建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

突貫の3月末

2021-03-05 13:31:12 | 建設現場

            …………………………(突貫の三月末)…………

3月。いわゆるところの年度末

年度末竣工がどれだけ建設業界にプレッシャーを与えるのか・・・
官庁工事としてはその年度内に竣工させて、書類上に於いても予算を使い切り、精算を
済ませたいのが分らなくもないが、どれだけ理不尽な事であろうとも、お役人様は
年度末で幕を降ろす事を当然だと思っていらっしゃる。

年度内に予算を使い切る必要も無い筈だし、予算が残れば次年度に繰り越すのは一般社会
では当然なものを、役所の都合で帳尻を合わせるだけの《雑工事》を毎年発注している。

土木なら道路舗装等は予算残額相当の長さまで施工して、続きは来年の3月に延長工事
とし、迷惑するのは通行人であり、舗装業者も小さい現場を同時に受注となり、
(わずらわわ)しいだけである。

建築なら学校等で4月からの新学期が始まる事態に備えるのは、工事をする側からみ
ても不満はないのであるが、4月から開校したいのならば、工事の発注をもっと繰り上
げれば、年度末に突貫のしわ寄せが起きないものである。

そんな世間の常識を知っていても《我、関せず》と年度末を過ごせるのも官庁勤め人
だからこその話だ。

官庁発注工事と言うものは、大概は5月末迄に新年度の予算枠が決まって、入札にせよ
談合にしても、新年度の工事業者が決定後、契約手続き等に時間がかかり、実際に工事
着手が6~7月中旬となっても、年度末には《必ず竣工させる》という方針は
ズラせない。

そういう条件を提示した上での入札・応札であり、請負った以上は契約工期の厳守
である。

当初から無理な工期であっても、受注競争を勝ち抜く為に官庁のいいなりで物事を
決めているのであれば、発注の半分は竣工日時を3月15日に設定してもらいたい
ものだ。

3月後半になって1日の仕事が昼夜兼行と騒ぐ前の、たった2週間の違いで職人さん
の流れに大幅な変化があり、年度末に繰り返していた職人不足が緩和されるのは明らか
である。

とあるマンション工事の時―――、
契約書では竣工日が31日になっていたのであるが、工程表には堂々と、
「3月10日竣工。15日入居者検査。20日入居開始」
を明確にして、協力業者にも周知させた事がある。

「所長、サバ読んでいるンでしょ?」

と疑いたいところであろうが、コンクリート打設予定日さえ腹の探り合いをしない私の
性格を見抜いているから、逆に、

「所長、他が3月末に大騒動になる前に、職人をこっちで先に終わらせるから
大丈夫
だよ

「そのつもりだけど、こっちが遅れたら後の現場を大迷惑させる事になるンよ」
「大丈夫、次が控えているから、もっと手早く段取りを付けられるハズだよ」

「雨は《関係なし》でどんどん進めるから、工程表より進んでいると思って準備してよ」

「ハイ、もう所長の『こだわる処』はしっかり押さえていますから……」

長年、私の腰のあたりからヒモで繋がっているような職長さん達が《大丈夫》と
後押ししてくれるのも有難いし、何とかなりそうな雰囲気から《見通し良好》に変わって
来るのが分る。

民間の工事では設計事務所との連携さえ良ければ、官庁工事のような教科書通りの
作業に束縛されず、技術屋として『しのぎを削る』真剣勝負で竣工まで導けるものだ。

当然、作業手順は厳守し、品質の責任は負わねばならず、指をくわえている事なく
汗と智慧を出し続ければ、工程問題は解決するものだ。

例えば『養生期間 一週間』と標準仕様書に記載されている場合に、晴れていても曇り
の日でも七日間が過ぎるのを待つ理由はない。

冬の晴れた日でも夏の晴れた日でも、必ず一週間を経過するまで、

「次の作業を待たせろ
と言う役人の考えに、黙って従う技術者になって欲しくはない。

「先生(監理者)が言う事には逆らうな!
とゲンコツを飛ばす監督さんでは、

「突貫工事だから根性で乗り切れ!!」
って言いながら、最後になって『工期延長願い』を毎度申請するのが、目に見える。

強度、場合によっては乾燥状況を計測して判断すれば1カ月で3日分の日程を前倒し
出来るし、それを数回繰り返しながら上の階へ次の職種へと工事を進めれば、工程短縮
は簡単に出来る。

それでも事前準備が間に合わず空白の1日が発生する場合もあるので、工程が何時も
進んでいるとは限らず、もどかしさを感じる場合もたまにはあったものだ。

そのしわ寄せを、どうしても後ろに譲れないのが年度末、3月31日という期日なので
ある。

31日に工事をしているようでは論外であるが、31日は手直し検査も終わっていて、
午後からは建物の引き渡しを行って『工事竣工』となるのである。

「お前ら31日の次は32日だからな!」
「では3月33日までかかります」
「竣工式が35日だから、それまでに何とかしろ!」

(そんな昭和時代の3月が…二度や三度ではなかったなあ……)と思い出している。

平成になっても、と言うよりいつの時代でも―――

3月に入ると他の現場と仕上げ職が重なって、職人さんの引き抜きが激しくなり、
現場監理どころではなくなり、当日の職人さんの頭数に気を取られて一日が始まる。

安全も品質も構っていられず、俗に《ケツに火が点いた》状態を幾度も経験している
この業界でありながら、何故、改善しようと思わないのだろうか……慣習・仕方が無い
から―――か。

年度末竣工をズラす事により、かなり《品質のいい建物》が出来上がる事に気が付いて
いても、工期を前倒しする勇気が無いだけである。

勇気が無いと言うよりも竣工前のバタバタ騒ぎを常に引き起こしている監督さんには、
期限の呪縛から解放の糸口さえも見つけれないのも、止むを得ないだろう。

かりに4月末日が契約工期であっても、その契約期日前には年度末に似た様なドタバタ
騒ぎは繰り返されているだろうし、まして工期を前倒ししてみようと言う発想は覚束
(おぼつか)ないものであろう。

教科書通りにやれば出来上がる官庁工事でさえ火の車に陥る人が、民間工事なら自分
流にやれると言うものの、設計事務所さんと『しのぎを削る』工事の監理が全う出来る
筈もない。

