170410 地盤リスク <NHK 「大地震 あなたの家はどうなる?・・>を見て
今朝もどんよりした夜明け前。ただ、霧が晴れてまだ日が昇っていないけど、高野の山々が再び美しい稜線をさらしてくれます。空海さんは、どこからこの広大な紀州半島の山の中に、高野の平かな場所を見いだし、そこに聳える八峰の山々に気づいたのでしょうか。いつも木に掛かる一つです。私は天野の明神さんが犬を使って導いたなんてことを信じるタイプではないのです。空海さんは、役行者の後を追って、金剛山系を、あるいは和泉山系を、そして吉野・大峰山系を渉猟する中で、遠くに連座する高野になにかを感じたのかもしれないと、思ったりしています。むろん水銀など高価な鉱物が産出する場所と言ったこともありえたかもしれませんが、まだまだ謎解きには時間がかかりそうです。
さて、今日もいつの間にか、8時に近づき、最近、業務時間の6時に終わったためしがない状況に唖然とします。長く毎日が日曜と感じつつ、農作業や林業もどきにうつつをぬかしたり、月20冊以上の読書三昧を続けていたのが、いつの間にかブログを書く余裕もなくなりつつあります。
仕事が忙しく収入が増えるというのであれば、それなりにうれしいですが、なにか作業に追われて、一向に余裕が生まれない状況で、収入の方はどうも相変わらず縁がなさそうです。
とはいえ指の具合も少しずつ回復基調にあるので、もう少ししたら、字数を増やしてみようかと思いますが、書き始めの段階で疲れ切っているため、一時間程度で今日もまとめたいと思っています。
さて本題ですが、「地盤リスク」、最近よく話題になります。私自身は20年位前から長くこの問題に関わってきて、素人ながら、地質専門家、地盤工学専門家などからいろいろ教えを受けながら、各地の開発案件に係わってきました。
それであるとき、地盤工学会のメンバーと一緒に研究する機会に誘われ、合宿などを繰り返した後、「役立つ 地盤リスクの知識」の出版まで共同作業をしたことがあります。実際の作業は東日本大震災の前におおむね終わっていたと思います。震災直後にメンバーの中には現地というか各地を調査に入って、リアルな映像を見ることが出来たとともに、こうやって現場で地道に作業している人がいるから被害の実像が専門的な視点で見ることが出来るんだと感じた次第です。
また余談が長くなりましたが、NHKドキュメンタリーが昨夜、見出しのテーマで放映されました。
私なりに建築の危うさ、地盤の危うさを、これまでさまざまな事例で検討してきましたが、この番組で放映された内容には目から鱗・・の内容がいくつかありました。
いくら昭和56年度以降に建築された建築物は、耐震基準に適合しているからといって、地震に対して安全とはいえないことは、ちょっと地盤のことを知っていれば理解できます。地盤調査がいい加減だと、たとえば液状化現象が生じた場合に耐震基準適合は意味をなさないでしょう。柱状図では軟弱地盤でないとされていても、ボーリングコアを見ないとその柱状図が適切に実際の地質を反映していない、偽装されたものだと、意味をなさないことになります。
そういえば、森友学園の土壌汚染の例で、柱状図だけでなく、ボーリングコア自体が開示されたのでしょうかね。それを見れば、少なくともボーリング箇所(多くは当該開発地で3箇所か4箇所しかやっていません)の地質状況は分かるはずですね。
それはともかく本題に入らないといけないですね。番組では、粘土質の土層は一般に軟弱ですが、その層の深さ、厚さによって、地震の揺れの影響が違うということが実験の結果分かったということです。いや、実際は、熊本地震で、従来、安全と言われていた地域で大変な揺れが発生し全壊した家が集中する箇所があったことと、その余震調査が行われ、その地震による揺れの特徴が分かったという希有な発見となったようです。
粘土層が厚ければ厚いほど、軟弱なのだから、揺れが酷くなると思うのは自然ではないかと思います。ところが、実験結果では、深さ20m、5m、10mを比較すると、その順番で揺れがひどくなるのです。興味深い深さ10mの振動幅の巨大化のメカニズムはよく分かりませんが、実験結果とおそらく熊本の被害地の状況が適合するのでしょう。
そしてハザードマップが最近普及しつつありますが、この作成自体は望ましいですが、旧来の知見に基づいて作成している結果、実態に合わない状況が現れています。熊本の事例では、川に近いところはたいていは氾濫原で軟弱地盤が多いことが一般に言われてきました。それでハザードマップも川沿いを地震の揺れが大きい危険箇所としています。しかし、実際に揺れが大きかったのは川沿いではなく、そこから離れた場所でした。
従来、地質調査はボーリング調査が基本で、費用もかかり周辺への影響もあり、開発現場はともかく一般的な調査としては使えないかと思います。そのため上記のような地形的特徴とか簡易な診断基準で揺れの大きい地域を推測していたのではないかと思うのです。
ところが、最近の振動調査では、器具の名前を確認できませんでしたが、振動計のようなものを地盤上に置いてその下の地層がもつ揺れの程度を診断することが出来るようです。もしこのような器具を広範囲の調査で利用できれば、より地盤のリスクを事前に予測できることになるでしょう。
当然、それは地価にも影響することになりますが、希望通りの家を新築して快適な生活を送ろうとしても、最も肝心な地盤が揺れにもろいところだと、砂上の楼閣になりかねないのですから、それこそこのような調査結果を宅地建物取引における重要事項説明事項として必須のものにしていくことも検討されるべきではないかと思うのです。
熊本地震で自宅の全壊状況を目の前にして、いかに悲しさと喪失感で放心状態になってしまうか、誰もが共感するでしょう。でもそれは私たちが住んでいる家、周辺の家も、自信をもって安全といえる人はそう多くないとおもいます。
ようやくはじまったハザードマップが不完全な物であるかは、私自身、洪水被害に係わるマップのいい加減さについて手直しを求めたことを以前ブログで書いた記憶がありますが、地震の揺れに係わるハザードマップも同じです。私たち一人一人が、自らの体験や知見を基に、それを鵜呑みにするのではなく、しっかり批判的に見ていく必要があると思うのです。
これで一時間ちょっと過ぎたようです。今日はこれでおしまいです。
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