にわとりのにわ a hen's little garden

歌うたい時々クラリネット吹きの日高由貴のblog。
ちいさなこころのにわの風景をすこしずつ書きとめていきたいです。

Cathy Segal Garcia's workshop report vol.3

2012年11月02日 | 2012 Cathy's workshop rep
♪~Shiny Stokings~ ♪

まず、キャシーさんに指名されたはじめのかたが、”Shiny Stokings”という曲を歌われました。

一回目は歌詞を歌い、二回目はスキャット(scat:歌詞ではなく、適当な音をあてて声で即興演奏をすること)をされました。
スキャットが終わると、ピアノのソロに入る前にキャシーさんが指示を出していったん演奏をとめ、アドバイスをされました。

(Cathy)
とっても素敵。あなたの歌が聴けてうれしいわ。
それに、一番初めに歌うというのは大変な状況よね。すごく緊張したと思うわ。

(参加者)
はい(笑)

(Cathy)
まず、フィリップの音をよく聴いてみて(Keep focus)みてください。フィリップのグルーヴ(groove=リズムのうねり)をよく聴いてみて。
わたしには、あなたがとってもいいグルーヴ感を持っているのがわかります。
ただ、緊張すると、それが出せないのよね。

(参加者)
そうなんです。

(Cathy)
それでは、フィリップのすることをよく聴いてみたら、なにが起こるかみてみましょう。
スキャットをするときも――それにしてもあなたのスキャットは素晴らしかったわ――同じです。
フィリップのピアノを聴いて、歌を考えて、また聴いて・・・というふうにしてみてください。
それでは何度か歌って、心地よくなってからスキャットをしてみましょう。

―――キャシーさんのアドバイスを聴いてから、参加者の方がもう一度歌われました。
さっきよりもリラックスして、表現の幅が広くなり、のびやかになっているのがわかりました。
参加者の方の歌をふくらませるように、フィリップさんの美しい音がよりそっていきます。

(Cathy)
とっても素敵よ。
最初にうたったときとは感情表現が違っていましたね。
この曲の歌詞が悲しい内容(恋人がほかのひとに心を移してしまった)というのもあるけれど、最初はちょっと悲しい感じがしたわ。
でも、二回目は、フィリップ、彼女があなたをとってもよく聴いているのがわかったでしょう?
最初と全然違っていたわよね。

そしてスキャットはほんとにかっこよかったわね!
あなたはとてもいいダイナミクス(強弱の表現)を持っている。強弱の変化がないととても退屈になってしまいますから、ダイナミクスは大切です。
面白い音を選んで、とっても面白いハーモニーをつくっていましたね。

それから、モチーフ(いくつかの音符からなる連なり)をくりかえしくりかえし発展させていましたね。とっても面白かったわ。
途中でハプニングが起こって、「わたしはどこかしら?」と思った時に、とても勇敢に前に進みましたね。
そしてとってもうまくそのハプニングを使いました。
とっても楽しそうに歌って、ほんとに素晴らしかったわ!!


(vol.4に続く)


~Shiny Stokings~
music by Frank Foster
lyrics by Ella Fitzgerald(*1)

*1)ジョン・ヘンドリックスの歌詞もありますが、今回はEllaのヴァーションです。







Cathy Segal Garcia's workshop report vol.2

2012年11月02日 | 2012 Cathy's workshop rep
♪~You'd be so nice to come home to~♪



まず初めに、キャシーさんとフィリップさんが演奏してくださいました。

曲は、"You'd be so nice to come home to"でした。

初めに、「みんなが知っていると思うので、この曲にしますね。キーはDmで、ゆっくりとグルーブする感じ(リズムがうねる感じ)でやろうと思うの」とキャシーさんがフィリップさんに伝え、演奏がはじまりました。

キャシーさんの声は、肩の力がぬけていて、決して声をはりあげるわけではないのに、艶があり、遠くまで響く声でした。一つ一つの音がニュアンスに満ちていて、対話をするように、音が紡がれていきます。

歌詞のなかの”August moon(8月の月)"という箇所を”April moon(4月の月)"に変えてうたっておられたので、演奏が終わったあと、質問の時間に「歌詞を4月にかえられたのには、4月に特別な意味がありますか?」とお尋ねしたところ、「いいえ。歌詞を忘れちゃったんです」と笑いながらおっしゃいました。

そして、「集中するにはどうすればいいですか」という質問に対しては、
「集中できないのにはいろいろな理由があるので、その理由にもよりますが・・・わたしのやり方は、静かにすることです」とおっしゃいました。

「ひとつは、頭のなかを静かにすること。考えるのをすこしやめて、静かになるのを待ちます。
それから、演奏もシンプルにして、休みをたくさんとるのです。」

そして、Vol.1でもご紹介したように、不安をコントロールするためのひとつのアイデアとして、キャシーさんが使っている方法を紹介してくださいました。

加えて、不安になっているときは自分のことで頭がいっぱいになっているので、周りのミュージシャンの音をよく聴いてみる。そうすれば、自然に集中できると思う、とおっしゃっていました。

それから、ある歌手のお話をしてくださいました。
そのかたはスキャットをするわけではなく、キャシーさんは、最初の3曲くらいを聴いたとき、普通歌われるものと歌詞が違うのが分かりましたが、それが即興なのかどうかわからなかったそうです。

ただ、聴いているうちに、その歌手のかたが、即興をしていることがわかったとのことでした。

大きなビジョンに向かって構築していくのではなく、ほんのすこし歌詞を変えることによって、まるで日本の庭園のように、限られた小さなスペースのなかで即興をしていたのだそうです。

彼女のようなスタイルもいいと思う、とキャシーさんはいい、いろいろな歌い方があることの例としてお話をしてくださいました。


さて、次はいよいよ参加者のひとが実際に歌っていきます。


(vol.3に続く)


~You'd be so nice to come home to~
music&lyrics by Cole Porter