豊かになれば中国も既存の世界秩序に従うと思ったが、それはアメリカの大きな間違いだった
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アメリカの政界・財界・学界のエリートたちの中国に対する見方は根本的に誤っていた。それが最近、明らかになりつつある。
米中間にはさまざまな問題が生じている。中国が人民元の為替レートを本来あるべき水準より安く維持し、貿易へ影響を与えているのがいい例だ。
中国は国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)では交渉決裂を招き、イランの核兵器開発を防ごうという国際的な努力に対しても非協力的だ。同様のことは北朝鮮の核問題でも言える。アメリカから台湾への武器輸出や、グーグルの中国撤退の可能性といった火種もある。
アメリカと中国は、まったく異なる視点から世界を見ている。アメリカは大恐慌と第二次世界大戦を通して、孤立主義は国益を害するという教訓を学んだ。
アメリカは自らの経済と国土を守るために、自国外の問題にも関与しなければならなかった。こうした考え方は、今も海外派兵や世界経済の自由化推進を正当化する根拠となっている。その目標は安定であり、帝国の建設ではない。
中国も安定を求めている点では同じだ。だがイギリスのジャーナリスト、マーチン・ジャクスの名著『中国が世界を支配するとき──西洋世界の終焉と新グローバル秩序の誕生』に見るとおり、その歴史的経緯も視点もアメリカとは異なる。
歴史が生んだ「自国第一主義」
1839〜42年のアヘン戦争以降、中国は軍事的敗北を何度もこうむり、そのたびにイギリスやフランスなどの列強に通商上・政治上の特権を与える屈辱的な条約を結ぶことを余儀なくされた。
20世紀には、国共内戦と日本の侵略で中国はばらばらにされてしまった。内戦は49年に共産党の勝利に終わり、ようやく統一政府が生まれた。こうした経験により中国には、秩序の混乱への恐怖心や外国による搾取の記憶が残された。
78年以降、中国経済の規模は約10倍にふくれあがった。これまでアメリカには、中国が豊かになれば、その関心や価値観もアメリカのものに近づくだろうという読みがあった。
中国は繁栄する世界経済に依存するようになり、国内市場の開放が進めば共産党の締め付けも弱まるだろう。米中の間にたとえ意見の相違があっても、それほど深刻な対立にはならないはずだ――。
だが最近の様子を見るとどうも違う。中国は豊かになるとともに前より独断的になったとジャクスは指摘する。アメリカの威信はアメリカ発の金融危機によって大きく傷ついた。
だが、米中間の亀裂は大きくなりつつある。中国は戦後の世界秩序の正当性も認めなければ、それを好ましいものだとも考えていない。ちなみに戦後の世界秩序には「アメリカをはじめとする大国が世界経済の安定と平和に集団的な責任を持つ」との概念が含まれている。
中国の外交政策の背後にはまったく別の概念がある。それが「チャイナ・ファースト」だ。
都合が悪い秩序は認めない
いわゆる「アメリカ・ファースト」(30年代のアメリカの孤立主義)と異なり、チャイナ・ファーストは世界から距離を置くことを意味しない。中国は中国なりのやり方で国際社会に関わっていくということだ。
01年に世界貿易機関(WTO)に加盟したときのように、中国は自らのニーズに役立つと思えば既存の秩序を受け入れ、支持する。そうでなければ、自分自身のルールと規範に従って振舞う。
貿易分野では余剰労働力と必需品の不足という2つの大きな問題に対処すべく、誰が見ても不公平な政策を採っている。人民元のレートが安く維持されているのは、年に2000万人かそれ以上の新規雇用を創出するためだとジャクスは書いている。
中国は世界各地で天然資源(特に燃料)確保のための投資を行なっている。ジャクスによれば、中国の「経済改革」の動機は「西欧化」ではない。「(共産)党の正統性を回復させたいという欲求」だ。
「見込み違い」のツケは大きい
米中間の対立は多くの場合、国際社会の目標のために国内的な目標を危うくすることへの中国側の躊躇を反映している。温室効果ガス削減の義務的な目標設定に消極的だったのも、経済成長、ひいては雇用にマイナス影響を与えかねないからだ。
イラン問題で言えば、中国にとっては核開発への懸念よりも自国のイランへの石油投資のほうが大きな問題だからだ。同様に、中国は北朝鮮で混乱が起きて難民が国境を越えて押し寄せることを懸念している。台湾は中国の一部だと考えているから、アメリカの武器輸出は内政干渉ということになるし、ネット検閲は一党支配を維持するのに欠かせない。
