たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

核ごみを考える <核ごみマップ 適地は国土の65% 政府が公表>を読んで

2017-07-29 | 原子力・エネルギー・地球環境

170729 核ごみを考える <核ごみマップ 適地は国土の65% 政府が公表>を読んで

 

先ほど和歌山市から戻ってきました。少々疲れ気味です。それでもちょっとした連絡をしたり雑務整理をしたら6時半を大きく回ってしまいました。今から今日のテーマを考えるのですが、シンポのそれにするか少し悩みつつ、これはちょっと触れる程度にして、上記に決めました。

 

今日は近畿弁護士連合会公害対策・環境保全委員会主催の夏期研修で、「災害からの復興と都市・自然環境の保全~南海トラフ巨大地震に備えて」というテーマのシンポジウムがありました。東日本大震災後の復興が6年以上経過して、わずかに進みつつある一方、帰還者がどんどん減っていく状況、あるいは巨大防潮堤建設や高台移転や地盤を高くかさ上げして人工地盤をつくるといった事業がはたして住民意思を適正に反映したかとか、自然環境・生態系への配慮に欠けていたのではないかとか、そういう視点で問題を探りつつ、「事前復興」という取り組みや90%が他へ移転し10%のみ残ったものの、全員参加で元の状態に近い復興を進める地区の紹介などがあり、興味深いものでした。

 

他方で、さまざまな課題も取り上げられました。次々と災害ごとに成立した災害法制の継ぎ接ぎ的な制度の現状には統合的な仕組みが必要とか、行政の縦割りの仕組みが災害時も障害となり、復興事業の遂行に大きな支障となったことの改善とかですね。

 

ただ、私自身としては、所有権の問題に切り込んでもらえたらなと思ったのですが、これこそ岩盤ともいうべきものですので、難しいのでしょう。災害時の所有権保障を緩和する仕組みですね。たとえば、登記などで容易に現在所有者が明らかにならないとき、その土地を外すと事業が大幅に制約されるといったいくつかの条件の下、登記による公示が不完全な所有者についてはその限りで不利益な扱いも可能といったことですね(これは相当大変ですが、問題提起すればなにかいい提案が浮かぶと期待します)。

 

私がいまやっている相続登記だと、50以上の戸籍謄本や除籍謄本を集めてもまだ不足する状態です。まだ日本国内でとどまっているので、全国に散在していてもなんとかなります。なかには江戸時代に生まれた人までの戸籍を追っかけるわけですので、時間もかかります。こういうことをやっていると、一つの土地でも大変なわけですから、この種の問題がいくつもありばあきらめてしまうでしょう。それでは復興事業はなかなか進まないのではないかと思うのです。

 

また巨大防波堤や海岸付近の地盤をかさ上げする大規模事業や高台分譲地建設などは、規模によっては環境アセスメントの対象となるべきですが、災害時は適用除外となっています。そのことによる自然環境や生態系といった基本的な生存条件や地球との共生の観点がないがしろにされてしまうおそれを心配します。災害時に特有の弾力的な環境アセス制度を検討することも重要ではないかと思うのです。

 

最近少しずつ普及しつつあるハザードマップは、それなりに効用があると思うのですが、簡易であったり、地形図を基に作成しているため、より実態にあったシミュレーションとなっていない場合が少なくないのです。それは住民の主体的参加で実態にあうようなものに変えていく必要があるでしょう。また、災害は多様です。津波対応はあっても最近の豪雨や地滑り対応にはなっていないといった、複合的なシミュレーションが必要ですが、これからだと思います。

 

また、こういったシミュレーションにおいて、ハザードによって保護する対象をできるだけ多様にする必要があります。たとえばさまざまな障がい者に応じてとか、歴史的文化的価値の保全とか文化財保護とか、ときとして一般の人の命のみがクローズアップされ、軽視されたり、無視される価値にも配慮をしてもらいたいと思うのです。

 

こうなると常時、災害対応を検討するようなまちづくりをみんなで考える。それは現在のまちを活かすことにもつながるのではないかと思っています。

 

講師の話は実体験を踏まえたもので興味深いものでした。いつか紹介できればと思っています。

 

