171022 革新的な企業統治スタイルは? <東芝 報告書で「不正会計」表現・・>を読んで
今朝早々と最寄りの小学校にある投票所にでかけて投票を終えました。普段の会場が別の団体が先に予約していたためか、代替の狭い空間で行われていました。大勢が集まっていた本来の会場と異なり、変更された投票所は係の人が10数人いるものの、投票者は私以外にだれも現れませんでした。天候を考えて期日前投票を済ました人が多かったのかもしれませんが、それにしてもあまりに閑散としていました。投票所への行き帰りでもだれとも会いませんでした。これが突然の電撃的な解散の結果かも知れません。いや、いまの日本の政治状況に対する国民意識の表れかもしれません。
私の好きな毎日日曜版・「今週の本団」では<海部宣男・評 『あなたの脳のはなし 神経科学者が解き明かす意識の謎』=デイヴィッド・イーグルマン・著>に興味が惹かれました。
「私」とは何かについて、先端脳科学者が広く切り込んでいる内容ということです。
<私たちの脳がAIと決定的に違うのは、千兆もの接続を持つ脳内ネットワークで、たくさんの選択肢が対立しながら選択の結果を行動に及ぼしていること。そうした脳内での対立・選択が「自由意志」につながるのは、もちろんだ。だが私たちの脳は、せめぎ合う欲望の集積だ。>見えないところで日夜せめぎ合っているのですね。生まれてから死ぬまで。
共感もあれば、外部グループを間化して、民族対立などもあるというのも脳内ネットワークの働きの一つのようです。
そして脳とAIなどの研究はさらに進化することは疑いないですね。
<脳の将来も、刺激的だ。スピーカやカメラの信号を、微細な導線で脳の聴覚野や視覚野につなぐ。脳はその信号を学習して、聴力・視力を獲得する。さらに、眼(め)の見えない人の腰に小型モータ群を当ててカメラからの信号で動かすと、腰に人の顔などのカメラ映像を感じはじめる。何と「腰で見える」ようになったのだ。>
<つまり脳は、どういう装置・どういう場所からでもしかるべき信号をもらえば、外界に合うように学習し解釈できるのだ。脳が使えるデータは私たちが感じる可視光や音波に限らないことも、はっきりしてきた。紫外線カメラから信号データを入力すれば、人は紫外線の「視力」を持つことになる。>
すでに60兆はあるといわれる細胞の中には、脳とは独立して、それぞれメッセージを交信し合い独自の機能を営んでいるという情報はNHKの「人体」で紹介されていましたか。
と長々と前置きを書いてしまいましたが、「私」という存在を決定する頂点にあると思われた脳についても、あらたな知見が生まれつつあるようです。同様に、会社の意思決定機構も、大きく変わるかもしれないというのが本日の話題です。
毎日朝刊では、東芝不正問題を追及してきた一人、古屋敷記者が<東芝報告書で「不正会計」表現 反省の意思明確に>と小さな記事で、昨日東芝が公表した点に触れ、<東芝が内部管理体制の改善報告書を公表し、不正会計問題について同社がこれまで使ってきた「不適切会計」から「不正会計」へと表現を改めた。反省の意思を明確にするためという。>としています。
また報告書の内容については、<報告書では、不正会計の原因を歴代社長に「財務会計の厳格さに対する認識が欠けていた」と批判し、前任社長に対する「ライバル意識など社内外からの評価に強く執着」したため、達成困難な損益改善要求を繰り返したと指摘。取締役会も形骸化し、けん制できなかったと結論づけた。>
日経の10月11日付け記事<東芝、株式の特設注意市場銘柄及び管理銘柄(審査中)の指定解除について発表>を読めば、四半期報告書が遅れながらも提出されたことに加え、本年3月15日再提出の内部管理体制確認書が指定解除に重要な働きをしたと思うのです。
そして今回の報告書<「内部管理体制の改善報告」>は、上記の内部管理体制確認書を受けて、抜本的な改善策を報告したものでしょうから、この内容こそ重要だと思うのです。ところが、古屋敷記者の記事は、紙面がとれなかったのか、上記の通りあまりに簡潔で、重要な内容をほとんど取り上げていません。
わたしがこの報告に着目するのは、もしこの改善体制が実効あるものとなれば、日本の会社制度の大改革になる可能性があると思うからです。
いままでわが国における多くの会社の意思決定は、生え抜きの社長を中心に行われてきたと思います。習近平国家主席ほどではなくても、古い体質の企業では似たような状況であったかもしれません。取締役も生え抜きで、取締役会もイエスマンほどではないとしても、社長の決定に逆らうことは容易でないことでした。企業不祥事が繰り返され、企業統治に必要がうたわれ、社外取締役制度など、さまざまな監督制度が導入されましたが、社外取締役には情報を提供せず、また少数派で、実効性がないものでした。
あくまで会社の意思決定は、ある種、脳という単独ないし少数で決定してきました。外部の関与は極力排斥されてきたのが、繰り返し会社制度を改革しても実態としては残ってきたのだと思うのです。
だいたい最も先端的に社外取締役制度など企業統治に前向きで優等生の筆頭ともいうべき東芝が、今回の会計不正の中で明らかになったのは、歴代社長による会計・事業の適正さを無視した業績優先主義について、チャックする機構がまったく機能しなかった点です。
さて、この報告書は、それをどう改善するかを、まるで社外からの監視監督を優先するかのような体制を構築しようというのです。詳細は報告書でチェックしていただきたいですが、多くの企業も、他山の石として、検討してみてはいかがでしょうか。
そのいくつか取り上げてみたいと思います。(ここまで書いていて簡単にまとめて終わろうとしたら友人から電話があり1時間近く今回の選挙の話から70年代の美濃部都政問題(大気汚染、水質汚濁、公害研究所創設、六価クロム汚染など)まで遡って議論してしまい何を書こうとしたのか・・・)
この報告書では、改善策をいろいろ取り上げていますが、私はガバナンスの強化に注目しています。合計38pのうち、10pをさいています。
まず取締役会について、人数を減らして、社外取締役を過半数にするというのです。すでに従来16名だったのを11名にして、そのうち6名を社外取締役にしています。しかも取締役の専門性とその多様性の確保を求めています。そのため弁護士1名、公認会計士2名、経営者3名の布陣となっています。さらに議長を社外取締役にしています。これはわが国の会社組織としては想定外の出来事でしょう。
はたして企業の実態を知らない社外取締役が過半数を占めることで、そもそも形骸化がしてきされる取締役会が機能するかといった懸念が生じそうですが、それへの対応も配慮しています。いままで報告しなかった事項を社外取締役に報告するなど、経営内容を理解できるような整備をいくつも行っています。
その他現在の会社法が予定しないような組織実態になっています。今後どのような経営運営がなされるのか期待したいと思いつつも、果たしてこのような部外者による監視・監督強化で、組織が生き生きと、将来性ある企業の再生できるのかも心配されるところです。東芝メモリの売却をめぐる混乱も、もしかしてこのような組織体制が影響しているかもしれません。
とはいえ、先に述べた脳機能の多様性というのか、人体の組織細胞が働いていない部分を活用することによりその機能が蘇るほど、人間の潜在能力の高さを認めることができるように、企業というものも、多様な意思決定構造を構築することがいま求められているのかもしれません。企業の意思決定を構成する組織も柔軟に考える必要があるのではないかと思うのです。この東芝の実験は注目に値すると思うのです。
今日はこのへんでおしまい。
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