NEWS ポストセブン 3/17(金) 11:00配信 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170317-00000010-pseven-soci
清水富美加(22才)の出家騒動がさめやらぬ中、乃木坂46の橋本奈々未(24才)に続き堀北真希(28才)が引退を発表した。その前も江角マキコ(50才)、成宮寛貴(34才)が電撃引退を発表し、大きなニュースとなった。また、井上真央(30才)、水川あさみ(33才)ら人気女優らが相次いで古巣の所属事務所から独立したことも芸能ニュースを賑わせた。
引退した人も、独立した人も、出家した人も、その理由はそれぞれ異なるが、芸能人の働き方に大きな注目が集まっている。それは私たち、一般社会でも同じ。数年前から「パワハラ」「ブラック企業」への問題意識が高まり、昨年『電通』の女性社員が自殺したことを受け、一層深刻化。プレミアムフライデー導入など、働き方改革が進められている。
その動きは芸能界へも広がりを見せている。昨年11月、厚生労働省労働基準局が、一般社団法人日本芸能マネージメント事業者協会、一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟、協同組合日本俳優連合の3団体に向けて《俳優や歌手等の実演家との契約が「雇用契約」ではなくても、働き方が労働者と同様であると判断された場合、その方は労働者として取り扱われます》との文書を送った。
一般的に芸能事務所が使っているのは『日本音楽事業者協会』が作成している「統一契約書」といわれている。これには芸能人と事務所が互いに対等独立の当事者という認識が記されている。両者は支配従属する雇用関係ではなく「業務委託契約」だ。
多くの芸能トラブルを扱っている『レイ法律事務所』の佐藤大和弁護士が説明する。
「日本にはいろいろな契約形態がありますが、有名なのは『雇用契約』。これは労働者が働いて給与をもらう契約です。『請負契約』は、例えば家をつくる場合、完成した家を渡すなど、完成した仕事の結果に対して、報酬を受け取る契約です。また『委任契約』というのがあり、弁護士のように法律に関する仕事を依頼され、仕事をする契約です。
芸能界の『業務委託契約』とは、これらの契約の性質を含んでいて、その多くは、事務所側がマネジメント業務を行い、仕事をとってくる。そしてタレントはテレビや映画などに出演したり、執筆したり、ライブを行ったりした仕事の報酬の一部を事務所側に渡しますよ、という契約になっています」
今、佐藤弁護士の事務所には、1日に1件は芸能トラブルの相談がきているという。相談の約5割が「今の事務所を辞めたい」「移籍したい」「芸能界を引退したい」。契約の内容、知的財産に関することが3割、残りは起業したいタレントのビジネス問題だ。
「相談の際、契約書を見るのですが、ここが面白いところで、ほとんどのかたが、芸能事務所に入ったら、芸能人になれたと舞い上がって、契約書を読んでいないんです。とにかく売れたいし、仕事が欲しいからそんな契約の話をしたら面倒だと思われることもあるでしょうし、きちんと向き合ってきていないんです。
契約書を読んでいたら、本来は交渉する立場にあるので、こういった仕事はやりたくないとか、報酬を上げてほしいとか、内容の交渉ができるはずなんですけどね。ただそこに知識もなければ、慣習もない」(佐藤弁護士)
芸能人と事務所がその契約をめぐって対立し、裁判となったケースもある。
例えば2010年11月、小倉優子(33才)は当時所属していた事務所に年内いっぱいでの契約解除を突きつけた。これを不服とした事務所側が、小倉に1億円の損害賠償を求める裁判を起こしたものの、小倉の完全勝利となった。
「その判決文には《本件契約でのタレントの地位は、労働者であるため、契約に縛られず自由に辞めることができる》といった内容が書かれていて、つまり小倉さんのケースでは、タレントは会社員と同様の労働者で、会社を辞めるのも移籍も自由という判決だったようです」(佐藤弁護士)
前述のとおり、厚労省の指針でも芸能人は、働き方が労働者と同様と判断される場合がある、との記述があるが、これはどういうケースなのか? 厚生労働省労働基準局監督課はこんな見解を示した。
「どういう場合に芸能人を労働者と判定するかは個別具体的になります。つまり、これだという基準はなく、複合的な要因で判断することになりますが、その最たるものは使用従属関係があるかどうか。会社員は仕事を断る自由がないですよね。ですから『この仕事を受けません』という拒否の自由があれば労働者とはなかなか認められにくい。逆に業務命令だ、給料を払っているんだから、と言われると仕事の自由度が低くなりますから、労働者性は強くなります」
この考えでいくと、名前のある芸能人は、たとえ仕事を断っても次の仕事がくるから、断れる。つまり、使用従属関係にはない。
一方、名前のない駆け出しの芸能人はどうか。清水富美加は、自著『全部、言っちゃうね。』の中で、これほど人気が出る前、水着になる仕事が嫌だったものの、一度干された過去があったため、怖くてとても言い出せなかった、と綴っている。
であるならば、干されるという表現はともかく、一度断れば次はない、と考えて、嫌な仕事を引き受けざるを得ない、売れない芸能人のほとんどは労働者と見なされることになる。
清水の一件を受けて、2月に幸福の科学と関係が深いと見られている人物らが『芸能人の労働環境を糺す会』を発足させ、東京労働局に、芸能プロダクションは、労働基準法の定める労働条件を守るべき義務があることなどを嘆願書として提出した。これが徹底されるようになると、芸能人は下積みをすることはなく、例えば《初任給20万円。週休2日、年齢に応じて昇給あり。夏と冬はボーナスも》などというある一定の労働条件で働く時代がやってくる。
※女性セブン2017年3月30日・4月6日号