、ハッブル宇宙望遠鏡を一つのジャイロスコープのみで運用するように移行する作業が進んでいると発表した。望遠鏡は5月24日にセーフモードに入り、作業が完了するまでそこに留まるが、この変更により、ハッブル宇宙望遠鏡は、観測の大部分に影響を与えずに、この10年間、更に次の10年間、宇宙の秘密を探求し続けることができる。
現在探査機に搭載されている六つのジャイロのうち三つが稼働でき、望遠鏡が向けられる方向を決定および制御するシステムの一部となっている。これまでの6ヶ月間、ある特定のジャイロが誤った測定値を返し、探査機が何度もセーフモードに入り、望遠鏡が地上からの新しい指示を待つ間、科学観測を中断してきた。
この一つのジャイロは「飽和」を経験しており、チームはジャイロの電子機器をリセットして正常な測定値に戻すことに何度も成功してきたが、その結果は一時的なものであり、5月下旬に再び問題が再発した。
NASAは、一貫した科学運用に戻るために、宇宙船を長い間検討してきた新しい運用モードに移行している。ハッブル宇宙望遠鏡は一つのジャイロのみで運用し、他のジャイロは将来の使用のために利用可能にしておくということである。この宇宙船は、2009年の5回目で最後のスペースシャトルサービスミッションによって六つの新しいジャイロが設置された。これまでに、これらのジャイロのうち三つは、現在問題が発生しているジャイロを含めて引き続き稼働しており、チームは引き続き監視を続ける。ハッブル宇宙望遠鏡は、これまで、効率を最大化するために三つのジャイロを使用してきたが、一つのジャイロだけで科学観測を続けることもできる。NASAは、20年以上前に、ハッブル宇宙望遠鏡の寿命を延ばし、三つ以下のジャイロで科学を成功裏に提供できるようにするための方法として、この計画を開発した。ハッブル宇宙望遠鏡は、2005年から2009年にかけて、二つのジャイロモードで運用されていた。2008年には、科学観測の質に影響を及ぼさずに短期間、一つのジャイロ運転が実証された。
今後、一つのジャイロモードで科学観測を続けるが、いくつかの小さな制限が予想される。ハッブルが科学的な目標を捜し固定するのにより多くの時間を必要とする。また、火星よりも近い移動天体を追うこともできないが、これはハッブル宇宙望遠鏡にとっては稀なターゲットである。
この移行には、天文台と地上システムの再構成と、将来計画されている観測への影響の評価が含まれる。チームは、6月中旬までに科学活動を再開する予定である。NASAは、ハッブル宇宙望遠鏡がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や将来のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡など、他の天文台とともに、今後数年間にわたって新しい宇宙の発見を続けると予想している。
1990年に打上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、予想された設計寿命の2倍以上、30年以上にわたって宇宙を観測し続け、最近34周年を迎えた。
<要点>: ハッブル宇宙望遠鏡は、三つのジャイロスコープを同時に使って目標天体に姿勢を合わせてきた。ジャイロは、2009年の最後の保全ミッションで六つを新しく設置したが、既に三つのジャイロは使用不能になっている。残り三つのうちの一つは、これまで何回かトラブルを起こしてきたが、5月下旬再び異常が検出された。
望遠鏡は、効率は落ちるが、一つのジャイロでも運用できるように設計されている。今後は残り二つのジャイロの一つづつを使う運用モードに切り替えられる。
なお、2003年のスペースシャトルコロンビアの事故の詳細検討の結果、以降のハッブル宇宙望遠鏡の保全は行わないことに決定されている。
<ひとこと>: 大判はイメージをクリック(タップ)。ハッブル宇宙望遠鏡の姿勢制御方法の概要は こちら(英語) から。
<出典>: NASA Hubble Mission Team
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