現場四監理の一つ、工程監理をただ《眺めていた結末》が3月に現われる話でした。 

  4月のエピソード『閑古鳥の鳴く4月』へ続く・・・

 

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二月の雪は

2021-02-04 14:57:37 | 建設現場

            ………………………(二月の雪は) 
建設現場にとって雨は天敵だが、雪もまた好きにはなれない空からの贈り物である。

広島という比較的暖かい所で育った私が、雪で困惑する姿を寒冷地の人達が見れば
笑うだろうけれども、真冬の寒さ対策は得意にはなれなかったものだ。

豪雪地帯の現場に乗り込むのならば、仮設工事の項目に除雪の欄があって予算も計
上されているだろうが、中途半端な山間部の工事では除雪対策費はまるで無かった。

「おい福本、雪が降っても8時の朝礼は行うぞ!明日遅れるなよ!!」 
と所長から言われた現場があった。

「渋滞になるだろうし、職人さんも8時には間に合わないのでは?」
「俺は電車で来る。誰も来て居なくても俺たちが遅れて現場に入る訳にはいかん

(何の為に来るンだよ……、それで何のイイ事があるの……?)
「職長にもそう伝えろ!」

万事高飛車と云うか上から目線で、自分の権限に酔うのか麻痺しているのか知らないが、
傍目から見れば何とも嘆かわしい話である。

万事この調子だから、職人さんとの横の連絡網が張り巡る術もなく、
「俺の言うた通りに動くヤツがおらん!」
と愚痴って、協力業者の《貢献度評価》蘭への記入点数がいつも低い。
逆に協力業者から所長に対しての評価(好感度)が低いのも同じ心境だろう。

当日の朝、雪のせいで朝礼に間に合わない業者のオーナーに、
「お前のところはどうなってンだ!、今日は来ないのか、雪ぐらいで休むのか!!

電話機を独り占めして、いかにも仕事をしている様な口調に陶酔されて、空恐ろしい
雰囲気の現場事務所になってしまった。

「雪が積もったら仕事が出来るように《朝一番》皆で雪掻きしようぜ」
と私なら全員で《何とかしよう》と呼びかけるところだが、

ここは現場の雰囲気が悪いので、
(雪下ろしが済んだ頃に来ようかな……)
と誰もが考えていたようだ。

私の現場の場合―――真冬・岐阜県。

     積雪時には朝礼時間を遅らせて、皆で雪掻きをして汗をかいても文句は
     出なかったし、
      「所長、熱い缶コーヒー飲もうよ」
     と誘われる度、私のポケットマネーはいつも自販機に吸い取られたもの
     だった。

ここの現場に話を戻して―――

一般道路は積雪渋滞の中で、イライラ運転しながら現場に到着し、重たい雰囲気のままで
朝礼広場に行き、雪の上でラジオ体操をした後に、誰が雪を処分するのか戦々恐々としている。

「朝礼が済めばすぐに作業が出来るから、朝礼に遅れるな!」
と言われてあるのならば朝礼に間に合わせる事に納得は出来るが、入場門から休憩所迄の
指定通路が除雪さえされておらず、職長さん自ら除雪しようとの気概はサラサラ無い。

「遅いじゃないか!みんな朝礼に間に合うように来てるぞ!!」
とやっとたどり着いた職人さん達に向かって、所長さんは朝から罵声の連続である。

(やっぱり来るンじゃあなかった…遅刻の罰で《雪掻きをしろ》と言われるし、もう帰ろう……)
職人さんとのホットな気持ちが無い上に雪が舞う寒さも加わり、私の心は凍ってしまった。

『雪解けムード』
って言葉はここでは春になっても、否、夏迄待ってもやって来ないと険悪感が渦巻く現場になっている元凶は……と確信したのも二月の雪を見てからだった―――な。

 私の現場の《雪掻きの話》に戻せば―――

 屋上の防水工事が最初の工程表では二月になっていた。
「二月は雪で何ともならんよ」
と地元の職人さんから悲鳴が聞こえた。

「ならば正月明けから着手出来るように、前倒し工程に変更だ」
の号令をかけたのは、雪のせいで防水工事が3月施工になったら年度末竣工はおぼつかない
し、手をこまねいている訳には行かないからである。

10月下旬からは休む事なく走りに走った工事となったし、年末も30日まで全員で突っ走った。

チームワークよくまた天候にも恵まれて、雪の降り始める前に屋上の防水工事が施工可能
状態までになって、ひと安心もつかの間に『初雪予報』が飛び込んで来た。

「所長、どうします?」
「ここまで来て屋上を雪で積もらせる事はさせん!」

となれば屋上全体にブルーシートを敷いて、
「この上に10㎝ほど積もって頂こう」
《雪の女王》にお願いするしかあるまい。

ここから数㎞先にはスキー場が多くて、雪を待っている人達が多い中を、
我々現場関係者
が自分達の都合で雪を恨むのは筋違いだと思えば、
降雪対策もさほど苦にはならないもの
だった。

5.5m×3.6mのブルーシートを50枚用意して、20㎝程度は重ねて敷くようにし、
風で飛ば
されないように土嚢袋に砂を入れたものを150個用意した。

屋上の防水工事に直接関係が無い人や、室内で作業している職人さん達も総出で、これらの
材料を屋上へ運び、シートを拡げ、3m角程度に砂袋の重りを並べたのだが、

「一斉清掃で埃を被るよりは楽しいよ、所長」
との会話も出て来て、屋上の積雪対策は万全となった。

雪は遠慮なしに降って来るようになったが雪晴れの日も続くのだから、
その間をぬっての防水工事は予定の1週間遅れで完了出来たのも
《チームワークの御蔭》である。

ブルーシートをめくると多少水に濡れた跡があり、これはプロパンガスボンベ付のバーナー
(あぶ)って乾かす事にした。
(横断歩道の白線を引く時に、乾燥させているのを参考にした)

このバーナーを上に向けて鉄板を敷き、降雪と除雪対策に参加してくれた人達との
焼き肉パーティが度々出来たのも雪の余禄・雪の女王様からの贈り物としたもの
だった。

(除雪予算枠から肉屋と酒屋に支払った金額は、皆の胃袋に回収されてメデタシメデタシだよね)

ひとひらの雪に趣を感じる余裕もない心では、建物よりも『館』としての芸術品を創るには資質が無いのがハッキリと分るし、天上界に挑まずとも雪との愉しみ方はあるものなのだ。

