ロジャーは信愛なる友人の命を救うため、力の限りの説得を試みました。
しかし、彼女が出した答えは自ら断頭台へ上る事でした。
ロジャーの表情には「これだけ言っても駄目なのか。」と言う悔しさも見てとれましたが、「やっぱり、そうだよな・・・。」と最初から彼女が向かう答えを予想していて、それをひるがえせなかった自分への敗北感の様な物がある気がしました。
彼の中にジェーンの「生」についての言葉は残っておらず、もはや別れの言葉しか言うべき事は無いのです。
「来てくださってありがとう。」
そう言って、ジェーンは初めてロジャーと言葉を交わすきっかけとなった魂についての書”パイドン”を彼に渡します。
お互いに「さようなら。」と言い合って、二人の交わす会話は最期を迎えました。
いよいよジェーン・グレイの処刑の時がやって来ました。
ロジャーと共に、”魂の友人”であり得たブラックバードに「お前、最期まで見ていてね。」とジェーンは声をかけて断頭台へと向かいます。
自分で出した答えに納得したのか、ジェーンはとても落ち着いています。
彼女が処刑台へ立った瞬間、16世紀のジェーン・グレイの処刑される日の処刑場へと客席が瞬時に時空を超えました。
農民達が集まって来ました。
ロジャーも駆けつけます。
観客も、今まさにジェーンが処刑されるその瞬間に居合わせていました。
ジェーン・グレイは最期に英国国民に、この国を愛し、この国の繁栄を望んでいると自分の言葉で伝えます。
「ジェーン・グレイの刑を執行します。」
司祭の声が響きました。
付き添っていたローズが「司祭様、どうか、どうかっ・・・。」と震える声で懇願しますが、処刑台の空気に耐え切れず彼女は気を失ってしまいます。
同じく付き添っていたエレン。ジェーンに目隠しをするように言われ立ち上がりましたが、彼女も卒倒してしまいます。
気を失って倒れたエレンの手から目隠しのための白い布を取ると、ジェーンは司祭に自分で巻いて良いか聞きました。
何も見えなくなってしまったジェーン。両手をさまよわせ、処刑台を探します。
「処刑台はどこですか?」
さまよう彼女の手をとって、司祭が処刑台へと導きました。
何故、こんなことに。
何故、あんなに若く美しい彼女が、こんな「人生の最期」を迎えなくてはならないのか。
あまりにも惨い、胸の奥が激しく痛むような光景です。
もう泣いたり怖がったりしないジェーン。自分が信ずる神のそばへ行く事を心に決めました。
ゆっくりと首を処刑台へと預けます。
処刑人の持つ斧が無情にも振り下ろされ、9日間英国女王の座についた16歳の女の子の生涯が閉ざされました。
まるで綺麗に咲いていた花が、一瞬にして散ってしまった様に。
つづく。
しかし、彼女が出した答えは自ら断頭台へ上る事でした。
ロジャーの表情には「これだけ言っても駄目なのか。」と言う悔しさも見てとれましたが、「やっぱり、そうだよな・・・。」と最初から彼女が向かう答えを予想していて、それをひるがえせなかった自分への敗北感の様な物がある気がしました。
彼の中にジェーンの「生」についての言葉は残っておらず、もはや別れの言葉しか言うべき事は無いのです。
「来てくださってありがとう。」
そう言って、ジェーンは初めてロジャーと言葉を交わすきっかけとなった魂についての書”パイドン”を彼に渡します。
お互いに「さようなら。」と言い合って、二人の交わす会話は最期を迎えました。
いよいよジェーン・グレイの処刑の時がやって来ました。
ロジャーと共に、”魂の友人”であり得たブラックバードに「お前、最期まで見ていてね。」とジェーンは声をかけて断頭台へと向かいます。
自分で出した答えに納得したのか、ジェーンはとても落ち着いています。
彼女が処刑台へ立った瞬間、16世紀のジェーン・グレイの処刑される日の処刑場へと客席が瞬時に時空を超えました。
農民達が集まって来ました。
ロジャーも駆けつけます。
観客も、今まさにジェーンが処刑されるその瞬間に居合わせていました。
ジェーン・グレイは最期に英国国民に、この国を愛し、この国の繁栄を望んでいると自分の言葉で伝えます。
「ジェーン・グレイの刑を執行します。」
司祭の声が響きました。
付き添っていたローズが「司祭様、どうか、どうかっ・・・。」と震える声で懇願しますが、処刑台の空気に耐え切れず彼女は気を失ってしまいます。
同じく付き添っていたエレン。ジェーンに目隠しをするように言われ立ち上がりましたが、彼女も卒倒してしまいます。
気を失って倒れたエレンの手から目隠しのための白い布を取ると、ジェーンは司祭に自分で巻いて良いか聞きました。
何も見えなくなってしまったジェーン。両手をさまよわせ、処刑台を探します。
「処刑台はどこですか?」
さまよう彼女の手をとって、司祭が処刑台へと導きました。
何故、こんなことに。
何故、あんなに若く美しい彼女が、こんな「人生の最期」を迎えなくてはならないのか。
あまりにも惨い、胸の奥が激しく痛むような光景です。
もう泣いたり怖がったりしないジェーン。自分が信ずる神のそばへ行く事を心に決めました。
ゆっくりと首を処刑台へと預けます。
処刑人の持つ斧が無情にも振り下ろされ、9日間英国女王の座についた16歳の女の子の生涯が閉ざされました。
まるで綺麗に咲いていた花が、一瞬にして散ってしまった様に。
つづく。