190315 化学物質のリスク <シックハウス 家具で発症>などを読みながら
最近のニュースで「化学物質過敏症」ということばがあまり使われなくなった印象をもちます。今日のニュースではいくつか気になる記事があり、どれにしようか迷ってしまいましたが、結局、上記に落ち着きました。
今朝の毎日記事<くらしナビ・ライフスタイルシックハウス 家具で発症>は、文字通り「シックハウス症候群」として取り上げています。別にこの問題が話題になり出した90年代後半でも大手マスコミはこの用語を選んでいたので不思議はないのです。ただ、それでも被害者が訴える「化学物質過敏症」という用語を使う記事もあったと思いますし、雑誌ではむしろ多かったような印象があります。
それから20年余り経過して事態は変わってきたのではないかと思うのです。この記事でも裁判例はいずれも「化学物質過敏症」と認定して被害者側の損害賠償請求権を認めています。その裁判例を引用しつつも、記事はあえて(といいたいです)「シックハウス」という別の用語を選択しています。
両者は同じだと思われる方もいるかもしれません。この記事で取材に応じている弁護士の中下さんなら、とんでもないと強い口調で否定する姿をイメージしそうです(勝手な想像はダメでしょうけど)。シックハウスではこの問題の本質をとらえられないと思うのです。
記事で紹介されている<18年 カラーボックスから揮発したホルムアルデヒドで化学物質過敏症になったとして、販売したホームセンター・コメリに高松地裁が賠償命令>の裁判例を見ますと、やはり明確に「化学物質過敏症」と認定しています。原告は一級建築士です。建築士が自分の事務所あるいは部屋で発症したのか、建築士とあろうものがと思われる向きもあるかもしれません。事実は奇なりというより、真相こそ化学物質のリスクを如実に示しています。
判決では「建築現場での打合せや施工監理の際などに、建築資材等に使用されている化学物質に接していた可能性があり、慢性的に化学物質に曝露していた」と建築現場での長期継続的暴露に言及しています。それまで発症していなくても、少し濃度の高いカラーボックスに接触することが直接の引き金となって化学物質過敏症を発症することは専門的な知見としては確立していると思います。裁判所もほぼ同様の考えで認定したと思われます。
また中下さんらが代理人となった裁判例(東京地裁平成30年7月2日判決確定、判例集未登載?)でも、花王の従業員が有機溶剤などの検査業務を実施する中で、「本件工場内の研究本棟において、本件検査分析業務に従事する過程で、大量の化学物質の曝露を受けたことにより、有機溶剤中毒に罹患し、その後、化学物質過敏症を発症した」と認定されています。
シックハウスといった用語は一切使われていません。これは業界がその使用に強く反対し、マスコミ・政界に強力な圧力をかけてきたことが背景にあると思うのです。
こういった裁判例がずいぶん増えてきたなと思うのですが、シックハウスという用語とその厚労省指針の限界もあって、化学物質過敏症に罹患するおそれは減っていないと思いますし、これからも発症するリスクに晒されていると思います。
さて記事を紹介するのが遅くなりました。
<屋内の空気中の化学物質が原因で頭痛やだるさなどの体調不良が起きる「シックハウス症候群」。家屋の建材だけでなく、家具など家庭用品が発生源となることもある。新生活を始める前に、どのように家具を選べばいいのか。>と問題提起をしています。
さて昨年12月18日付け毎日記事<シックハウス3物質断念 業界に配慮 厚労省指針>のとおり、有害性(有毒性?)の高い化学物質については、厚労省の室内濃度指針値があります。その指針値について<法的強制力はないが、業界が自主規制する際の根拠になる。1997年にホルムアルデヒドについて決めたのを皮切りに計13物質が対象になったが、2002年以降、見直されていなかった。しかし、指針値のない化学物質が原因とされるシックハウス問題が増え、12年に検討会が再開された。>というのです。
でも<キシレンなど3物質の規制を強化するが、同省の「シックハウス問題に関する検討会」で合意されていた2-エチル-1-ヘキサノールなど3物質の新規指定は見送られた。厚労省は「代替物を探すのに時間がかかると(建築関係の)業界から言われた。業界と協力して情報を集めていきたい」と説明し、規制反対の意見に配慮した格好だ。>というのです。
ここでは建築関係の業界だけが話題となっていますが、背後には化学物質業界がどんと控えていると思います。
この指針値自体が家屋の建材などが主な対象で、家具などはその緩い網からも落ちていると思われます。何よりも原因物質の特定が容易でないことが見過ごされています。
再び今日の記事ですが、40万円もするベッドを新調した後から夫婦に体調異変が生じています。商品表示では<「日本製」でホルムアルデヒドの放散が最も少ない等級を示す「F☆☆☆☆(エフ・フォースター)」の表示>でしたが、解体検査すると<国の室内濃度指針値(1立方メートル当たり100マイクログラム)を超える135マイクログラム相当のホルムアルデヒドが検出>したというのですから、ひどい話です。
結局、家具を構成する部材にどのような化学物質が使われているか、販売店はもちろんメーカーでも明らかにすることは容易でなく、しかも厚労省の指針値がある対象だけが有害性の高いものと限定できないのですから、消費者としては安全性が保証されているとは言いがたい状況ともいえるでしょう。まして化学物質暴露に対する反応は個人差、その過去の経歴とも関係するので、防御策は容易に見つからないかもしれません。
<「においに耐えられないと思ったら、体が有害だと教えている。>とのこと、たしかに臭気は一つのメルクマールでしょう。私も割合敏感な一面があり、容器リサイクル施設を見学するような場合などでは、ちょっとした臭気を感じて体調不調をきたすことがあります。
でも無臭で有害性の高いものもありますから、それだけでは安全確保とは言えません。
化学物質(つまり地下資源ですね)を使った製品、商品をなるべく使わない、使うときは用心しながら使うことを心がけるのでしょうか。さて用心とは・・・揮発性の高いものであれば、風通しのよい状態に環境を保つことでしょうか。そうでないものは・・・五感を強力に働かして体調のちょっとした異変に気づくとともに、周囲の微細な変化にも気づくことでしょうか。
最後はよくわからない話になりましたが、当地に来る前まで私は化学物質過敏症で苦しむ人たちから相談を受けてきたことがあり、その苦しみは大変なものですから、罹患しないことが一番と思うのです。
今日もわかりにくい展開となりましたが、この辺でおしまいとします。また明日。
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