雪国で働いていらっしゃる方々からこの
  『二月の雪は』
を読んで、なんとお粗末な現場だと思われるでしょうが
  《雪だるま》
をグループ毎に作って、
      『現場の出入り口に飾る』
と言う遊び心が、未だに卒業出来ない私を笑って……許して下さいませ。

                 ―――『二月の雪は』 終

 

 

 

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大事な1月

2021-01-12 14:05:52 | 建設現場

         ………………………(大事な1月)  (1)………


元旦。年の始まり。

お正月気分もお酒も抜けていないような中で、初出式を迎える。
年末に一区切り就けるところまで頑張ったので年末年始の特別休暇中は現場の事を頭の
中から一旦消去させたままで、今もまだ再開するには回転不足である。

年中無休の『働き蜂』さんにとってみれば、現場を閉じて数日間も自宅で過ごせたのだ
から、『仕事始めの日』が来れば、

(ゴロ寝の休みも終わってしまったんだ)
と惜別な心で疼くものだ。

お盆と正月ぐらいが建設業(特に建設現場)のまとまった休日として《確実に休める》
は今も昔も変わりないだろう。

現場の工程が順調であったとしても、たとえ三日間でも所長の権限で現場を止めて完全一斉
休暇を実施する事は考えられないし、想定外の万一の事態が無きにしも非ずの世界である。

今正月休みを頂いて安閑として居られるが、次に連休が出来るのは・・・黄金週間まで無理
だろう。

しかし、黄金週間は暦に休日マークが付いていて《有給休暇消化推進月間》のポスターが
あるものの、現場は交替出勤して、日曜日だけを休みにした事が度々あったのも思い出す。

世間では祝日の前後に有給休暇を加えて、大型連休はレジャーや旅行に出かける企画が満載
なのだが、現場マンにとっては高嶺の花・他人事として聞き流しているのも哀れである。

しかし、私は連休に関係せず、竣工の一区切りが着けば、短期旅行を計画して海外へ逃亡
(日本に居たら呼び出される)していたものだ。

足を着けていない大陸はオーストラリア大陸と南極大陸の二つで、簡単に行けそうな
ハワイもまだ残してあるのだ。

(さてさて今度はどこに狙いを付けて、旅行会社のパンフレットをチェックしようか……)
と今、考え始めているのだが―――

しっかり前を見れば《初出式》のパーティ会場である。

仕事始めに先だって檀上にある『鏡開き用の樽酒』を眼が追えば喉も喜んでいそうだ。
「…昨年と比べて―――今年は景気が…今年の完成工事目標は…安全に・・・」

スピーカーから支店長の声が聞こえて来るが、卓上のオードブルのどれから手をつけよう
かとウロウロ歩いて品定めも楽しいものだ。その間でも、

「あけましておめでとうございます。所長、本年もよろしく」
と協力業者のオーナーさん達から耳元で年賀の挨拶を受けて、小声で交わす。

「こちらこそよろしくね」
遠くの檀上では型通りの挨拶が行われているが、会場内は少しづつざわめき始めている。

おめでたい席なのだが、
「今年の事故は○件以下にして、安全に仕事が出来る環境を……」
と酒樽を目の前にしながらも雰囲気の壊れるスピーチがどうしてもある。

『今年の目標はゼロです』
と流石に言えないが毎年事故がどこかで起きるのも現実である。

神棚に祈るにせよ、お神酒で乾杯するにしても、新年で第一回目だから、頭を下げるのも
時間をかけて、今年一年分を代表するかの如く神妙な面持ちになっている。

周囲を見渡せば、女性社員の晴れ着姿が正月気分を醸し出してくれている。
玄関先には縁起ものの門松が威風堂々と飾ってあり、一礼して通り過ぎるだけで、
「今年もさあやるぞ―――」
とアドレナリンを掻き立て、歩く歩幅も大きくなって行く。

私の駆け出しの頃は―――

                   ――― その2へ続く

 

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工程管理について(3)

2020-11-13 09:27:35 | 建設現場

  ――― 工 程 に つ い て 考えると (3)――――――

今から追いかけると断言しても頭数は揃わない。

たとえ頭数が増えても現場で作業するスペースが出来ていなくて、狭い場所
に職人をひしめかせても、仕事にはなるまい。
更に遅れる事になる。

工期の半ばにこの状態ならば、残り日数の100日ではもっと条件は厳しく
なり、取り戻す事の労力は並大抵のモノではない。

1ヵ月で3日ずつ遅れていたら、5ヵ月目にはこの様な計算になるのだ。

この論理には非常に無理がある。工事は最初から最後迄一定の人員でもなく
工事量も一定ではないし、労務費が20%以上では採算割れである。

15日の遅れを月間25日の仕事の中で取り戻すには昼夜働いたとしても、追い
つくのには無理が有る事を認識して欲しい、と云う算数式と思って頂きい。

工事量も職種も職人も最初は少なくて、仕上げ工事の後半になると職人の数
も出来高も急速にアップするのが普通の工程の流れではある。

それなのに、途中で遅れていて工事終盤になって遅れを取り戻すとなっら、
いつも以上に出来高も人数も急に激増した分、テンヤワンヤになるのは目に
見えている。

工事量に対しての絶対に必要な人数はあるから、平均的に話をしただけであ
る。
工程が遅れていれば相当な人数を確保し、注ぎ込み出来る手配能力が必要と
言う事なのである。
(手配が今迄にも出来ていれば遅れていない筈だが・・・)

竣工1ヵ月前、突貫工事に突入して《精度》だ《品質》だ《安全管理》だと
ゴタクを言う暇も無いとなるのでは『工程管理』は何をしてたのかと言える
のではなかろうか。

 ではどこでつまずいたのかを、どの時点で遅れを生じたかを自分なりの判
断が甘くて
《まだ予定通り大丈夫》
とタカをくくっていたから、アワを食うのだ。

性格的におおらかなタイプだと―――、
〈何とかなるさ、今迄も『工期延長願』を出した事はないし、何とかケツは合ってる
と本人が思っているだけで、周囲の人達がかなり振り廻されている事を認識
して欲しい。(私の所からも応援部隊の出動があったンだよ―――って事)

