180813 報道とのおつきあい <警察署から容疑者逃走 大阪、接見室アクリル板破壊>などを読みながら
今朝の空気もとてみ澄んでいて、高野の峰々は緑が鮮やかでした。いや目覚めたときはまだ朝日が一部しかあたってなく、全体は濃い緑というか群青色のように見えました。次第に朝日が稜線をくっきり浮かび上がらせたかと思うと、山襞全体が日光浴しているみたいに輝いていました。
早朝は爽やかで気持ちがいいのですが、どんどん暑くなり、部屋から外に出ると、車の中は蒸し風呂状態です。エアコンがすぐに和らげてくれるのですが、エアコンにばかり頼っていては体がなまってしまいそうです。
今日は銀行で成年後見事件の口座開設をする必要があり、手続が終わるのを待っていました。お盆休みというのに、結構、新規契約の来客が多く、順番が来るまでも時間がかかり、その後も手続に相当かかりました。合計で1時間半でしょうか。その間に藤森隆郎著『林業がつくる日本の森林』をおおよそ読了しました(ななめ読みですが)。せっかくだからこの内容を今日のブログにしようかと思ったのですが、専門家らしくなく平易に書かれているものの、かなり単純化していることもあり、すぐにはとりあげられそうにないので、次の機会にしたいと思います。
で冒頭の見出しは、他に思いつかなかったので、つい取り上げることにしました。
報道各社は、刑事事件では警察発表を基に、第一報からどんどん中身が充実していくように思います。その意味で第一報は注意して見ておく必要がありますね。いや、その後も同様の注意が必要ですが、とりわけ第一報は?と思うような記事が少なくないですね。
今回取り上げたのも、その?を感じたので少し注目したのです。
弁護士との接見(面会)後に、被疑者(容疑者)が面会室から逃走したというのです。そんなことがありうるのかと、面会室に入った経験のある方なら誰でも思うでしょう。弁護士の私にはまず想定できませんでした。留置場の担当官がいるし、面会室のドアも、留置場への出入りのドアも、施錠されており、どこから逃げれるというのだろうと、弁護士なら誰もが思うでしょう。
それでネットで各社の記事を見ると、最初の段階では不思議な記事となっていました。
東京新聞は<警察署から容疑者逃走 大阪、接見室アクリル板破壊>、京都新聞も<警察署から容疑者が逃走、大阪 接見室のアクリル板破壊>、時事通信も<警察署から男逃走=面会室のアクリル板壊す>
このアクリル板破壊とか壊すとかの記事には驚きです。私も何百回?とあのアクリル板の前で被疑者や被告人と話をしたことがありますので、あのアクリル板を壊せるなんてありうるのかと思ってしまいました。だいたい、イスはたいてい固定していて破壊道具に使えません。素手で壊すとしたら相当の腕力でしょうけど、ま、無理でしょうね。いずれにしてもいくら防音装置がしっかりしていても振動等でわかるはずですから、あり得ないですね。
もう少し記事をフォローしていると、産経新聞が<【富田林脱走】「どうも時間が長い」ドア開けたら無人>の中で警察発表を基に図入りで解説していました。アクリル板をこじ開けたようですね。産経は別の記事<富田林脱走】前室に署員不在…面会用アクリル板、枠から外れる>では、<面会室のアクリル板は通常、金属製のサッシの枠内に収まっているが、片側が外れた状態になっていた。板を押せば数十センチの隙間ができることから、樋田容疑者がその隙間から面会者側のスペースに抜け出し、前室を通って脱走したとみられる。>と推定しています。
では普段読んでいる毎日はどうかというと、最初の一報は<大阪府警富田林署から勾留中の容疑者が逃走>で、やはり<アクリル板が破られていたという。>ということですから、富田林警察署の混乱ぶりがあったのかと思うのです。
ただ続報では毎日は<富田林署逃走面会室隣室の署員スニーカーなくなる>で、<室内には、容疑者と面会者を隔てるアクリル板が3枚あり、このうち1枚が面会者側の部屋に押し出すように曲げられ、鉄製の枠との間に最大約10センチの隙間(すきま)があった。>と客観的な記事となっています。
とはいうものの、アクリル板が壊されていたのではなく、枠から外されていたということですが、そんなことが可能なのか、想定したことがありませんでした。通常ありえないことですね。当該枠がどういう状態であったのか、なぜ枠からアクリル板が外れたのか、その確認が必要でしょう。
今後二度とこのようなことがないよう、警察はしっかり調査して欲しいものです。
他方で、弁護人の接見は7時半ころから8時過ぎには終わったというのに、警察署員が面会室を確認したのは9時45分頃というのですから、この対応も疑問です。むろん私も含め弁護人の接見ではときに2時間、3時間、あるいはそれ以上にわたることもありますが、普通は1時間くらいでしょう。たいていの警察署では、1時間を過ぎて長くなると、確認の意味もあってとんとんとドアを叩いて中を確認することもありますが、それはときに他の弁護人が待っていることもあり、急ぎでなければ交代してもよいことがあり、警察署員がその趣旨を伝達することもあります。
ともかく弁護人は終了したら、知らせて欲しいと言われており、私も被疑者を一人にしておくことはなにかあった場合に問題となりうるので、被疑者には終了後すぐにドアを叩いて署員に知らせるよう促しています。
今回の事件の弁護人の対応がどうかということは事実関係が明らかでないので、差し控えたいと思います。ただ、私たち弁護士は、被疑者との面接交流権を警察署員の立会なしで認められていますし、接見禁止処分決定がある場合でも弁護人だけに認められていることは、尊重されるべきですが、他方で、被疑者の健康管理や万が一の逃走の場合に社会に与える影響を考慮すれば、捜査側への配慮も必要と思っています。
アクリル板の設置がいい加減であったとすると、その管理責任こそ問われるべきかと思います。これも事実調査を踏まえて議論すべきことでしょう。
と30分あまりで急ぎ足で書きました。今日はこれでおしまい。また明日。
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