たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

嗜好品と自律 <「喫煙不採用」徐々に浸透>と<ANA機長深酒、5便に遅れ>を読みながら

2018-11-01 | リスクと対応の多様性

181101 嗜好品と自律 <「喫煙不採用」徐々に浸透>と<ANA機長深酒、5便に遅れ>を読みながら

 

今朝も結構冷え込みました。それでも事務所に来るといろいろ電話があったり、議論したりすると、体が温まります。変な暖まり方ですが、多少は脳の活性化になっているかもしれないなんて思うこともあります。

 

さて今日もあれこれやっているうちに、終業時間となりました。さてと今日のお題はと今朝の毎日新聞を読んだ紙面を思い出し、2つの記事に何かしら感じるものがあり、これを本日のお題とすることにしました。

 

まず<全日空ANA機長深酒、5便に遅れ 「飲み続けてしまった」>は、飲酒にまつわるよくある話ですが、ただ、機長という特殊な職種であることが話題でしょうか。

 

<全日空は31日、グループ会社のANAウイングスに所属するボーイング737の40代男性機長が、前日の飲酒の影響で体調不良になり、25日に予定していた那覇空港と石垣島や宮古島を結ぶ沖縄県内の計5便に乗務できなかったと発表した。>

 

飲酒ルールが会社にあるようです。

<航空法に基づき国土交通相の認可を受けた同社の規定は、乗務開始の12時間前から飲酒を禁じている。>ところが、<機長は「認識はあったが、飲み続けてしまった」と話しているという。>

 

具体的には<機長は25日午前8時10分発の石垣発那覇行きの便に乗務予定だった>というのですから、会社規定に従えば、前日の午後8時10分には飲酒をやめなければいけなかったのですね。12時間ルールですからわかりやすいですね。ところが、機長は2時間もオーバーして<前日午後10時ごろまで沖縄県石垣市の飲食店で飲酒。>そして当日の<25日午前6時半ごろ「体調不良で乗務できない」と所属部署に連絡した。>というのです。

 

搭乗前にアルコール検査をしているのかはここでは言及されていませんが、10時間前まで飲んでいたというのですから、アルコール度数や量によっては検査していれば検知されたかもしれませんね。

 

他方で、検知されなければ、操縦するつもりであったのでしょうね。たまたま体調不良になったから搭乗しなかっただけですから。飲酒はたしかに一定の効用がありますが、プロとして、しかも大勢の乗客の命を預かるものとして、飲酒についての自覚を欠いているということは明白ですね。体調不良になるほど、飲んでいたということは、その度数・量も相当な物であった可能性があります。

 

私も酒が好きですので、人のことを言える立場ではないですが、50代後半ころから次第に自覚するようになり飲酒量を減らし、最近は体調不調もあって、断酒というか、飲んでいません。集まりの席でも、水かお茶にしていますが、慣れると別に周囲も違和感を感じていないようです。それに酒の影響を受けることがないので、自然体が最後まで続きます。意外とそれはいいですね。

 

まあこの機長をはじめ酒を飲み出すと節度を超える人は少なくありませんが、それは酒による影響も大きいので、そこに至る前に自分なりの飲酒量の枠を設定することではないかと思うのです。それ自体はさほど難しいことではないように思うのです。いやいやアルコール中毒ないしはそれに近い人にとっては不可能というかもしれませんが、私は一人でできなければ、周囲の支援があれば可能と思うのです。

 

たとえばこの機長、仮にこの飲酒状態で操縦していたとしたら、判断ミスを犯すおそれもあったかと思います。そのような結果は、交通事故ではよくあることですね。操縦席や車のハンドルにアルコール検知管のような新たなセンサーを設置して、物理的に飲酒○○をさせないのも一つです。でも自律的な人間像を求めれば、そういう行動様式を確立するよう指導することが大事でしょう。

 

同様になかなかやめられないのが喫煙ですね。ご本人は嗜好だと固守するでしょうけど、周り、とりわけ弱者が間接喫煙の被害を受けても泣き寝入りしているのを忘れてはいけないでしょう。むろん喫煙者ご自身の健康被害もいつ発症するかわからない時限爆弾をかかえているようなものでしょう。しかもその医療費にかかる負担は莫大なもので、それは経済的には国民の負担となり、経済にも悪影響を与えていることを忘れてはならないでしょう。タバコ税の税収入に比べれば、その費用負担の方がいかに大きいかを考えるべきでしょう。

 

さて毎日記事に移ります。<くらしナビ・ライフスタイル「喫煙不採用」徐々に浸透>では、ようやくわが国でも企業側が労働者雇用に当たって喫煙を不採用基準にする流れが少しずつ出てきたようです。そのような企業を紹介しています。

 

私自身は、法律事務所に勤め始めた頃、まだ嫌煙権などが話題になっていませんでしたが、たまたま恩師も、先輩弁護士も喫煙していませんでしたので、事務所内はクリーンでしたので、居心地がよかったです。でも恩師は一部屋を一人で使っていて、その中で来客が喫煙することは放任していました。というか事務所内を禁煙としていたのではなく、たまたま喫煙者がいなかっただけでしたから、80年代初頭ですので、来客デスクには灰皿がどうどうと居座っていました。で、たいていの来客は緊張するせいか、普通以上にぷかぷか吸うものですから、恩師の部屋はタバコの煙でもうもうとしていることがよくありました。