工程管理に於いて最初に遅れ、最大に遅れる原因ソノモノは
『施工図』である。

施工図・躯体図が書けていないなら、当然その工事も出来ないが、基本とな
る施工図が無い事には協力業者が自分の関係する部分を準備する事さえも出
来ないのである。

施工図の意義については、
《建設現場の子守唄》丸善出版の〈施工図が何だってんだ〉
の所をもう一度読んで頂きたい。
(連絡くだされば私から『ー子守唄』無料送付します。FAX052-303-7098)

施工図が遅れる事自体の原因が、重要なのである。

施工図が遅れるのは施工図が書けないからなのである。書く時間が無いのも
言えるが書いてある図面をチェックする判断も欠如しているのである。

承認してイイものか悪いものか、果してこの通りに工場で製作して持って来
たら、現場で取り付けられるのか―――の自信が無いから、せかされる迄、
図面は棚の上で埃を被っているままの現場が多い様である。

また、施工図を残業して手で書いていると云う考えも古い。
何故、CADで書かないのか、コンピュータを駆使しないのか。

一つの図面(躯体図)一枚のフロッピーからどれだけの図面が動かせるか。
1階から各階に通しての柱・壁の位置、部屋の詳細図、電気設備の配線配管
図、天井割付け図、天井インサート図、造作図、金物図………。
(下請けの施工図も活用可能)

それが2階~最上階へと応用出来るのがCADの良い所だと気付く事であ
る。

 建築現場で施工図を早く協力業者に渡せる現場は、工程の遅れは絶対に少
ない。

遅れないと云う事は捗(はかど)っていると云う事であり、協力業者として
は早くモノが作れると他の現場の仕事も受注出来るのだから売上が増え分、
忙しいが絶対に儲かる。
〈忙しい〉の考え方を改めて欲しい。

 どんどん仕事をこなして行けての《忙しい》ならば、誰が文句を言おうぞ
だ。
工期が迫って来て日程の無い所で短期間に仕事をする事になり、他の現場と
仕事の時期が重なるから〈忙しい〉のである。

現場マンが工程をしっかり管理して協力業者さんをグイグイ引っ張って
行けば、現場も最後には突貫工事にならなくて済むし、
協力業者さん達も儲かるのである。

総作業日数の5%を短縮した工程を着工時に作り・守れば(管理すれば)
最後にドタバタとなる事はない。
儲けも少なからず出て来る事にもなる。こんなウマイ話はないよね。

協力業者は長年の経験から所長さんを見て、自分の所が参入する時期を調整
している。

「エラそうな事言ったって、いつも総合工程表から遅れていて『とにかく
ケツ(最後)は間に合わせろ!』
と言い、大突貫になるじゃァないよ・・」
と、言わなくても、顔に書いてある様な素振りを見たくはないものだね。

工程管理はただ単に進んでいる・遅れているの判断で終るモノではない。

管理と名付く以上、判断を行ない指示を出す根拠も必要である。

日程通りに進まないママ、天気のせいとか職人の数が少ないとか、
今日も予定人数が来なかったと言い訳を始める前に
〈明日から倍の人数が来ても構わない〉と云う段取を先に考えて、
一気に協力業者に折衝する下準備も『管理』なのである。

 遅れを取り戻すには〈それ迄の工程管理〉を反省しなおす勇気もいる。

現場(所長)の判断の甘さが全体の流れを悪くしていると、事は最悪であ
る。

工程管理は工程表の追跡だけではなくて、遅れていれば回復する手段に用い
て、遅れている事の重大さに気が付いて頂ければ、私の偏見も救われると
思っている。

 ―――ケツに火が着く前に、サァ頑張ろう―――――
                          (完了)

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工程管理について(2)

2020-10-07 09:56:24 | 建設現場

 ――― 工 程 に つ い て 考えると (2)――――――

   そんな総合工程表の基で、月間や週間工程表を作っているのであれば、毎度毎度ズレ
      たとか遅れたとか云う評判になってしまうのだ。

    本人は月間予定から少し遅れたと反省しても、その月間の遅れが3ヵ月目、4ヵ月目
 にも加算されて溜まって来ると、契約を交わしていた時の昔の総合工程表からは半月も
 遅れている事を協力業者に伝える事になる。

   20日遅れているとか10日遅れとか、約一週間とか工程の遅れを平気で弁明しているが
 実際にはその何割かはもっと遅れている。
  サバよんでの少なめの日数だと思ってもいい位なのだ。

   工程の遅れを現場から聞いた協力業者のオーナーさんはどんな気持ちだろうか。

 やっと2~3グループ(1グループ7名前後)確保出来たところに、
 「社長、1週間延びたから・・・」
 と突然の電話を現場監督から受けても、社長としてはどうしようもないのである。

総合工程表から10日も遅れている事を平気で言えるほどの根性が私には欲しい。

   仮に4日遅れているとしたら―――、
人には予定通りと言っても分からないだろうが、ゴマかしていると自分の工程管理自体
に信用をなくする事になるし、遅れを取り戻す原動力にもなりはしないので、私は堂々
と4日の遅れでも公言する事にしている。

原因が何であるにしろ、工事が遅れているのは現場の責任である。

「予定通りに行けば楽なものさ、行かないから苦労してるんだ」
と担当監督さん達が威張ってみても、工程アップにはならない。

躯体工事が半月遅れて、仕上げ工事の人達にバトンタッチの時、
「躯体が遅れてるのに、俺達ばっかりにしわ寄せしないでよ」 
てな話もよく聞く。

では―――《遅れていると云う事がどう云う事なのか》と話をすると―――

『請負金5億円、10ヵ月の工事』として、  

   1ヵ月で3日、5ヵ月目に15日遅れているとした場合の計算をしてみよう。

    概算すれば、総工費の25%の1億2500万円が人件費の総額と予定する。
    一人一日2万円の日当で割れば、延べ6250人分が必要。
    日曜・祭日・降雨を除いて10ヵ月の内、稼働日数は220日としたら、延べ
    6250人を稼働日数220日で割れば一日平均28人で一ヵ月(25日就労)で
    は700人必要になるのだ。
    15日遅れているのは28人×15日分で420人も不足しているのだ。

  どうやって遅れを取り戻すのか―――。

    当月末迄の25日間で遅れを取り戻すには、不足人数分を投入せねばならない。
    単純に一月予定数の700人と不足の420人を加えて1100人いれば簡
    単に戻る。