中国の世界観はアメリカの地政学的・経済的利益を脅かしている。
先日も、アメリカの19の業界団体はオバマ政権に対し「自国の技術革新」をめぐる中国の新たな規則について警告する書簡を送った。この規則によって、中国市場から「多くのアメリカ企業が締め出され」たり、先進技術を中国に引き渡すことを強制されたりする可能性があるというのだ。
2つの超大国が互いを敵視するなど悲劇だが、時代の流れはそちらに向かっている。2000年の文化的伝統の継承者であり、世界最大の国の市民たる中国人は、他より自分たちのほうが優れているという気持ちを生まれつき抱いているとジャクスは言う。
アメリカ人もそうだ。自由や個人主義、民主主義を尊ぶアメリカの価値観は、世界共通の目標でもあると考えているからだ。
国のエゴ同士のさらに大きな衝突は避けられそうにない。中国の貿易政策や為替政策のためにアメリカや世界の雇用が危険にさらされているのを、もはや座視してはいられない。2国間の政治的な違いに目をつぶっていることは、ますます難しくなっている。
だが中国の力が強まるなか、また世界経済の不安定な現状を見ても、米中の決定的な対立は誰にとっても利益にならない。見込み違いをしたせいで、われわれは暗い小道へと迷い込もうとしている。
(以上、ニューズウィークより転載)
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昨年11月、オバマ大統領は訪中した際、米中G2体制による世界新秩序を中国へ呼び掛けた。しかし、温家宝首相は米中関係の深化、発展は合意したもののG2体制の提案について、「中国は人口が多く、1人当たりのGDPがまだ小さい途上国の段階にある。また、中国は平和外交を進めており、多くの国が共に世界の問題を決めていくことが望ましいと考えているので、G2主導という考え方はとらない」旨を述べて、G2二極で世界をリードするのではなく、多極協調型の世界新秩序を支持する考えを示した。このときから米中対立が表面化した。
上記、ニューズウィークのコラムで中国専門のジャーナリスト、マーチン・ジャクスはオバマ訪中に合わせ、米中関係の深化は日本でナショナリズムが再編されると分析するコラムを寄稿した。マーチン・ジャクスは鳩山さんの東アジア共同体を受けて戦前のアジア主義を想定していたのだろう。しかし、実際は小沢大訪中団の後、天皇特例会見によって戦前の軍部の感覚を引きずった親米ナショナリズムが再編されたのだ。
羽毛田を焚き付けたとされる安倍元首相は親米ナショナリスト。天皇特例会見で検察、マスコミの官報複合体による小沢叩き包囲網ができると政界再編を目論む安倍ちゃんは真正保守を旗印に超党派議員の結集を呼び掛けた。面白かったのは平沼グループの城内くんが合流したこと。城内くんは郵政民営化法案を米国への売国法案として兄貴分だった安倍ちゃんと袂を分かった反米議員だ。その彼が親米ナショナリズムに賛同した。
転向した城内くんも含めた親米ナショナリストたちは小沢さんが失脚さえすればそれでよしとしているのだろうか。安倍内閣の「美しい日本」「戦後レジームの脱却」といった観念論を振りかざすだけでは昔の「何でも反対」社会党と同じ。まあ、城内くんのブレまくったブログしか面白いことがないのが痛い。
で、以下、YouTubeでは亀ちゃんと安倍グループは政策についてまったく同じ意見。
結局、亀ちゃんと安倍グループの相違点は小沢問題だけ。つまり、安倍ちゃんが仕掛けた天皇特例会見による嫌中感情だけが親米ナショナリズム再編の根拠になったワケだ。親米ナショナリストはニューズウィークの「米中の決定的な対立は誰にとっても利益にならない」という分析には目もくれず、米中対立は自分たちに利することだと考えるだろう。米国の見込み違いと同様に安倍グループは米中対立の見込み違いをしているのだ。
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石原都知事「銅メダルで狂喜する、こんな馬鹿な国ない」(朝日新聞) - goo ニュース
「銅(メダル)を取って狂喜する、こんな馬鹿な国はないよ」。東京都の石原慎太郎知事は25日、バンクーバー五輪の日本選手の活躍に対する国内の反応について、報道陣にこう述べた。
同日あった東京マラソン(28日開催)の関連式典のあいさつでも同五輪に触れ、「国家という重いものを背負わない人間が速く走れるわけがない、高く跳べるわけない。いい成績を出せるわけがない」と話した。
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石原さんも親米ナショナリストだった。五輪招致の赤字はどうするのだろう。