では、楽しい塗装工事を……(日立建機PR誌ティエラ76号から)……
塗装工事の目的は仕上がり面を華やかにすること。
この『色を付ける』という作業、簡単なように見えて実は施工監理
が難しいものなのです。
塗装工事の監理について話をしましょう。
マジックペンに油性・水性があるように、塗料もまずその成分
(アクリル・ビニール・ウレタン等)を確認することから始まります。
仮に鉄面に塗る場合、塗装は鉄を保護する役目、つまり錆から守る
役目を果たしますが、海上の橋桁と高速道路の橋桁、あるいは歩道
橋とでは、例え色彩が同じでも成分はまったく違います。
鉄面の錆び止め処理は成分(JIS規格)の何種を何度塗装する
のか……をまず第一に確認します。
一般的に色(赤・黄・白等)を見て錆び止めの材質を判断していま
すが、一種・二種の区別は18㍑の塗料缶に明記してあるので、事前
に必ず確認してください。
私の失敗を一つ、
錆び止め塗料と仕上げ塗装色のメーカーが異なっていたため、監理
者から、
「実際に問題は発生しないのか?」
と疑問を投げかけられたことがありました。
過去の組合せ実績が無い以上は「OK」とは言えません。このときも、
「多分良いでしょう」
の結論を出す前に、錆び止め塗料の総入れ替えを実施しました。
材質の違うものを混ぜるとか重ねる場合は慎重な配慮を怠った
のは私の監理ミスと判断したのです。
鉄骨組み建て時にボルトのネジ部分は油が塗ってあり、油面に塗装は出
来ません。
錆びを発生させて(油が落ちた状態)から錆び止めを塗ります。
コンクートに埋まる鉄骨部分に塗装した場合は付着力を弱めるので錆び
止め処理は禁物です。
塗る・塗らないの境界位置も重要な管理ポイントなのですね。
仕上げ工事に突入した時点で工程が不足していれば、塗るというより色
を付けるという作業になり、結果として一時しのぎで仕上げた事になり
ますが、こうしたケースは後で必ずツケが回ってきます。
鉄骨階段・手すり・建具などで数年も経過しないうちに仕上げ塗装色が
無くなり、下地が現れている部分などを見ると、塗装した意味が薄れて
来ますね。
やはり簡単な言葉ですが「下地処理」が施工監理の重要ポイントになり
ます。
下地に1㍉の段差があれば塗装してもそのまま現れてきます。塗料で
1㍉も厚さは塗れませんし、厚く固まった塗料は剥がれ落ちます。
下地の段差部分を同一面らしくカムフラージュして塗装しても、光が
あたれば逆に補修面が浮き出る経験はよくあることです。
「塗れば隠れるから」
という雑な監理はしていないつもりでも、突貫工事現場に検査に行くと、
釘は飛び出たまま、しかも釘まで塗ってあるのを見ると、塗装監理に
合格点は与えられません。
塗装工事の監理は塗り面に神経を使いますが、塗りの厚さも重要です。
塗り厚さを計測できる便利な機械もあり、私は重要な場所は自主検査
記録表にてミクロン値を提出していました。
施工監理を十分行っていても、数年経てば止むなく塗装は色あせてき
ます。しかし、色あせた塗装を除去している時に
「おっ!前のヤツらはいい仕事をしているな」
と感嘆させる仕事こそが職人ワザでしょう。
塗装面はいつまでもキレイに見せておきたいものです。
塗装工事が管理できれば長期間キレイで良い建物になることをぜひ
肝に命じておいてください。
塗るよりも
付ける感じの 錆止めは
鉄面塗装の ガードマン
《続く》・・・コメント待ってるからね~
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《建設現場の玉手箱》
《建設現場シリーズ最終章》
リストラの風により現場所長から一転した私は篩(ふるい)から
落ちた砂なのか篩いの中に残った土なのか…。
建設現場をこよなく愛する人達の《人間ドラマ》第3弾。
建築屋として苦労して築きあげたものは《信用》である。
信用とは《技術》であり、技術とは《人》である。
一流の技術であればこそ、次ぎの時代に繋がねばならない。
今、残せしもの、それは《信用と技術》である。
(本文より) 名古屋丸善:刊 ¥1500-
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