    1100人を25日で割ると44人いれば追いつく計算である。
    一日平均28人のところが44人になるだけだが、今まで予定人数が入って来な
    かったから遅れているのだから、明日から急に増える段取りにはなるまい。

    今から追いかけると断言しても
                           その3に続く……

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工程管理について

2020-09-14 11:54:46 | 建設現場

――― 工 程 に つ い て 考えると (1)―――――― 

現場4管理(品質・原価・安全・工程)と云うものは、総てを上手く管理出来れば何
も言う事はないが、なかなか思う様に行かないものである。

  原価管理と言えば利益を求める管理である。清算時赤字転落では失格。
  安全管理と言えば無事故・無災害は当然の管理である。事故発生では論外。
  品質管理と言えば精度よく仕上げる事である。
  工程管理と言えば遅れを出さない事である。遅れていれば管理とは言えないのだ。

この内、一つが欠ける様では困るし、一つにウイークポイントを持つと、現場の流れ
と言わず、段取り総てが狂ってしまい取り返しの付かない事態を招く事になりかねない。

  4管理の中の『工程管理』について、私の思う事を本音で語ってみよう。

工程管理としてまずは総合工程表から月間・週間工程表を作成して月々の目安にし、
工事の進捗状況を把握する事から始まるのである。
この総合工程表を最初に作成してから、工事の計画も業者の設定や契約時期も
自ずと決まる。

仕事量をある程度把握してから、簡単に横線を引いて(この位の時期だろう)の
予想とカンと経験による工程表を作ったとしたら、現場工程管理は落第である。


  竣工日が決まっているから、ケツからも日程を割り出して、仕上げは竣工の半月前に
終了させると想定すれば、更にその前の躯体工事が何時までに終っていればイイのかと
日程を逆に計算したそれらしき工程表もかなりある。

そういう日数のみの判断ならば、今時ならコンピューターで工事内容と竣工日を入力
すれば、標準、あるいは正確無比な工程表をプロッターから打ち出す事も可能である。

 忙しいを口に出す所長さんなら、自分で工程表を作成せずとも、機械に任せればいい
のであるが、そうはいかないものだ。 
 
これでは工事の流れではなくて、日数に対する割りつけだから、工事のヤマと云うか
職人のピーク時の人数が頭に入っていないのだから、絶対に工程表通りに進まない

又、何度も修正工程表を書いては、遅れた、書き直しだ、最終工程表だとしてそれで
一時は予定通りと思いきや、また遅れ気味になったと繰り返す。

総合工程表を着工時に作り、基礎のコンクリート打設を行なう頃に《修正工程表》
書き直して以後、これが総合工程表だからこれから早い・遅れたを判断しようとする。

確かに杭打工事や山留め・掘削工事には自然や天候も左右され予期せぬ事も多いから
当初の工程表から遅れるものであると決めていては、工程管理者とは言えない。


〈遅れたと最初から思われるのはイヤだから〉

と、余裕を持った日数で工程表を書く人もいるが、最後は日程が足りなくなりドタバ
タするのでは、何を基準に日数を割り振ったのかの根拠を見直す必要がある。

 工事期間が何日あるかを、まず計算する。
  1年間の現場でも、実際に仕事の出来る日数を計算すると、日曜・祝日・正月・お盆 
 土休・降雨・積雪でもざっと100日は消えるのだ。

  年末と年度末には完成工事が重なり、工期に遅れそうな現場に仕上げ職種は送り込ま
 れて、こちらの現場はもぬけの空にもなりかねない。
  又、お盆の前、つまり8月の上旬の工程は、あっても無きが如くの叩き合いだ。

  お盆休暇の前迄に区切りのある所迄進めておかなければ、お盆明けのスタートが切れ
 ないのだ。
  故郷に帰ったママまだ戻って来ないから・・・来週の月曜日には出てくるだろうと
 思うが・・・と云う見通しのない週間工程表を、お盆明けに書く場合が多い。

 総合工程表を初めに書く時に、休みの予定を組み込む事も必要である。
 つまり、休んでもよい余裕のある工程表に挑戦するのである。

  その現場の特殊性や地域性により、お祭りの時期には仕事が出来ないと云う
 《お触れ書》も結構経験させて頂いている。 

  冬には水が凍って仕事の条件が制約されるから、12月半ば迄に一定の所(屋根
 防水終了)迄創っておく事と云う場合もあった。

  ネットワーク式の工程表の中に、出来高予想と作業員出面数のグラフを月末ポイント
 でグラフに表して、どの時点でピークになるのか前もって判断しておく。

  請負金に対して、どの位の職人が入って来て仕事をするのか、延べ何万人・何万時間
 が費やされるのか、これが把握出来ないで工程表を書いたら実情とかけ離れたものにな
 ってしまい、目標とする根拠がただ単にカンにたよっての工程表になってしまう。

 そんな総合工程表の基で、          その2に続く………

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安全大会講演 (4)

2019-06-24 11:41:32 | 建設現場

安全大会講演(2)(3)からの続き。(4)のUPです。

……………(安全大会講演 4)…………(2009.12.01再up)

私ね、一日1000人以上いる現場で、竣工前の3ヶ月を安全担当で配属された時
(そこは先月3度目の労災事故が発生があったから)に、

書類の監理で安全が守られる」
なんてコレッぽっちも思わなかったよ。

1000人が書いた書類を毎日チェックしていたら、机の前に座っているだけで
現場が安全状態なのか、危険なのか見て廻る時間がないよ。

書類を見るより現場の足場(工事含む)の中を歩く方が、よっぽど安全点検が出来る。

階段室を歩いてタバコの吸殻を拾い、ジュースの空き缶を処分する方が、
よっぽど現場が安全になるよ。

安全担当者が書類をチェックしている時間に、現場で転倒事故でも発生すれば
私の首も飛ぶ事になるのだが、1000人もいてね、

とにかく安全にさせよ、もう事故を起こさせるな!
と労務安全部長から厳命されても、安全監理が出来る筈はない。

だから私は書類から離れて安全監理をする事に決めたのだが、事故が起きれば
運命
だったと思う事にして、

「安全書類は増やさない、
だから事故を起すな!」
と協力業者の休憩室で職長に私の首を預けました。

「今日は何人連れて来たの?全員の名前言える?皆元気?」
この一言が殺伐とした現場の空気を変えて、書類上の安全から現実の作業
状況に気を配り、他の業種と連携プレイも高まって、事故もなく竣工させたよ。

後90日を残して事故を未然に防ごうとしたら、皆さんは必ず新しい書類を
作って、一日の作業を机上での監理に走ると思いませんか?

