> 今回のテーマは,『「個人VS共同体」または「個人VS国家」の相克』じゃな
> かったでしたっけ…?
そうです,題材としては,小沢さんの「政治とカネ」問題を考えてみようかと。。。
> 何でタイトルに『24』のジャックが出てくるの…?
> ジャックはヒーローなんだから,正義の味方に決ってんじゃん!
それは,視聴者の目線で観た「ジャック・バウアー像」の事でしょう?
最初から,「主人公=正義の味方」との先入観で観ている。。。
でも,ドラマ内での彼は,捜査官として常に行為の正当性を問われる立場です。
実際『シーズン7』では,ジャックの過激な訊問方法が人権侵害であるとして,
米公聴会での審査にかけられていますよ!
▼ジャック・バウアーは『こんな人』(24シーズン6 TVCM集)
> 成程,人権問題は確かに「個人VS国家」を考える上で,核心的な要素ですね。
> でも,ジャックがテロリストに対して「過激な訊問」を躊躇わないのは,そ
> の背後に,大量破壊兵器から人命を守る事への使命感が在るからですよ!
つまり,大勢の人命を守るためには,テロリスト一人の命などどうでも構わな
い訳ですかね…??
> 「どうでも構わない」訳では無いにせよ,「致し方ない事」かと思いますが?
では題材を,太平洋戦争時代の日本の話に移しましょうか。
沖縄戦の戦場では,米軍の追撃から逃れて,多くの民間人が軍人と伴に洞窟内
に潜む生活を余儀なくされたと伝えられています。
この時に,例えば米軍に悟られない様に,洞窟内で大勢の人が声を潜めて隠れ
て居る状況下で,一人の赤ん坊が大声で泣き出したと仮定しましょう。
集団のリーダーである日本軍将校として,あなたはこの赤ん坊をどの様に処置
しますか?
> えっ,き…厳しい状況ですねぇ…
> 取敢えず,「親に黙らせる様に命令する」とか…ですかね?
昔,私は考えた末に,「その選択」が最も残酷であるかもしれないと想いました。
もし,赤ん坊を手に懸けなければならないのだとしたら,むしろ集団の責任者
である自分自身で行う方が,倫理的にも善いのではないのか…と。
しかし,親にとって,そちらの方がもっと「無念」であるならば,私は誤って
いるかもしれません…実際,未だに答えが判らないままなんです。
おそらく,現在の日本の医療や介護の現場では,これに似た心情風景の場面が
多々在るのだと想いますよ。。。
医療予算の削減に努める厚生労働省の官僚も,同様の道徳的ジレンマを感じて
いるかもしれませんし。。。
少し判りやすく例を変えて,自分の赤ん坊が伝染性の奇病で,周囲の村人から
「迷惑なので殺せ」と脅迫されている状況を想像してみて下さい…
> …わ,解りましたよ,Bro…
> 事,人命に関しては,数の論理で善悪の判断ができないと言いたい訳ですね!
> 一人の命も,大勢の命も,同等に尊いのだと。。。
いえ…私の意見は,少しだけ違います。。。
実際,日本の村社会を含め,昔の共同体では「生贄」や「犠牲」を公然と求め
る野蛮な習慣が世界中に在った訳です。
つまり,共同体のルールや道徳性には,本来,この様な残酷で暴力的な側面が
存在するのだ,と云う事を確認しておきたかったのです。
今「野蛮」と書きましたが,元来は感情的と言うより,「冷徹な経験と理性」
に由来するルールだったのではないかと,私は思うのです。
> 「生贄」が理性的ですかぁ…?
元々は人命を犠牲にしてきた慣習を改めて,羊や豚などを「生贄」として神に
奉げる様に進歩した訳ですから,感情的と同時に,「理性的」な判断でしょう?
> 「人権尊重」の歴史ですね。。。
> 近現代に至って,ようやく「犠牲の強要」自体をタブー視する処まで社会が
> 進化して来た訳ですね…そうすると!
何にせよ,国家や共同体が持つ,この様な「暴力的な」側面を忘れてはいけま
せん。。。これこそが,「人権尊重」の本質を知る第一歩です!
> そう言えば,かつての官房長官が国会で「暴力装置」と発言した問題があり
> ましたけど…
昔,「革命を志したほど自由な理性の持ち主」には,国家権力が「暴力装置」と
認識されても,それなりの理由が在る訳ですよ。
勿論,国会答弁の場で使用する言葉ではないし,問責されて当然の失態ではあ
りますけどね。
> でも,そうすると,「個人の人権尊重」と「国益や共同体の利益の尊重」との
> 矛盾する場において,一体どちらを優先する事が正義に適うのでしょうか?
日本を含め「民主主義国家」の理念の下では,個人の人権が最大限に尊重され
ている事が必要です。。。
尤もその適用は,ケース・バイ・ケースなのかもしれませんがね…
でも,実際,コミュニティ志向の正義観を考える際に,最も注意するべき点は,
かつて「民主主義 ⇒ 共同体主義,国家主義」へと転化した歴史において,い
つの間にか「全体主義思想」へと変化した事実ですよね!
▼白熱教室@JAPAN
> 確かに,ヒトラーのナチスを生んだのは,ワイマール共和国の先進的な民主
> 主義でした。。。
レーニンのロシア革命は,民主化を求める民衆の暴力の中から生まれたし,毛
沢東の中共建国は,日本軍を利用した「夷を以て自国を制する」漁夫の利戦略
によって巧みに達成されました。
何れのケースでも共通している事は,ナショナリズムの団結力を巧みに利用し
ていた点だと思います。
あとは,ナショナリズムを結集させる上で,情報戦略が重要だった事ですか…
「ナショナリズム=正義」と,盲信させる事に成功していましたよね。
> その様に考えると,「民衆共同体の暴力」って怖いですよね!
> マイケル・サンデル教授が著書に書いていますが,古代ローマでは,コロセ
> ウムでキリスト教徒をライオンに投げ与え,庶民の娯楽にしてたそうです!
> 思想・信条の自由を含め,「個人主義の理念」の大切さが改めて身に沁みる。。。
> で,小沢さんの「政治とカネ」問題については,Broはどの様に感じているの
> ですか…?
法的な面は,裁判所が決着をつけるでしょうがね…
政治家としての,説明責任を充分に果たしていない点が問題ですよね…!
> 過去に自分自身で設置を取り纏めた「政倫審」にも出席していない訳ですよ!
> 野党や菅内閣だけでなく,国民だって大迷惑していますよ!
今回,「推定無罪」が予想される中での,異例の「強制起訴」ですからね…
本人は,「被告人の人権の尊重」を世間に主張しているつもりだと想うのです。
> なるほど…
> 「迷惑だ」と云う理由だけで罪のない人々を社会的に排除して来た,日本的
> 村社会の「いじめ」への抵抗ですか!
> 拗れる原因は,逆に日本における人権擁護思想が健在だと云う証拠ですね!
> でも,やはり「政治家」ですからね…「説明責任」ぐらい果たさないと…
ですよね。。。
「政治哲学理論」はともかく,現実社会での「正義」は「力」ですか…やはり?
▼『24ファイナル・シーズン』TVスポット(ジャックの悪あがき 演歌篇)