 

これはちょっときついのですが、当時の仕事環境はそれが当たり前でしたから、それで仕事がしにくいといったことはなかったように思います。でもそれから40年近く経ち、現在はタバコの煙は有害性が認識され、仕事環境で喫煙を許容するような企業は従業員・職員ともに認めないでしょうね。

 

とはいえ、たいていの職場にはヘビースモーカーも少し吸う人もいるでしょう。雇用の採用基準で喫煙者ダメなんていう企業は以前はゼロでしたでしょうし、なかなかそういう条件を提示するのに躊躇してきたのだと思います。

 

そんな中結構な企業が新しい取り組みを始めています。

それが鎌倉で社員食堂を営む会社でした。

<神奈川県鎌倉市の鎌倉駅からほど近い一軒家にカレーの香りが立ち込める。正午を過ぎると次々と客が訪れる。地元のIT企業「カヤック」(従業員332人)が運営し、市内に拠点を置く約30社が会員になっている共同の「まちの社員食堂」だ。テラスも含めて全面禁煙になっている。カヤックは採用のホームページで「禁煙企業で、原則として喫煙者は採用しない」と宣言している。社員食堂に仲間と来ていた同社の田中利奈さん(37)は学生時代に吸っていたが、就職活動時は禁煙していたので「気にならなかった」と振り返る。>

 

鎌倉駅前はよく知っていますが、20年前はこんなカレー屋さんはなかったように思いますね。鎌倉は結構新しい取り組みを始める人たちがいます。それを許容する雰囲気がありますね。この会社が喫煙者不採用を決めたのも成行みたいですね。<2006年に禁煙企業にしたのも社員合宿で「たばこ嫌だよね」という話になり「何となく決まった」。>でも実際は本質を突いていたのかもしれませんが。

 

<千葉県で健診や検査、健康の普及啓発事業を行う公益財団法人「ちば県民保健予防財団」(職員345人)は昨年から全職種の採用で受験資格を「非喫煙者」にした。>事業の目的からすれば、このような採用基準を設けるのは至極当然でしょう。

 

<名古屋総合法律事務所(浅野了一代表弁護士)は07年からアルバイトを含めた全職員45人の採用は「非喫煙者」に限っている。>法律事務所は、喫煙組と非喫煙組に別れているかもしれません。両者が一緒に事務所で仕事をするのは最近では容易ではないでしょう。ですので、この浅野氏のような法律事務所は結構多いと思います。

 

やはり星野リゾートがこの分野の先駆けでしょうかね。

<喫煙者不採用の草分けが02年から実施している星野リゾート(従業員2509人)だ。当時、ヘビースモーカーのベテラン社員が60歳で亡くなった。「社員は家族」と唱える星野佳路代表が「なぜプライベートに踏み込んでたばこをやめさせなかったのか」と悔やみ、死亡した社員の頭文字を取った「Uプロジェクト」を始め、社員の禁煙と喫煙者不採用を始めた。>リーダーの考え次第で、社員やメンバーも、そして企業自体もよくなるように思えます。

 

ただ、喫煙者不採用というのは、手法として問題がなしともいえないように思います。ちょっと素行が悪いと退学にするとか、素行の悪い子は入学させないとか、いい学校イメージを排斥の論理で維持するのが学校として望ましいかは、教育のあり方として疑問を感じます。同様に企業という経済競争の激しい分野でも、学校と一緒には行きませんが、やはり企業文化を育み形成していくのであれば、排除の論理はどうかと思うのです。

 

この点企業内での禁煙プログラムなどで誘導する方向を歩んでいる会社も評価されてよいと思うのです。

<禁煙補助剤を販売して敷地内全面禁煙を実施するジョンソン・エンド・ジョンソンは、非喫煙をあえて採用条件にしていない。「採用の可能性を狭めたくない」からだ。またダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包摂)を掲げる同社は、あらゆる社会的背景を持つ人に門戸を広げる方針で、喫煙で不採用にするのは哲学にも反する。「受け入れて、禁煙のポリシーに気づいてもらう」と採用担当の沖田千代タレント・アクイジション・ジャパン・ヘッドは語る。社員には禁煙費用・通院への補助やカウンセリングを実施する。今夏に中途採用した40代の女性は入社を機に禁煙した。>

 

それほどうまくいっているかは、PRの意味もあるので、そのままで受け取るわけにはいきませんが、その姿勢は素直に評価されてよいと考えます。

 

最後に岡本さんの話がありましたので、彼の喫煙問題に対する真摯な取り組みを踏まえたコメント、こんな最高裁判決があったのですね、参考にさせていただきます。

<喫煙問題に詳しい岡本光樹弁護士によると「喫煙者不採用」は、企業に広く採用の自由を認めた最高裁判決に照らし「合法」だという。適性・能力に関係ない差別ならば採用の自由は制限されるが、受動喫煙の害も考えると、喫煙者不採用は合理的な理由があり、差別ではないと解説する。【斎藤義彦】>


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