実際に自分の現場が後30日で述べ100万時間の無事故無災害記録が達成
されるとしたら、所長以下全員、安全に力が入り、安全の書類で固まるの
が見えるよね。

重大事故になる前のチョットした事故、脚立からの転倒、タバコの不始末、
電動工具の不良、横着作業による怪我等は書類で監理出来るものじゃ
ないから、書類を棚にでも上げて、現場を廻る時間を最大にしたら、
安全記録は簡単に達成すると、思えるでしょう。

書類が不要と言ってませんからね。
最低限の書類が完備されているから、安全が語れるのですよ。

現場の事故は書類が不備だから起きるとか、危険を見逃すからでもなくて
《安全でないから》事故になるのです。

事故を起してから対策を考えたって、怪我は治りません。
書類を整備するのは決まり事であり、現場は安心を確保して初めて安全監理
がスタートするのです。

会社からの安全書類が多いと思うならば、自分の現場専用の安全書類を
創れば良いのです。

会社の書類だから安全が守れるものでもないし、自分達で創った安全の
決め事の方が遥かに安全であるかも知れません。

ひとたび事故があれば、責任は総て現場監理者(個人)に来るのですよ。

工事が終わり労災保険の適用期限が終わっても、後遺症が残り
職場復帰出来なく
なった人の家族から、民事訴訟で安全監理者の
責任不備を追及される事も
ありますよ。

あんたのセイでこうなった!生活費が入らなくなった)
と数年後、所長(統括安全責任者)に損害補償を訴える人も出て来ています。

現場の中、仮囲いの中という限られた空間の中を安全な場所に監理出来ない
ないのではなくて、何を監理すべきかが分かっていないから事故になるのである。

安全監理の原点は現場のチームワークつまり、人間監理と言うか信頼関係
に基づく『安心』から生まれるものである。

安全監理の原点は現場のチームワークつまり、人間監理と言うか信頼関係
に基づく『安心』から生まれるものである。

 「基本は安心、基準は安全」

 これは私からの秘伝だよ。
     心が乱れていて、安全は有り得ない。

KY活動を声高々にして、危険な作業場所で作業させることを
知っていて安全監理、安全を監理しているという監理者では
無災害竣工はあり得ない。

安心・安全という仕事場ならば、笑顔と活気で明るい現場である。

誰の為の安全なのか、誰の為に安全監理をしているのか、
よく考えてください。

 安全大会でこそ、安全そのものを、振り返ってみましょう。

   ご安全に・・・

 

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安全大会講演(2)(3)

2019-06-13 09:12:05 | 建設現場

安全大会講演(1)からの続き。(2)(3)のUPです。

……………(安全講演 2)…………(2009.10.30再up)

  「会社の為にやっているのか、決まりだからやっているのか」
という所から、本音で話をしますよ。

 皆さん、安全の反対は・・・危険ですね。
 危ない作業を見た時に皆さん、何と言いますか?
 当然、
「止めろよ、危ないよ!」
 と作業中止の言葉をかけますね。

 では、安全な作業をしている場合は「止めろよ」とは言わず、
「頑張れよ・問題はない?」
 と良いコミュニケーションですよね。

 では、安全~危険へ移る途中の時はどう言いますか?

 皆さんがよく言う、
「気をつけろよ」
 の連発なンですよ、無責任じゃあないの?監督としてそれでイイの?

 危ないならば仕事を止めさせるのに、気をつけて作業させるから、事故が起きるんだよ、気をつけながら作業させて安全監理ですか?

「気をつけるように」
 とは言葉で言えば簡単だけれども、危ないエリアに職人さんを入れていて、ただ無事故を祈っているのが現場じゃあないの?

 こんな虫のイイ話を今まで、神様が聞いてくれましたか?

 安全と危険の中間で作業をさせるのは、それはもう安全ではないンだよ。

 信号で言えば安全は青
 危険は赤。
 注意進行は黄色

 信号でも判断に迷う《黄色で突っ込む》から交差点で事故になるのと、現場で気をつけながら作業させて、事故が起きるのと何ら違いはない。

 黄色なら交差点の手前で停止すれば事故がない、この簡単な事を、現場で何故出来ないの?応用出来ないモノじゃあないでしょ。

 現場監理をする人は、現場は安全か危険かでなく、
「安全か、安全でないか」
 で安全を判断するのが私の安全監理なのです。難しくはないンです。

危険という文字を使うのは、もう安全から飛び越えてしまっているのです。

 危険を防止するために細かな決まりがあるけれども、そのような決まりや、法令をここで教育する気は私にはありません。

 安全を確保したいのならば、安全の範疇に居ればいいだけの事で、
 「安全か、安全でないか」
 をモノサシにしたらどうですか?


 災害事例とか危険予知からの安全教育という方法もありますね。

「高所作業とは地上から何㍍以上をいうのですか?」
と安全教育で習っても、現場では無災害竣工の決め手にはならないのです。

 ハッキリ言って、今までの安全大会での講師の話が、役に立ちましたか? 
 去年来られた講師の話を、覚えていますか、実践していますか?

確かに机の上で安全と、労基署から注意を受けないための安全規則を学ぶのなら、ゼネコンの労務安全部長さんを講師に呼んで勉強してください。

 安全値を頭に詰め込み、学問的に優等生らしい監督になれるでしょう。

 私は、現場で事故を起こさせない監理の本音を話すから、どの会場で話をしても、若手は真剣に聞いてくれていて、安全になると確信して話をしてますよ。
 
     《安全講演3へ 続く》

 *****************  ***************

…………………………(安全講演 3)…………(2009.11.13 再up)

 あるゼネコンの安全大会で、〇×をつける安全テストの問題に、

90掘削した所に昇降階段と手摺は必要である
が書いてあった。

 今、〇×の答えは分かってるよね?
 参加者に配ったこのテストが何を意味しているのか、不愉快になったよ。

 必要であろうと無かろうと、誰が手摺を設置するのか主語がないでしょ。
 大工が手摺を付けるのかい?
 鉄筋屋さんが手摺の高さを気にするから数値をテストしているのかい?
 そう聞きたかったのです。

 これが安全大会の行事としての安全教育ならば、情けないのよ。

 私はこの問題の答えに〇を付けたのだが、採点者は×を正解としたのが
もっと気に入らないのだ。

「1㍍以上から昇降階段と手摺を付けること、90㌢では取付不要で×」
 法規上必要ないから取り付けなくてもいい、が正解だってサ。

「馬鹿じゃないの?安全担当者は!」と思ったよ。
 高さが何㌢だろうと、大股開いて昇り降りさせて、現場が安全かい?
 飛び降りた、滑ったの事故が絶対に無いと言い切れるのかい?

