180927 株式における選択と責任 <大手信託・生保の議決権行使 議案への反対率増加>などを読みながら
今日もとくに忙しくなかったのですが、いつの間にか時間が経過してしまいました。ちょっと興味深いケースがあり、その事実関係を調べたり、別の紛争案件に関わる裁判例を調べたりしていると、あっという間にこの時間になってしまいました。
今日の話題は・・・・とくに見つからず、ちょっと目についたので、見出しのタイトルにしたのですが、簡潔に終わらせたいと思います。
今朝の毎日記事<株主総会大手信託・生保の議決権行使 議案への反対率増加 投資先に厳しい姿勢>は、ようやくわが国においても大手企業の一部で、その議決権行使のあり方に光が当たるようになってきたようです。
<昨年金融庁が改定した機関投資家が守るべき「スチュワードシップ・コード(受託者原則)」に基づく2年目の開示で、全体として議案への反対率が昨年比で増加した。利益の株主還元や企業統治を巡り、投資先企業に厳しく接する姿勢が強まっている。【深津誠、竹下理子、古屋敷尚子】>
このスチュワードシップ・コード(受託者原則)について、同じ記事で次のように解説しています。
<顧客などから託された資金を運用する銀行や保険、証券会社などの機関投資家に定められた行動原則。>で、<投資先企業の経営監視や顧客への説明責任などで構成されており、金融庁が2014年に制定した。>ということでまだ4年目ですね。
開示することがルールで、その議決権行使の是非はとくに問われていないようです。その開示方法はというと、<株主総会の議決権行使の内容については、当初は議案の種類ごとにまとめて開示すればよかったが、17年5月の改定で個別議案ごとの公表が必要になった。賛否の理由についても開示が奨励され、機関投資家は判断の妥当性が問われる。>
さてその判断の妥当性を問うのは、一体誰でしょう。委託者である個々の投資家・企業なんでしょうけど、こんどはそこの選択が問われるのかもしれません。でもその前提の現在実施されている開示程度で選択が適切かどうか、検討できるのか少し不安です。
開示内容について、<信託、生保大手7社中、個別の議決権行使状況を開示したのは、昨年同様、日本生命を除く6社(明治安田は開示対象を全投資先に拡大)。三井住友信託、三菱UFJ信託は賛否の理由も公表した。議案への反対率は三菱UFJ信託以外で増加し信託は15~20%台、保険は1~3%台。昨年以降、ガイドラインを厳格化した三井住友信託とみずほ信託は反対率がそれぞれ8・2ポイントと3・9ポイント上昇した。>とその程度がよくなっている趣旨の記事となっています。
具体的な事例としては<注目案件では、シェアハウスに絡む大規模な不正融資問題が発覚したスルガ銀行の創業家の岡野光喜会長(9月に退任)ら9人の取締役選任案に対する対応が分かれた。三井住友信託、三菱UFJ信託、明治安田の3社は、「(6月の株主総会時点で)第三者委員会の報告がされておらず、反対する材料が十分ではなかった」(三菱UFJ信託)などの理由で選任案に賛成した。>とありますね。第三者委員会の報告を待つまでもないように思うのですが、どうも積極的な議決権行使が行われていない大手もまだまだ多そうです。
その点<みずほ信託は「不祥事に責任があると認められる取締役の選任に原則反対する」という自社のガイドラインに沿って、9人の選任案に反対した。>と積極的に議決権行使ガイドラインを策定しているという点は評価できますね。同様の理由でしょうか、同社は<長期間務めた取締役に退職金とは別に支払われる退職慰労金について、「年功的性格が強い」として原則反対する方針に変更した。その結果、退職慰労金支給議案への反対比率が昨年より60・7ポイント高い96・2%に跳ね上がった。>と個別企業毎の選択と言うより、自社独自の選択基準で、行使しているという、望ましいあり方を示しているかと思います。
通常、上場企業大手は、たいてい横のつながりもあって、この種の対応もどこかがガイドラインを作れば、自社もまね?してつくる傾向にあるのですが、みずほ信託だけとは思えないのですね。他社はどうなっているのでしょう。
この開示によって、短期利益の追求に終わるような結果になることは避けてもらいたいものですが、どうでしょう。
<株主への利益還元について意見する姿勢の高まりは各社で目立った。利益をどれだけ配当するかを決める「剰余金処分案」に対し、3信託で反対率が上昇。三菱UFJ信託は、TBSホールディングスの1株当たりの配当についての議案を「不適切」として反対した。>
アメリカの投資環境のようになって、トランプ旋風に風船が破れるまでどこまでも高く上がっていきそうにならなければいいのですが・・・
ところで8月5日付け毎日記事<けいざい・因数分解2500兆円 世界のESG投資額 「持続可能」でリターン>では、<気候変動や社会貢献、企業統治への取り組みを重視して投資先を選ぶ「ESG投資」>が取り上げられています。
アメリカや西欧は多様ですので、先端的なことも早くから始めますね。その投資選択の基準としてはかなり前から行われてきたと思いますが、わが国はようやく重い腰をあげたような印象です。
<国際組織の世界持続可能投資連合(GSIA)の2016年の調査で、全世界のESG投資額は前回14年から約25%増えて22兆8900億ドル(約2500兆円)になった。これは世界の投資額の4分の1に当たり、ESG投資は近年、世界的な潮流となっている。>
ESGといっても耳慣れないかもしれません。記事ではちゃんと解説があります。
<ESGは「環境(Environment)」「社会(Social)」「統治(Governance)」の頭文字。投資を判断する際、従来の財務情報や収益性だけでなく、非財務情報であるESG要因も考慮しながら収益を追求する投資手法の総称がESG投資とされる。投資対象は株式や債券、不動産など多岐にわたる。>
で、日本のESGにおける現状はというと、<総投資額の2500兆円を地域別に分類すると、欧州(53%)と米国(38%)が大半を占める一方、日本は2%。全資産運用額に占めるESG投資の割合は、上位から▽欧州53%▽豪州・ニュージーランド51%▽カナダ38%▽米国22%--と続き、日本は3%。金額、割合とも日本は世界の先進国に水をあけられているのが現状だ。>出遅れ感は否めないですね。
その内実を次のように記事にしています。
<日本では、15年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連のPRI(責任投資原則)に署名し、ESG投資への関心が次第に高まっている。GPIFは約160兆円のうち1兆円をESG投資に充て、今後も増やす方針だ。GPIFは世界最大の機関投資家だけに、今後はESG投資の普及が期待される。
ただ、現時点ではGPIFや生命保険会社、信託銀行などが相次いでPRIに署名する中、企業年金基金で署名したのはキッコーマンやセコムなどの数機関にとどまる。PRIは日本の機関投資家に対し、「ESGに配慮しない投資は受託者責任に反する」と指摘している。大和証券の大沢秀一シニアアナリストは「短期ではESGに配慮しない企業が利益を出すかもしれないが、長期でリターンを得たいなら持続可能なモデルがある企業に投資した方が良い」と指摘している。【深津誠】>
と記事の引用で終わらせてもらいます。また明日。
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