「 満願 」 米澤 穂信
この作者の作品は初めてです。
読者登録している方のブログで、「 追想五断章 」が紹介されていたので本屋さんに探しに行き、無かったので代わりにこの本を買い求めました。
「 夜警 」を読んで、警察小説の短編かと思いましたが、すべてテーマが違い、面白く読めました。
共通しているのは静かな淡々とした怖さ。
ネタバレです。
~~~~~~~~
「 夜警 」 警察官に向かない男が警察官になった悲劇。 殉職した警察官が最後につぶやいた。「 こんなはずじゃなかった。 上手くいったのに。」
「 死人宿 」 昔の恋人を探し出し、会いに行った。 彼女は叔父の旅館を継いでいた。
そこでは、年に1~2人、その旅館に泊まった客が、河原に降り火山ガスの溜まった窪みで自殺をしている。
ゆえに、死人宿と呼ばれていた。 今回も遺書が見つかり、2人で思い留まらせたと思ってほっとしていたら、思ってもみなかったもう1人の客が自殺してしまう。
発見者の男たちは、「 ちくしょう、死人宿め。 これでまた、さどや繁盛するだろうよ 」
「 柘榴 」 その話しぶりに女の誰もが好感を持つ男を美貌で仕留めたが、父は「 あれはだめだ。考え直しなさい 」と反対した。
しかし、その時お腹に子供を宿していて結婚。 夕子と月子が生まれたが、夫はほとんど仕事もせず女たちのところを渡り歩き、家に寄りつかずたまに帰ると金をせびる。
別れを決心したが、夫は親権を渡さないという。
裁判になり、当然子供たちの親権は育てた自分にあると思っていたのに、子供達は父親ひとりにしては可哀想だからと、母親に虐待されていたと嘘をついてまで、父親の方に行ってしまった。
「 万灯 」 会社のため、仕事のためなら殺人もいとわない企業戦士。
バングラディシュの天然ガス採掘を巡り、長老たちから反対派の男を消してくれたら承諾すると言われ、もう1人の日本人森下と協力して車でひき殺した。
しかし、森下は、自責の念にかられ会社を辞め帰国。 事実を公表すると言い出す。 そこで、日本に帰国して森下も殺してしまうが、思わないアクシデントで出国できなくなってしまう。
万灯の前で、私は今、裁きを待っている。
「 関守 」 小田原から3時間。 ひたすら走った山道にぽつりとあるさびれたドライブイン。 お婆さんが一人で経営している。
ライターは、その先のカーブで数年間の間に4台の車が転落して5人の人が死んでいるのをお婆さんに話を聞きに来た。
4台の車ともこの店に立ち寄った後事故を起こしていたことが分かった。
お婆さんの話では一番先に亡くなったのは、娘のどうしようもない暴力夫で、誤って娘が殺してしまい事故に見せかけ解決していたのを、
偶然、歴史を調べに来て、ある証拠に気づきかけた人たちを次々にまた事故に見せかけ殺していたと告白。
ライターの身体も飲んだコーヒーの薬が回りもうほとんど動かない。「 お兄さん、まだ聞こえるかね。そろそろ聞こえんかね。 」
「 満願 」 今は弁護士になった藤井が、学生の頃お世話になった下宿先の奥さんが鵜川妙子。
初めての殺人事件の弁護は彼女の裁判だった。 夫の借金のかたに金貸しに襲われた彼女はとっさに彼を殺してしまった。
3年がかりで控訴審まで進んだが、病気療養中の夫が亡くなったのを知り彼女の希望で控訴を取り下げ刑に服した。
8年の刑。未決拘留分を差し引き5年3か月。 満期釈放で出所の日、事務所を訪ねてくることになった。
なぜ、彼女は夫の死を聞いて控訴を取り下げたのか藤井は考えをめぐらしある結論に達する。 彼女は満願成就を迎えられたのだろうか。
~~~~~~~~
警察官になるテストも警察学校の厳しい訓練も潜り抜けても、警察官には向いていない人がいるのを見抜けないのは致し方ないけれど、こんな人がいるのは怖いことです。
「 柘榴 」の子供は自分たちで背中に傷をつけ合い嘘の証言をする知恵が恐ろしい。 特に、月子に嫉妬する夕子が怖い。
「 万灯 」の会社員は会社のためなら何でもしてしまう。 会社なんて辞めればそれまでなのに、会社が人生のすべてになってしまっている。
でも、家族とローンなどを抱え、生活のために、どの職場でも、みんな、余裕もなくギリギリのところで必死に頑張っているんだろうな。
「 関守 」のおばあさんは許せない! いくら娘、孫の為とはいえ、22歳の学生。31歳の県庁職員。36歳と32歳のカップルを殺してしまって。
彼らたちにも家族がいて、将来もあるのに、何の落ち度もなく殺される理由さえも分からずに。 恐ろしい!