「あんたが不要と言ったから付けなかった、だから事故になった
 と怪我をした人から言われたら、何と答えるのかこの人は…。

「階段があれば絶対に起きなかった事故
 と後から反省するのなら、最初から付けておけばイイじゃん、それが
安全監理の基本じゃん。

 安全衛生規則の正しい法令数値を知っているから、何だと言うの?

 事故すりゃあ労災報告書を書くのは誰なのか、分かってるの?

 気をつけて作業をさせなくても、安全か安全でないかで判断すれば、
規則がどうのと思う前に階段や手摺をつける事、これが私の安全監理なン
です。

 難しいですか? 

テストで満点取っても、翌日現場で事故してりゃ何の意味もないでしょう。
(ここらで、若手マンの目が輝いて来て、私も熱を帯びるのが分かる)

 それから、安全書類についても言わせてもらうよ。

 安全点検書類を増やして監理させているが、書けば安全になると思って
いる人は、どれだけいますか?

 書類で現場が安全になるのなら、幾らでも書類を増やせばいいのです。

 書類を作っても、毎日記入しても、職人さんからサインをもらっても
事故は無くなる事はない。

 マンネリになっている安全日誌からは、一寸先の事故は見破られないのです。
 危険予知活動も現場で重要な安全活動であるのだが、私にしてみれば、
「安全か安全でないか」
 で点検しているので、危険を予知しながら作業させていない。

 毎朝、危険を感じながら職人に作業させて、事故があれば
「あれほど気をつけるように言っていたのに…」
 と監理不備を隠して、労基署に言い逃れる証拠みたいな書類があれば、
現場はいつも安全作業をさせている…つまり錯覚なのですよね?

毎朝、私ね一日千人以上いる現場で、竣工前の3ヶ月を安全担当で配属さ
れた時に、

     《安全講演4へ 続く》

 

 

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安全大会講演

2019-06-10 07:57:00 | 建設現場

  安全週間を前にして・・・安全大会(2009.10.20)再度UPします。

   …………………………(安全大会講演 1)…………

 ライフワークの一つである講演に於いて、とあるゼネコンの若手勉強会から、
「基本は安心・基準は安全」 の講演です。
90分の講演実況録音盤から読みやすくする為に、部分修正してます)
    *********   ********   **********
 (挨拶省略・・・)  
現場所長を15年やっていまして、労災を一度も経験していませんから、災害の話から安全の話は出来ません。

3日以内の労災扱いにならない事故、自分の手を自分で叩いたとか、転んで血が出たとかは時々ありましたが、労災には縁がありませんでした。
 だからと言って現場がビシッと安全であった訳ではありません。  会社の安全パトロールの度に評価は悪く、再パトロールになる事は毎度の事でした。

「労務部の為に仕事をしてるンじゃあない!」 「無事故無災害でやる為に仕事をしているンじゃあない!」  イイ建物を創る為に自分たちで技術を入れているんだよ、イイ建物を創る為に 『早く・安く・良く』  そして安全に創るのが、現場マンの《やりがい》であり、監督さんの仕事だと思いませんか。

 若手現場マンが竣工の時に「よく頑張ったなあ」と涙を流せるくらいの建物にしたいのだよ。

 そんな現場のことを《建設現場の子守唄》《風来坊》に本音を丸出しで書いていますが、現場の楽しさ・厳しさの本音を読んでみて下さい。
 ネットでもかなり紹介されて出回っているようですが、直接私の所に
「本を送ってください」
とメールも来るし、若者がかなり読んでいるようですよ。

さて、安全監理という話をしますが、現場では四監理ありますね。
工程・品質・原価・安全の四つとそれに『人間監理』も含んで欲しいですね。

四監理をぐるっと上手く廻さない限り、
「安全監理は望めない」  
が、私の安全の基本の考えで、現場所長としての結論ですよ。

工期がない現場、突貫をやっている現場でね、安全監理書類なんて
構って いられますか?  
その時に
「安全作業をしろ!(させろ)
って言ってもソレどころじゃあないでしょ、安全監理の毎日点検なんて実際に出来っこないでょ。

 又、予算をガバッと削られて、
「これだけでやれっ!」 って言われたら、
品質は悪くなるよ、品質の悪い物を取り付けて、手直しを食えば再度取り付けるまでの時間が必要となるし、修正代も出てくるし、取り付ける時には足場が解体されていたのはよく有る事ですよね。  
サーカス仕事をさせるようになって、それでも安全監理が出来ますか?

 安全監理の前に工程をしっかり監理していなければ、ならないンですよ。
 竣工に間に合わないと誰しもが思えば、安全監理どころではないでしょ。

つまり、四監理が廻らず、チームワークも無く、良いモノを創るという心も消えてバラバラとなっている現場に、安全大会や安全パトロールを実施しても良い結果にならないのですよ。

 現場で毎月1回安全大会と安全衛生協議会を開いていますが、成果を感じる事がありますか?成果がありましたか?

 成果が無いものを毎月やってるなら、何の為なのですか?

 やらないよりはイイけれども、
「気をつけて作業しろよな」  
とKY活動の総まとめをしていて、1ヶ月間安全監理出来るの?
必ず事故になりますよ。

 皆さんのやり方を私は知らないけれど、
「会社の為にやっているのか、決まりだからやっているのか」
 という所から、本音で話をしますよ。        

           《安全講演2へ 続く》      

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総合図 その3

2019-04-09 14:09:40 | 建設現場

総合図 その3

設計図があって工事計画が始まったのか、工事計画があってそれを
実行(施工)する為に設計図が書かれたのかがハッキリしないのが
沖縄・辺野古埋め立て工事であろう。

いざ埋め立てを始めると海底下の軟弱地盤を強化するための杭工事
が必要と言い出して、必然的に何億円も投入となり、工事に数年も
かかると言いながら、総工費は公表出来ない理由が分からない。

設計図があるんだろ!施工業者も決まっているんだろ!談合かい?

