180220 財産区のあり方 <大阪・松原の財産区背任>を読みながら
今日もまだ手の具合が芳しくないようです。指先のしびれや背中に違和感があり、連載企画はどうも進めそうもありません。のんびりと過去の記録を整理していてそろそろなにかブログを簡潔に書こうと思っていたら、当番弁護士の依頼の電話が入りました。昨年は刑事事件が2件くらいでしたか、ずいぶん減ってきて、警察署に行く機会も少なくなりました。あまり乗り気はしないものの、日永過去の記録を整理していても仕方がないので、引き受けることにして、このブログを書き上げてから警察署に出向くことにしました。
さて昨夕の毎日記事では<大阪・松原の財産区背任財産区、関心低く標的に 町会長ら事業費水増し 住民「会計気にしたことない」>と割合大きく掲載されていました。
私も今ちょっとした財産区に関わる仕事をしていますので、少し気になっていましたので、取りあげてみようかと思います。また、宇根氏の『農本主義のすすめ』でも、共同体としての村の役割を基軸に据えていたり、以前ブログで紹介した楜澤能生著『農地を守るとはどういうことか』 もコモンズ的機能を持つ共同体としての村に農地利用について重要な役割を期待していたように思います。
むろん、村といっても、地方自治法が適用されるような村は、ここでは対象となっていないと思われます。登記上の大字、場合によっては小字くらいの規模で昔成立していたムラが想定されているのではないかと思うのです。そうなると全国のムラでも千差万別で、仮にムラらしきものが残っていても、様相はいろいろでしょう。都市化したところでは町内会とか自治会、あるいは区会といった地方自治体の行政の末端的な働きをしているところも少なくないのではと思うのです。
私が首都圏で仕事をしていたとき、様々な開発・建築紛争に関わっていく中で、そういった自治会が主体的に住民運動の中心になるようなところは、たいてい組織がしっかりしていて、民主的運営がしっかりできているところでした。当然、会計処理も明朗かつオープンですね。でもこういった民主的運営が行われ、会計処理が適正かつ透明性を担保しているところは意外と少ないように思います。
それは田舎でも似たようなところがあり、何年か前にある区会で区長が大きな金額を背任ないし横領したと言うことでニュースになったことがあります。そこでも会計処理が区長の独裁的なやり方で、本来あるべき見積もり明細とか領収証とかがそろっていないとか、いやそういった原資料を開示しないということでもめた後、事件が発覚したりしています。
その要因の背景として、その区会には特別の収入源があり、それが普通の区会ではあり得ない巨額となっていて、そういった収入なり財産がある場合は、より丁寧な管理が求められるでしょう。
ところで、問題の事件に入ります。
<大阪府松原市で起きた背任事件は、特別地方公共団体に位置づけられ、潤沢な資産を持つ「財産区」が舞台になった。大阪府警は、大堀財産区管理委員で町会長の植松謙友(よしとも)容疑者(57)=背任容疑で逮捕=が、財産区が費用を出す事業に乗じ、工賃を水増しして業者と折半したとみている。>
その背任事件で水増しされた事業は<松原市大堀3の住宅街に、外見の似た、真新しい2棟の平屋の建物が道路を挟んで建つ。大堀町会防災センター(2014年6月ごろ完成、約270平方メートル)と、今回水増しがあったとされる大堀町会倉庫(15年9月完成、約100平方メートル)だ。2棟の南約300メートルには、ため池の堤防に約50メートルにわたり太陽光パネル(13年7月完成)が並ぶ。>
この3つの事業を含めて事業費全体が財産区としても異常に高額になっています。
<植松容疑者は11年に管理委員に就任。14年ごろに町会長を兼任するようになった。一方、町会は11年ごろから、3事業を含め24件(総額約6億1000万円)を発注。同社の受注は11件(約3億9000万円)に上る。市も「財産区からの支出を抑えてほしい」と指摘するほどだった。>
ここでは具体的な背任の内容・金額が明らかにされていませんが、11年から本年度までに総額6億円もの事業を行うことが、一財産区で行われていることについて、どのようなチェックがなされていたか、それが問われるべきでしょう。
<町会の元会計担当者は「町会長に言われた通りにやればいいと引き継いだ。市がチェックしているものだと思っていた」。>ということですが、通常、こういった区長は自分が意のままになる人物を会計担当にする、あるいはあまり問題意識を持たない人を割り当てる傾向がありますね。
別に会計に明るくなくても、みんなの財産だということになれば、たいていの人は会計帳簿を含め支出の合理性や原資料を確認しますが、そのような意識を抱かない人、会社勤めで忙しい人を割り当てているのかもしれません。
財産区を担当する市財産管理課は「これまでは性善説でやってきたが、提出資料を増やすことも検討したい」としている。
では監督する立場の松原市はどうかというと、<市によると、町会が行う事業に対し、財産区が費用を出すには、まず町会が財産区管理会に諮り、管理会が決定内容を市に報告。法的に問題がなければ市長の決裁を経て認められる。>ということですし、<財産区を担当する市財産管理課は「これまでは性善説でやってきたが、提出資料を増やすことも検討したい」としている。>と後付け弁解で終わっています。
専門家の提言はもっともな内容です。
<同志社大の真山達志教授(地方自治論)は「財産区の資産がどう管理されているのか、地域でも関心を持っている人は少なく、今回のような不正の温床になりやすい」と指摘。「昭和の市町村合併の時代にできた遺物で現代の価値観や常識に合わなくなっている。自治体によるチェック機能が働いていないのは問題で、時代に沿う制度にしなければいけない」と話す。【戸上文恵、道下寛子、金志尚、高嶋将之】>
そもそも財産区はどのように管理されるべきか、現行地方自治法第294条ないし297条で定めているものの、管理主体や管理方法について誰が主体的に責任を担うかが明確とは言えないと思えます。
この財産区は、先の真山氏が指摘するように、合併後の自治体が管理しにくいものとして、暫定的に残されたものがすくなくないと思われます。それは将来にわたって財産区という制度で管理されるものとは予定されていないように思うのです。
これは財産区に限らず、そのようなものとして、入会地やため池、共同墓地、用排水路などの普通河川と言われるもの、あるいは里道など、多数あるかと思います。それらは従前、ムラというコモンズが機能しているときは自主的に管理されてきたものだと思うのです。
江戸時代の管理は一定の民主制・公開制の下に行われていたように思うのです。構成メンバーは、本来、自分たち共有の、あるいは総有の資産について、宇根氏流にいえば、天地に値するものとして大事に守ってきたものではないかと思います。
しかし、いまこういった共同体が形骸化し、行政が形式的に作った組織のみが動かしていることから、問題があっても構成員の中で意識化されず、自治的に解決できない状態にあるように思われます。
その意味では、新たな組織、制度作りが求められているように思うのです。それは現行地方自治法に基づき、条例で財産区に議会を作ったりして形を整えて機能しないと思われます。
話しは飛びますが、マンション管理組合でも同様の問題は起こっていますね。
少なくとも収支が一定以上ある場合には、新たな組織が、対象に応じて検討されても良いと思われるのです。
今日はこれにておしまい。また明日。
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