「 満願 」人それぞれ、プライドも守る物も違う。 彼女は家宝を守ろうとして殺人まで犯した。
もっと早くにぐうたら亭主と別れていれば、こんな罪も犯さなくて済んだものを。 残念でならない。
6編とも、激しくはないけれど、じわじわとした恐怖がわいてくる作品でした。
ぽちっと、ひと押しお願いします。
にほんブログ村
ありがとうございます。
この作者の作品は初めてです。
読者登録している方のブログで、「 追想五断章 」が紹介されていたので本屋さんに探しに行き、無かったので代わりにこの本を買い求めました。
「 夜警 」を読んで、警察小説の短編かと思いましたが、すべてテーマが違い、面白く読めました。
共通しているのは静かな淡々とした怖さ。
ネタバレです。
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「 夜警 」 警察官に向かない男が警察官になった悲劇。 殉職した警察官が最後につぶやいた。「 こんなはずじゃなかった。 上手くいったのに。」
「 死人宿 」 昔の恋人を探し出し、会いに行った。 彼女は叔父の旅館を継いでいた。
そこでは、年に1~2人、その旅館に泊まった客が、河原に降り火山ガスの溜まった窪みで自殺をしている。
ゆえに、死人宿と呼ばれていた。 今回も遺書が見つかり、2人で思い留まらせたと思ってほっとしていたら、思ってもみなかったもう1人の客が自殺してしまう。
発見者の男たちは、「 ちくしょう、死人宿め。 これでまた、さどや繁盛するだろうよ 」
「 柘榴 」 その話しぶりに女の誰もが好感を持つ男を美貌で仕留めたが、父は「 あれはだめだ。考え直しなさい 」と反対した。
しかし、その時お腹に子供を宿していて結婚。 夕子と月子が生まれたが、夫はほとんど仕事もせず女たちのところを渡り歩き、家に寄りつかずたまに帰ると金をせびる。
別れを決心したが、夫は親権を渡さないという。
裁判になり、当然子供たちの親権は育てた自分にあると思っていたのに、子供達は父親ひとりにしては可哀想だからと、母親に虐待されていたと嘘をついてまで、父親の方に行ってしまった。
「 万灯 」 会社のため、仕事のためなら殺人もいとわない企業戦士。
バングラディシュの天然ガス採掘を巡り、長老たちから反対派の男を消してくれたら承諾すると言われ、もう1人の日本人森下と協力して車でひき殺した。
しかし、森下は、自責の念にかられ会社を辞め帰国。 事実を公表すると言い出す。 そこで、日本に帰国して森下も殺してしまうが、思わないアクシデントで出国できなくなってしまう。
万灯の前で、私は今、裁きを待っている。
「 関守 」 小田原から3時間。 ひたすら走った山道にぽつりとあるさびれたドライブイン。 お婆さんが一人で経営している。
ライターは、その先のカーブで数年間の間に4台の車が転落して5人の人が死んでいるのをお婆さんに話を聞きに来た。
4台の車ともこの店に立ち寄った後事故を起こしていたことが分かった。
お婆さんの話では一番先に亡くなったのは、娘のどうしようもない暴力夫で、誤って娘が殺してしまい事故に見せかけ解決していたのを、
偶然、歴史を調べに来て、ある証拠に気づきかけた人たちを次々にまた事故に見せかけ殺していたと告白。
ライターの身体も飲んだコーヒーの薬が回りもうほとんど動かない。「 お兄さん、まだ聞こえるかね。そろそろ聞こえんかね。 」
「 満願 」 今は弁護士になった藤井が、学生の頃お世話になった下宿先の奥さんが鵜川妙子。
初めての殺人事件の弁護は彼女の裁判だった。 夫の借金のかたに金貸しに襲われた彼女はとっさに彼を殺してしまった。
3年がかりで控訴審まで進んだが、病気療養中の夫が亡くなったのを知り彼女の希望で控訴を取り下げ刑に服した。
8年の刑。未決拘留分を差し引き5年3か月。 満期釈放で出所の日、事務所を訪ねてくることになった。
なぜ、彼女は夫の死を聞いて控訴を取り下げたのか藤井は考えをめぐらしある結論に達する。 彼女は満願成就を迎えられたのだろうか。
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警察官になるテストも警察学校の厳しい訓練も潜り抜けても、警察官には向いていない人がいるのを見抜けないのは致し方ないけれど、こんな人がいるのは怖いことです。
「 柘榴 」の子供は自分たちで背中に傷をつけ合い嘘の証言をする知恵が恐ろしい。 特に、月子に嫉妬する夕子が怖い。
「 万灯 」の会社員は会社のためなら何でもしてしまう。 会社なんて辞めればそれまでなのに、会社が人生のすべてになってしまっている。
でも、家族とローンなどを抱え、生活のために、どの職場でも、みんな、余裕もなくギリギリのところで必死に頑張っているんだろうな。
「 関守 」のおばあさんは許せない! いくら娘、孫の為とはいえ、22歳の学生。31歳の県庁職員。36歳と32歳のカップルを殺してしまって。
彼らたちにも家族がいて、将来もあるのに、何の落ち度もなく殺される理由さえも分からずに。 恐ろしい!
「 満願 」人それぞれ、プライドも守る物も違う。 彼女は家宝を守ろうとして殺人まで犯した。
もっと早くにぐうたら亭主と別れていれば、こんな罪も犯さなくて済んだものを。 残念でならない。
6編とも、激しくはないけれど、じわじわとした恐怖がわいてくる作品でした。
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ありがとうございます。