福島原発の凍土壁止水工事に数百億万つぎ込んで、失敗しても業者に
止水完成までの瑕疵(責任施工)は追及しない事から、
海の下の地盤を強化したとして、どうやって強化地盤の完成を確認
するつもりなのか、失敗を隠し工事業者の丸儲けはミエミエだよね。

想定外・杭の本数がすくなかった。軟弱地盤層(厚さ)が深かった
なんて簡単な言葉で言い訳するよね。

政府の力で強引に工事をするのなら、福島の汚染度の低い除去廃棄物を
埋め立てに使うと設計図に書いて、設計図のとおりに仕事をさせると
ゼネコンと工事契約すればよかろう。沖縄の風土を壊して埋め立てず、
ゴミの処分は片付くし設計図という大義名分で・・(きつい冗談になったね)

福島では凍土壁工事をするにあたって設計図があって、監理者(国交省・
東京電力)が設計図とおりに監理監督すれば欠陥地盤にはならない筈だが、
『凍土止水工事は失敗する』何度も忠告した私には見えて居るプロジェ
クトである。

設計図と言いながら、実際はこの程度の価値しかないものなのである。

だから設計図がありながら総合図を要求する事になる業界の話を
総合図1+2の続きとして 始めよう。
*****************  ***************

話を総合図 その2 に戻してから続けてみると・・・

この建物は設計競技の作品であり採用された様だが(設計談合?)、
まさかこの設計図が他の設計事務所のものより一番優れていたとは
思えず、『総合図』まで提出させる条件も認めていたのなら・・・

 疑えばキリが無く、官庁物件をこの程度の設計内容で承認されたのは
(いぶか)しいものだ。

近くのK中学校でもそうしたと言うそのケツジマイとして、
すぐに総合図を出せ!・・・俺の立場が無い)」
と鈴鹿市ではなっているので無ければイイが……と思っているが、さて―――

裏事情の有る無しにせよ『総合図』に力を入れる気力は全く無いまま
書き上げた図面に、

「先日決定した黒板の大きさを記入して、出入り口は壁の中央に
図面を修正して下さい」

「黒板を30㌢移動させたのでドアの位置も移動させる図面を、
誰が書くの?
やってられない!」

「今、決まったものも図面に書きこんであるのが『総合図』ですから……」

「そんな《設計図のお手伝い》は、今の時点では御受け致しかねます」

設計屋の仕事と施工屋の仕事の範疇を線引きした為に、相当無茶な注文が
入って来るのを覚悟したが、現場でイイものを創る為に
しのぎを削る打合せでもない限り、協議の場に私は出席しない事を伝え、
設計図に無い事についてはR設計事務所から文書で頂く事とした。

毎週の定例会議には担当者レベルで別途業者等の調整を任せる事にしたが、
ネズミの相談になってしまい、方向性も結論も決断されないままに
日程は過ぎ去っていった。

請負者として、頂いた設計図の通りに創るのが原則であり、設計図どおり
の品物については承認願いすら交わす必要もなく、ひたすら設計図に
忠実に創る事にしたものだ。

「R設計事務所さんとうまくやってくれ
と上司から意味深の電話が入って、
やっていますよ、設計図に書いてあるままの通りに、口は挟まずに……
それに設計図にない事を依頼されたので、見積りを出しています…
追加工事代を承認されてから仕事に手をつけます」

私の工程表は提出してあるが、いつもの通り相当前倒しになっているので、
「返事が遅れれば、後の祭りで対処できません、壊して二度手間(倍額)
になりますよ……」もつけ加えておいた。

ネズミの相談もネズミたちがネコに助けを求めに来るのに、大して日数は
かからなかった。

R設計事務所がいつまで『総合図』に固執するのかで、ここの現場の決着が
見えて来る。

 このまま行けば《竣工検査時になって相当やり直しが出される》と危惧する人も多いが、
設計監理として現場常駐している人がいて竣工させた建物に、
設計監理者の上司が不備を言うならば、

《とんだ筋違い》であろう」

と定例協議会で毎度釘を刺しておいたので、何も心配なく工事を進めて
いったのは私の意地であるが、本音は『しっぺがえし』がやがて
やって来る事の覚悟もしていた。

今までに経験した幾多の工事を振り返ってみれば―――

設計事務所に協力しない訳では無いのだが、『詳細図』が必用な内容
の建物(劇場・記念館・図書館等)に巡り会えれば、張り切って
作図をしていた事は《言わずもがな》である。

それらの建物には設計事務所のプライドが掛かっていて、細部に亘って
までこだわりが感じられて来る設計図であり、施工図の承諾願い図を
提出する時は身の引き締まる思いであった。

総合図が無くても、設計者の頭の中では先の先まで想定し終えて
いらっしゃるので、承諾願い図を一瞥したところで、
「ここはイメージと違うよ、このようにするつもりだから……」
と簡単なスケッチが提出図面に書き加えられて差し戻されて来る。

設計図の読解力不足と言われたようであるが、設計者のイメージに
叶うまでは、労力を惜しむつもりは全く無くて全面協力である。

《イイ物を創ろう》とお互いが燃えているから、施工図の
《書き直し》の気分ではなくて、
『出来上がったらこのようになるのだ…素晴らしい』
とこだわり、悦に入っていたものだった。

一枚の図面からこのような会話がよく出て来たものだったのが、
最近は懐かしく思える―――

しかし、ここではもう『しのぎを削る』タネ火さえ灯らないだろう……
このまま行けば私の記憶から消えたとしても、この先中学校として
長く残るのが……残念である。

********** *****************  ***************

設計図・総合図について説明したのかグチったのかよく分からない話
のままで結末としよう。

建設業界が如何に時代遅れであり、談合・どんぶり勘定・手抜きを
上手に(バレないように)この先も継続していく事だろう。

これが土建屋の伝統なのか宿命なのか・・・。

 

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