このシンポでは、日弁連の昔からの仲間も参加していて、10何年ぶりの人もいたり、なつかしい限りでした。その一人が大阪に帰るというので、南海和歌山市駅まで送ったのはいいのですが、あまり行ったことがなかったので、帰り道がよくわからず、ナビが古いため、高速に乗るつもりが、下道を通ることになり、結構時間がかかり、それで余計疲れてしまったのです。余分な話はこの程度にして、本題に写ります。

 

すでに30分過ぎたので、残り30分で書きたいと思います。

 

今朝の毎日は一面で<核ごみマップ適地は国土の65% 政府が公表>と日報隠蔽問題と二本立てでした。敵地が国土の65%と聞くと、地震国日本だけど、半分どころかなり広範囲にOKだなんて思ってしまいます。しかし、その内容は<核のごみ最終処分場 選定基礎資料「科学的特性マップ」 塗り分けた適・不適 地下300メートルに埋設、完了まで100年>とその事業完了までの期間と安定するまでの10万年という地球年齢に至る重大性を感じさせます。また、<核のごみ最終処分適地 住民対立、記憶消えず 調査受け入れ巡り 高知・東洋町>という10年前の大騒動はどこで起こってもおかしくない不安も生まれます。そして、<核のごみ適地地図公表、広がる波紋 地元二分の議論再燃も>と適地の広がりが逆に分断への不安につながるおそれも指摘されています。

 

<科学的特性マップの色分けの基準>については

<政府は核のごみを地下300メートルより深い地層に埋設処分する方針。マップは最終処分場選定に向けた基礎資料で、既存の地質学的なデータから処分場の適性度合いを4種類に塗り分けた。

 「火山から15キロ以内」や「活断層付近」など地下の安定性に懸念があったり、「石炭・石油・ガス田」があったりして「好ましくない特性があると推定される」地域は、国土の約35%を占めた。

 これら以外の地域は「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域で国土の約65%に及ぶ。このうち、海岸から20キロ以内の沿岸部は、廃棄物の海上輸送に便利なことからより好ましいとされ、全体の約30%を占めた。>とされています。

 

資源エネルギー庁の<科学的特性マップ公表用サイト>には詳細な内容が書かれています。

 

この科学的特性マップを見ると、海岸線の多くは輸送に便利なこともあってか、大半が敵地なんですね。これには驚きです。東日本大震災被害があった東北や、東南海大地震が予想されるすべての海岸線(室戸岬は除外)が敵地なんです。火山から15km以内でないことは確かかもしれません。また、津波や地震は直接影響しないのかもしれません。しかしですね。「隆起や侵食が大きい」ところはないのかもしれませんが、巨大プレートの衝突や大陸プレートの剥がれなどでできあがった日本列島なんですから、その「大きい」という物差しが有効なんでしょうかね。

 

敵地は科学的な基準で選ばれたということですので、これからその科学性は検証される必要があると思います。それは科学的知見を別の角度から、実際に適地を絞り込むとき十分議論すればよいかもしれません。

 

問題は住民意識です。その前提に、核のごみがもつ10万年といった影響力の残存に対して、これを受け入れるか否かについて住民が対立するのは当たり前でしょう。いくらガラス固化体に入っているからと言って大丈夫というわけにはいかないのですから、適地というだけで選択されると困惑というより、不安でいっぱいになるのが自然です。

 

このやっかいこの上ない核のごみは、<これまでの原発の運転で出た使用済み核燃料をすべて再処理すると約2万5000本のガラス固化体ができ、早ければ2020年代には4万本に達するとの試算もある。>というのですが、<政府の計画では、最終処分場の地中施設の広さは約6~10平方キロで、ガラス固化体を埋める坑道の総延長は約200キロに上る。ガラス固化体を約4万本以上保管することを想定し、総工費は3兆円に上る。>というわけで、このまま原発再起動を進めていけば、この最終処分場も当然、100年、場合によってはそれよりも短い期間で満杯になる可能性もあるように思うのです。

 

この危険きわまりのない核のごみを生み出す、原発によるエネルギー供給に歯止めをかける必要は、未来の地球のため、将来の世代のため、早期に検討していく必要があると考えるのは、すでに日本国民の過半を十分に超えているのではないでしょうか。適地率よりも高いかもしれません。

 

この科学的特性マップは、逆に問題の深刻さを浮き彫りにしたと思っています。

 

もう30分を十分すぎてしまいました。今日はこれでおしまいです。